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これまでは序章にすぎなかった…?“最後”まで見逃し厳禁「ガンニバル」最終話レビュー

コラム

これまでは序章にすぎなかった…?“最後”まで見逃し厳禁「ガンニバル」最終話レビュー

事件解決まであと一歩!と思った矢先…

大悟が署長に連れられていった警察署の最上階には、供花村とは無関係の本庁の刑事5人がいて、すでに捜査に当たっていた。そのなかの女性刑事が狩野の死体に残された人間の歯型の写真を提示。清が婿養子で、血筋に重きを置く後藤家の当主にはなれないこと、銀には18年前に姿を消した、本来なら当主になるはずの娘の藍がいた事実も浮上する。

凶悪な後藤家の秘密を暴くためにはSIT(刑事部捜査一課特殊犯捜査班)に出動してもらう必要があり、その要請には確かな証拠が不可欠。隠れ家にいる京介はその報せを大悟から聞き、隣室の女性に「僕と一緒に証言しよう」と訴える。彼女こそ、何者かに顔を喰われた幼い京介を連れ、後藤家から飛び出した後藤藍(河井青葉)だったのだ。

かつて喰い殺されそうになっていたところを藍によって救われた寺山京介(高杉真宙)
かつて喰い殺されそうになっていたところを藍によって救われた寺山京介(高杉真宙)[c]2022 Disney and its related entities

京介の懇願に、藍は封印していた過去を告白。それは、銀によって実の息子である恵介、洋介(杉田雷麟)から引き離されることになった彼女が、祭で“あの人”に捧げられそうになった男児と共に逃げだそうとしたものの、捕まってしまった18年前の記憶。さらに、幼い恵介が自分の命を盾に彼女の解放を銀に取りつけたことも判明する。

それを知った京介は藍を説得できず、岩男の行動を監視していた宇多田により、子どもたちの監禁場所を特定したものの、SITの要請は不可能に。子どもたちの救出作戦自体が白紙になるが、そのことで、“血”の強さがなによりも優先されることを嫌というほど味わった。それはたぶん、本作で描かれるある意味特殊な後藤家に限ったことではないのだろう。

後藤家の“血”に対抗できるのは、大悟の“血”のみ

大悟の暴力衝動に不安を覚えながらも、子どもを救おうとする彼の背中を押す有希
大悟の暴力衝動に不安を覚えながらも、子どもを救おうとする彼の背中を押す有希[c]2022 Disney and its related entities

だが、祭の前日のこのチャンスを逃したら、子どもたちを救出することは永遠にできなくなるかもしれない!そんな大悟の衝動を起動させるのも、奇しくも彼のなかに脈々と流れる“血”になっているところが本作のおもしろいところだ。第6話で、彼は妻の有希に「あんたは捜査が楽しいから、この村にいたいんでしょ。最近のあんた、異常にイキイキしていたもんね!」と罵られた。そんな大悟を『凶悪』(13)で山田孝之が演じた雑誌ジャーナリストと重ねた人もいるだろう。しかし、「自分のなかに抑えられない怒りみたいなものがあるんだよ」と電話で漏らした大悟の背中を押したのも、有希だった。

「大丈夫。あんたは絶対想いを成し遂げて帰ってくる」という言葉にスイッチが入った大悟は、署長の忠告を無視して再び単身、子どもたちの監禁場所へと向かう。

子どもたちの監禁場所に乗り込んだ大悟が目にしたものとは!?
子どもたちの監禁場所に乗り込んだ大悟が目にしたものとは!?[c]2022 Disney and its related entities

思い返せば、後藤家の血が支配する供花村に異分子の大悟とその家族がやって来たことがすべての始まりだった。後藤家の伝統や因習は一般の常識では決して許されるべきものではない。だが、彼らにとっては絶対に絶やしてはいけない大切なもの。一方、大悟の破壊的な衝動も彼のなかに流れる血によるものだ。この“血”から逃れられない者たちの魂と魂の激突こそが第7話までの主軸になっていたが、第7話のラストで明らかになった戦いの結末は今後のドラマの大きな伏線になっているのではないだろうか?

衝撃以外のなにものでもない!ラストシーン&エンドクレジット後

第7話の終盤、刑事になりすました後藤家の一人が有希とましろの隠れ家に辿り着き、迷うことなく発砲。血しぶきが飛び散る。一方、大悟が乗り込んだ監禁場所にはすでに子どもたちの姿はなく、動揺する彼の背後から“あの人”が巨大なカマを振りかざしながら迫ってきて“グサッ”という鈍い音と共に暗転。しかも、エンドクレジット開けには、「オマエも食え!」と言って肉片を差し出す恵介が映しだされ、彼が「狩野やお前の言う通りじゃ。わしらは人を…」と言っている途中で、“あの人”が縛られた子どもに襲い掛かる衝撃の現場を捉えて再び暗転。その陰惨な場面が脳裏に焼きつく、なんとも後味の悪い終わり方をする。

【写真を見る】エンドクレジット後に登場する、笠松将演じる恵介の衝撃の姿…
【写真を見る】エンドクレジット後に登場する、笠松将演じる恵介の衝撃の姿…[c]2022 Disney and its related entities

恵介の不敵な笑みが本格的な戦いの開幕を告げているようにも見えたが、あれはいったいなにを意味するのか?第7話までで描かれたのは後藤家が支配する供花村の実態とその闇を暴こうとする大悟の孤独な戦いだったが、大悟はもともと抑えられない怒りを暴力に転化する危うい本能を持ち合わせている。有希に言われたように、供花村を捜査したり、後藤家と戦うことに半分喜びを感じ始めている節もある。

そんな彼が、ミイラ取りがミイラになるように、後藤家の“血”の重力に屈し、取り込まれて、彼らと同じ価値観を持つ人間になってしまうのではないか?そんな不安と恐怖をラストシーンから感じ取ったのは筆者だけではないはずだ。

「これは続編やらんわけにはいかんでしょ!!」ファンから期待の声が続々


続編が待ちきれない!
続編が待ちきれない![c]2022 Disney and its related entities

そもそも、物語の核心ともいえる“あの人”の正体は解明されないままだし、後藤家の秘密を伝えてきた密告者も未だ不明。有希とましろの安否も気になるところだ。そういう意味では、この第7話までは大きな序章で、真に怖い「ガンニバル」のドラマが立ち上がるのはこれからかもしれない。

衝撃のラストシーンを観た視聴者からは、「これは続編やらんわけにはいかんでしょ!!」「続編期待していいのかな」「早く続編発表してくれ!!」といった声がSNSに殺到し、「ガンニバル」がTwitterのトレンドにランクイン!“ヴィレッジ・サイコスリラー”として始まった本作は、大きなうねりを上げてその衝撃を拡散させている。クオリティの高い本当におもしろい作品は、年齢や性別、国籍やジャンルの枠組みを超えて多くの人たちを夢中にさせる。そのことを「ガンニバル」は証明したと言ってもいいだろう。

文/イソガイマサト

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