映画1本分のカロリーを40分に凝縮?緩急のバランスが見事な「ガンニバル」第3話レビュー|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
映画1本分のカロリーを40分に凝縮?緩急のバランスが見事な「ガンニバル」第3話レビュー

コラム

映画1本分のカロリーを40分に凝縮?緩急のバランスが見事な「ガンニバル」第3話レビュー

ディズニープラスの「スター」にて独占配信中の「ガンニバル」。柳楽優弥が主演を務め、『岬の兄妹』(19)、『さがす』(22)の片山慎三が監督、『ドライブ・マイ・カー』(21)の大江崇允が脚本を務めるなど、日本のトップクリエイターが集結したオリジナルシリーズだ。山間に位置し、外界から隔絶した供花村に赴任した駐在員、阿川大悟(柳楽)。「人が喰われているらしい」という恐ろしい噂が囁かれるこの村で、ある事件の捜査をきっかけとして、徐々に狂気の世界へ陥っていく。MOVIE WALKER PRESSでは、圧倒的クオリティと実力派ぞろいの俳優陣で贈る、野心的な本作の魅力をレビュー連載でお届けする。第3話は、ライターのSYOが担当する。

※以降、ストーリーの核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。

起承転結の「承」に差し掛かり、ギアが一段階上がるなど要注目の第3話

「連続ドラマの真価は、第3話で分かる」。この言葉を聞いたことはないだろうか。大体10話前後で構成される連続ドラマの場合、起承転結の「承」に差し掛かるのが第3話にあたる。全5話前後のミニシリーズで言えば「転」に相当し、新たなキャラクターが登場したり、新事実が判明したりとギアが一段階上がるのだ。作品が内包するテーマも浮き彫りになり、我々視聴者としてもよりグッと身を入れて観るようになる“起因”となるパターンが多い(これは10話前後構成のアニメシリーズなども同じ)。

衝撃の展開で終わった第2話から一転、物語は大悟の過去へと遡る
衝撃の展開で終わった第2話から一転、物語は大悟の過去へと遡る[c]2022 Disney and its related entities

それゆえに、「ガンニバル」第3話には個人的に注目していた。本作は全7話構成のため、「承」と「転」の両方を担う、或いは「承」から「転」へとスライドしていく役割を担っている可能性が高かったからだ。そしてまた、事前に原作を読んでいた身としては「第3話ではカーアクションのシーンがあるはず。でも流石に実写化は無理だよな…。でもひょっとしてこの作品ならやってくれるのでは!?」と戦々恐々としてもいた。そして――第3話観賞直後の率直な感想を最初に述べてしまうと「すげえ」の一言。「ガンニバル」全体で観てもキモとなるであろうド派手なシーンが連続し、視聴者を驚愕させつつミステリー、サスペンス部分でも急展開を盛り込み、作品の強度、真価を見せつける内容となっていたのだ。

物語の転換点になり得る「ガンニバル」第3話をライターのSYOがレビュー
物語の転換点になり得る「ガンニバル」第3話をライターのSYOがレビュー[c]2022 Disney and its related entities

衝撃の終わり方をした第2話をおさらい

まずは「ガンニバル」のここまでの流れを簡単におさらいしよう。供花村に赴任してきた駐在、大悟は、村内で絶対的な権力を誇る後藤家の一員、銀(倍賞美津子)の死体を検分。クマに食い殺されたという彼女の死体に人間と思しき歯形を見つけたことから、後藤家に疑念を抱くようになる。独自に捜査を始めた大悟は、銀の葬列に現れた前任の駐在、狩野(矢柴俊博)の娘すみれ(北香耶)と接触。彼女に「後藤家は人を喰っている」と言われ後藤家に探りを入れるも、武闘派の後藤家メンバーと乱闘になってしまう。逆に返り討ちにする大悟だったが、突如出現した“あの人”と呼ばれる大男に襲われて昏倒し…。

毎話、続きが気になってしょうがない“クリフハンガー”を仕掛けてくる本作だが、第2話の引きは強烈だった。大悟を本気で殺そうとしてくる睦夫(酒向芳)の狂気にあてられたのか、後藤家を必要以上に痛めつけて「ボケカスが!」と吐き捨てる大悟の恐ろしさ――そして、それを上回る“あの人”の脅威。大悟の安否やいかに!?というところで第3話へと突入していくのだが、本エピソードはちょっとトリッキーなシーンから始まる。

第2話の最後で正体不明の大男に襲われる大悟
第2話の最後で正体不明の大男に襲われる大悟[c]2022 Disney and its related entities

犯人相手に容赦しない鮮烈な暴力刑事ぶりを見せる大悟

まずこれまでとは違うオープニングクレジット×エモい劇伴で意表を突き、映しだされるのは大悟の刑事時代、つまり過去編だ。逃亡犯を追って屋根から屋根へと走り、引きずりおろして蹴り、投げ飛ばし、周囲の捜査員に引きはがされるまでボッコボコに殴り続ける大悟…。柳楽と言えば『ディストラクション・ベイビーズ』(16)で暴力衝動に忠実な青年を鬼気迫る演技で体現していたが、本作の暴力刑事ぶりも鮮烈。娘のましろ(志水心音)に恋心を抱く前科者を見かけると追いかけて泥水の中へ蹴り倒し(カメラにしぶきがかかる演出が秀逸だ)、後日彼の家にましろがいると知った際には半狂乱で窓ガラスを破り、突撃して――。

今話では過去の様子も明らかに。ほかの刑事が必死に引き離さないと止められない、爆発性を持つ大悟
今話では過去の様子も明らかに。ほかの刑事が必死に引き離さないと止められない、爆発性を持つ大悟[c]2022 Disney and its related entities

…と、ましろが話せなくなった原因でもある大悟の重大な過去が判明するのか!?というところで現代パートへスライド。大悟が目を覚ますと、そこは病院。頭にけがをして倒れているところを村人が見つけ、介抱したのだという。病院に見舞いに来た恵介(笠松将)率いる後藤家に“あの人”について問いただすも、知らぬ存ぜぬの一点張り。なぜ執拗に隠すのか?ますます疑念を強める大悟だったが、家族を守るために向こう見ずな行動は控えようと心に誓う。しかしその矢先、駐在所に向かうトンネル内で睦夫の急襲に遭ってしまう!

大悟は頭にケガをし、目を覚ますと病院に
大悟は頭にケガをし、目を覚ますと病院に[c]2022 Disney and its related entities
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