盗聴器で“よそ者”を徹底監視…村社会の異常さにゾワゾワする「ガンニバル」第4話レビュー|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
盗聴器で“よそ者”を徹底監視…村社会の異常さにゾワゾワする「ガンニバル」第4話レビュー

コラム

盗聴器で“よそ者”を徹底監視…村社会の異常さにゾワゾワする「ガンニバル」第4話レビュー

ディズニープラスの「スター」にて独占配信中の「ガンニバル」。柳楽優弥が主演を務め、『岬の兄妹』(19)、『さがす』(22)の片山慎三が監督、『ドライブ・マイ・カー』(21)の大江崇光が脚本を務めるなど、日本のトップクリエイターが集結したオリジナルシリーズだ。山間に位置し、外界から隔絶した供花村に赴任した駐在員、阿川大悟(柳楽)。「人が喰われているらしい」という恐ろしい噂が囁かれるこの村で、ある事件の捜査をきっかけとして、徐々に狂気の世界へ陥っていく。MOVIE WALKER PRESSでは、圧倒的クオリティと実力派ぞろいの俳優陣で贈る、野心的な本作の魅力をレビュー連載でお届けする。第4話は、ライターのイソガイマサトが担当する。

※以降、ストーリーの核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。

後藤家の異常性、大悟の狂気を見せつけた「ガンニバル」第1~3話

村を牛耳る後藤家の当主、銀(倍賞美津子)の死体が発見されるところから始まり、後藤家の禍々しい実態を早くも明らかにした第1話。続く第2話では、そんな後藤家の秘密に踏み込もうとした大悟が大きなカマを持った、“あの人”と呼ばれる大男に斬りつけられ、瀕死の重傷を負う衝撃の展開に。さらに第3話では、大悟の供花村に左遷させられた原因で、娘のましろ(志水心音)が言葉を失った過去の事件の真相を、後藤家一、凶暴な睦夫(酒向芳)一派とのスリリングなカーチェイスや襲撃シーンなどと交錯させながら活写。大悟が潜在的に持つ狂気とただならぬ暴力性を印象づけた。

前任の駐在、狩野の死体が山林で発見され、大悟を襲った睦夫が犯人として逮捕される
前任の駐在、狩野の死体が山林で発見され、大悟を襲った睦夫が犯人として逮捕される[c]2022 Disney and its related entities

閉ざされた村社会の恐怖が徐々に露に…

そんな前半の盛り上がりを受けての第4話だが、全7話のちょうど折り返し地点にあたるここでは、前3話までの畳みかけるようなスピーディな“恐怖”演出から、観る者の心理をじわじわと揺さぶる“静”の恐怖演出にシフトチェンジする。

大悟の前任者、狩野(矢柴俊博)の死体が山林で発見され、大悟を襲った睦夫が犯人として逮捕される。そんななか、村のリーダー、さぶ(中村梅雀)は「供花村と後藤家は別じゃと思ってほしい」と訴え、村で生きていくためには後藤家の土地の木材が必要だから、後藤家と狩野が揉めていたことを知りながら見て見ぬふりをしたと告白する。

親切に見えた村のリーダー、さぶにも裏の顔が見えてくる
親切に見えた村のリーダー、さぶにも裏の顔が見えてくる[c]2022 Disney and its related entities

そんな慣習や村の事情はなんとなく理解できるものだ。閉ざされた小さな村で生活するのは難しい。独自のコミュニティが確立しているし、そこで暮らす者だけが知る鉄の掟もある。さぶが言うように、微妙なバランスで人と人との関係の均衡が保たれていたりもする。例えば、『楽園』(19)で佐藤浩市が演じた移住者の男も、ちょっとしたことがきっかけで村人たちから敵視され、最悪な事態に陥っていったが、古い習わしや絶対的なパワーバランスが根強く残っている場所では、それに従わない者は爪弾きに遭うとよく聞く。第4話はそんな閉ざされたコミュニティの怖さもじわじわと描き、本作の謎を大きくかき乱す仕掛け、あるいは罠として機能させているのだ。

「駐在さん一家は本日からほんまの村の一員じゃ!」。さぶからそう言われた大悟たちは、村人から桃をもらったり、道で声をかけてもらえるようになる。都会ではあまり見かけないそんなフレンドリーな人間関係に憧れて、田舎への移住を考える人も少なくないだろう。けれど、前記のように、ちょっとしたことがきっかけで、そんな夢のような人間関係ほど脆くも崩れ去ってしまうものだ。

一見すると村人たちに歓迎されているように見える大悟たちだったが…
一見すると村人たちに歓迎されているように見える大悟たちだったが…[c]2022 Disney and its related entities


大悟も、さぶのある助言に盾を突いた途端に村での立ち位置を悪くする。噂は村中に広まり、昨日まで笑顔を見せたり、話しかけてくれたりしていた村人たちの眼差しも冷たいものに変わってしまう。「喧嘩はいけんよ」とわざわざ忠告する者もいて、観る者にも大悟と同じように「めんどくせえ」と思わせる。

常に誰かが監視しているような村社会の怖さ
常に誰かが監視しているような村社会の怖さ[c]2022 Disney and its related entities
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