「気が弱いからこそ、強面でいたのかもしれない」亡き崔洋一監督に捧げる、38年目の『友よ、静かに瞑れ』秘話

インタビュー

「気が弱いからこそ、強面でいたのかもしれない」亡き崔洋一監督に捧げる、38年目の『友よ、静かに瞑れ』秘話

「崔さんには、チームで作品の空気感を作っていく牽引力があった」(成田)

――お二人の目に崔監督はどのような人物として映っていたのでしょう。

浜田「もしかしたら気が弱い人だったのかもしれないね。だからあえて強面でいたのかなって気はするけど。でも演出家としてはすぐれていたと思います。この映画もそうだけど、そのあとに組んだ『Aサインデイズ』や『マークスの山』、『刑務所の中』、『血と骨』など、崔とはいい仕事をさせてもらったと思っています。作品のジャンルも多岐にわたっていますよね」

生前の崔洋一監督(2009年、第10回東京フィルメックス閉会式にて)
生前の崔洋一監督(2009年、第10回東京フィルメックス閉会式にて)撮影:堀田正幸

成田「やっぱり牽引力があったね。自分も監督になって大変だなと思ったのが、チームで作品の空気感を作っていくこと。作品ごとに作っていく空気は違うんだけど、崔さんはそれをすばやく感じ取って企画を立てて実現させてきた。そういう意味でたいした人だと思います」

浜田「『マークスの山』にしても、北岳に100人登らせて撮るんだって言いだしてね。100人なんてできるのかと思っていたら、それを登らせちゃうんです。こっちもそれに付き合わなきゃいけないから崔との仕事は大変ですけど、困難を乗り越えていく力を持った監督だったと思います」

数多くの作品で崔監督と名タッグを組んだ浜田撮影監督
数多くの作品で崔監督と名タッグを組んだ浜田撮影監督


――今回の4Kデジタル修復によって、若い世代の観客も増えることと思います。彼らに『友よ、静かに瞑れ』のどんなところを見てほしいですか。

浜田「40年前の沖縄で撮影したというところでしょうね。いまから40年も前に、こういう映画を沖縄で作っていたんだということを知ってもらえるのが、一番うれしく思います」

成田「そうですね。さっきの浜田さんの話にあった、ロケハンで沖縄をあちこち回って辺野古を選んだというセンス。いまは情報が多いから、ネットで検索すればぜんぶ分かった気持ちになれるでしょう。でも汗かいて足を使ってたどり着き、浜辺でじっくり話してお互いのスタンスが確認できたから、こういう作品ができたんだと僕は思う。そういう物作りもあるんだということを感じてくれればうれしいですね」

4K Ultra HD Blu-ray+Blu-rayで、より深く味わう『友よ、静かに瞑れ』

作品のテイストを汲み取った装丁は、コレクションに加えたくなること請け合いだ
作品のテイストを汲み取った装丁は、コレクションに加えたくなること請け合いだ[c]KADOKAWA 1985

発売中の4K Ultra HD Blu-ray+Blu-ray2枚組セットは、浜田毅撮影監督がグレーディングを監修し、インタビュー中でも語った通り、原版を超えるほどの高画質化が実現されている。その画質は、1980年代初頭の沖縄の空気感を如実に伝えており、現存する16mmシネテープより新たにデジタイズ・サウンドリダクションを行った高品位モノラル音声からは、藤や原田ら俳優陣の、繊細な芝居の息遣いが鮮明に浮かび上がってくる。

特典も充実しており、本編には本インタビュー時に収録された、裏話たっぷりの浜田撮影監督、成田監督によるオーディオコメンタリーが搭載され、さらには音楽と効果音を純粋に楽しめる特典として、ME(Music&Effect)音源を発掘し、高音質(24bit/96kHz仕様)にて収録している。また、映像特典のなかには、当時スポーツニッポンが撮影現場の藤を取材した貴重なメイキング映像も初収録となった。初回製造分にはアウタースリーブケースも付属するということで、興味を持たれた方は是非チェックしてみてほしい。

取材・文/神武 団四郎

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