アカデミー賞目前!本年度の映画賞レースを賑わせた注目作5本をピックアップ
黒澤明の不朽の名作『生きる』がイギリスを舞台に甦る!…『生きる LIVING』(3月31日公開)
1952年に公開された巨匠、黒澤明監督による傑作『生きる』(52)。人生が長くないと悟った役所勤めの主人公が、市民のために最後の仕事に身をささげる。そんな物語が国や時代を超えて愛され続け、70年を経て再映画化された。そのアイデアを思いついたのは、ノーベル賞作家のカズオ・イシグロ。彼自身が脚本も手掛け、1950年代のロンドンを舞台に、奇跡の感動ストーリーが描きだされる。
役所の市民課で事務手続きをするのが日課だったウィリアムズが、市民からの切実な願いに耳を傾け、小さな公園を作ろうと奔走する物語。基本はオリジナルに忠実でありながら、当時のイギリスの日常を重ね、一気にその時代へトリップする。主演はイギリスを代表する実力派のビル・ナイで、アカデミー賞へ向けた賞レースで快走中だ。人は生きた証をどうやって残すのか…。名作の普遍的なテーマを名演技と共にかみしめたい。
〈ノミネート・受賞状況は…〉
ゴールデン・グローブ賞で主演男優賞候補になったビル・ナイは、LA映画批評家協会賞では主演俳優賞に輝いた。アカデミー賞では主演男優賞、脚色賞にノミネート。
刑事と容疑者が惹かれ合うサスペンス&ロマンス…『別れる決心』(公開中)
『オールド・ボーイ』(03)などで数々の受賞歴を誇り、『パラサイト 半地下の家族』(19)のポン・ジュノに匹敵する国際的評価を獲得してきたパク・チャヌク監督。そんな韓国の天才が放つ新作は、禁断の愛の迷宮にさまよい込んだ男と女の運命を描くサスペンス劇だ。
実直な敏腕刑事ヘジュン(パク・ヘイル)が、夫殺しの容疑者である美貌の女性ソレ(タン・ウェイ)を監視するうちに彼女と惹かれ合う。やがて事件の意外な真実が明らかになり、ふたりはあと戻りできない深みにはまっていく…。
幻惑的なカメラワークを駆使した映像美に定評あるパク監督が、愛と疑惑の狭間で揺らめく男女の葛藤をエモーショナルに描出。その激しくもせつないふたりの関係性は観る者の想像を超えた危うい事態へと突き進み、クライマックスには衝撃的な展開が待ち受ける。ミステリー映画のようなスリル、艶めかしいロマンティシズムに満ちた映像世界に酔いしれたい。
〈ノミネート・受賞状況は…〉
カンヌ国際映画祭では監督賞に輝き、ゴールデン・グローブ賞では非英語(外国語)作品にノミネートされた。アカデミー賞では国際長編映画賞部門の予備候補になるも惜しくもノミネートを逃した。
文/斉藤博昭、高橋諭治 構成/月刊シネコンウォーカー編集部