映画の魔法にかかる『エンパイア・オブ・ライト』、社会風刺が炸裂『逆転のトライアングル』など週末観るならこの3本!|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
映画の魔法にかかる『エンパイア・オブ・ライト』、社会風刺が炸裂『逆転のトライアングル』など週末観るならこの3本!

コラム

映画の魔法にかかる『エンパイア・オブ・ライト』、社会風刺が炸裂『逆転のトライアングル』など週末観るならこの3本!

週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、海辺町の映画館を舞台に、過去に囚われた女性と夢を諦めた青年が心を通わせていくドラマ、リューベン・オストルンドが、無人島に流れ着いたリッチな乗客たちのサバイバルを描く人間ドラマ、MCUフェーズ5の始まりにして、過去最凶のヴィランが登場するアクションの、心に刺さる3本。

人々にひとときの休息を与える映画館という不思議な存在…『エンパイア・オブ・ライト』(公開中)

1980年のイギリス南岸を舞台に、“映画の魔法”を描く『エンパイア・オブ・ライト』
1980年のイギリス南岸を舞台に、“映画の魔法”を描く『エンパイア・オブ・ライト』[c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

1980年代、イギリス南岸の静かなリゾート地にある映画館を舞台にしたヒューマン・ラブストーリー。映画館で働く個性的な人々の間で紡がれる豊かな人間関係。劇中ではザ・スペシャルズなどの曲が印象的に使われているが、同じ頃、音楽の世界では黒人と白人が協調する2 Tone ムーブメントが流行していた。対照的に、映画館の外では不況から黒人に対する差別行動が起きている。暴力的な集団が映画館に押し寄せるシーンはショッキング。

主人公は過去に傷つき、それでも前に向かって歩こうとする、心に闇と光をあわせ持つヒラリー。サム・メンデス監督初の単独脚本は主演のオリヴィア・コールマンへの当て書きで、彼女の圧倒的な存在感と卓越した演技力が心温まる物語を力強いメッセージの残る作品へと押し上げている。ヒラリーに刺激を与えるスティーヴン役、マイケル・ウォードの存在も得難い。居場所を求める人々にひとときの休息を与える映画館という不思議な存在。映画や映画館をテーマにした作品は監督の映画への想いがあふれでる、ノスタルジックな傑作が多いが、これも例に漏れず。(映画ライター・高山亜紀)

サバイバル劇は痛快で、クライマックスの一捻りも鮮やか…『逆転のトライアングル』(公開中)

【写真を見る】ファッション業界とルッキズム、階級社会に切り込む『逆転のトライアングル』
【写真を見る】ファッション業界とルッキズム、階級社会に切り込む『逆転のトライアングル』Fredrik Wenzel [c] Plattform Produktion

カンヌ国際映画祭最高賞のパルムドールを皮切りに、スウェーデン映画ながら、アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞の主要3部門にノミネート。本作がここまで世界的に評価されるのは、社会派のテーマを潜ませながら、エンタメ的なわかりやすい展開と、目を疑うシーンを多数用意し、観る者の目をクギづけにし続けるからだろう。タイトルが示すように、基本的には逆転劇。なにが逆転するかといえば、富裕層と彼らに仕える者の関係だったり、人種や男女の固定観念だったりする。特にモデル業界における男女の収入の違いや、モデルのカップルの“どっちが御馳走する”論争は斬新だ。

人間の本質を皮肉り、強烈な演出も盛り込むオストルンド監督らしい作風だが、それにしても中盤のディナーで起こる“生理現象”は、映画史に残ると言っていいほどの過激さ。この現象、日本人はわりと日常風景として受け止めやすいが、欧米人にとってかなり屈辱的なのかと思わせる。その後のサバイバル劇はむしろ痛快で、クライマックスの一捻りも鮮やか。本作を完成させ、32歳で急逝した主演女優、チャールビ・ディーンの姿を目にやきつけたい。(映画ライター・斉藤博昭)


”家族”という小さな絆に向きあうドラマ…『アントマン&ワスプ:クアントマニア』(公開中)

「ロキ」で変異体である“在り続ける者”が登場したカーン。今後最凶クラスのヴィランとなるという(『アントマン&ワスプ:クアントマニア』)
「ロキ」で変異体である“在り続ける者”が登場したカーン。今後最凶クラスのヴィランとなるという(『アントマン&ワスプ:クアントマニア』)[c]Marvel Studios 2023

マーベル・シネマティック・ユニバースが新展開となる「マルチバース・サーガ」と名付けられた“フェーズ5”の1作目にして、身体をアリのように小さくすることができるヒーロー、アントマンを主人公にしたシリーズ第3弾。アベンジャーズの一員として世界を救い、かつての転落人生から一転して、幸せな日々を送るアントマンことスコット・ラング(ポール・ラッド)。娘のキャシー(キャスリン・ニュートン)が作った量子世界を観察する衛星を起動させると、その場にいたホープ・ヴァン・ダイン(エヴァンジェン・リリー)らと共に量子世界へと引きずり込まれてしまう。彼らはそこで、世界に大きな危機をもたらす征服者カーン(ジョナサン・メジャース)の存在を知るのだった。

「アントマン」シリーズは、第1作目から一貫して”家族愛”をテーマを軸にドラマを描いてきたが、今作ではスコットとキャシーの父と娘、ホープとハンク・ピム(マイケル・ダグラス)、ジャネット・ヴァン・ダイン(ミシェル・ファイファー)の親子が2つに分かれて行動することで、その関係性を見直す物語が描かれる。コメディ要素やケイパー要素が主軸だった前2作とはテイストが異なり、量子世界の作り込みや新たな脅威となるカーンとの戦いという壮大な存在と相対するが、一方で”家族”という小さな絆に向きあうドラマの対比が「アントマン」のシリーズらしさの大きな軸であり、テーマであるのがポイントだといえるだろう。(映画ライター・石井誠)

映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

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