『ちひろさん』のフードスタイリスト・飯島奈美が語る、お弁当作りに込めた想いと食の大切さ
「私にとっては“食べること、食”は仕事であり趣味でもあります」
「のこのこ弁当」はもちろん、オカジがマコトのためにおにぎりを作ってあげるシーンや、ちひろさんが“ちひろさん”になる原点となった海苔巻きなど、改めてお弁当文化のすばらしさが感じられる本作。飯島は、お弁当を作る時にどんな点を意識するのだろうか。自身の思い出も交えて教えてくれた。「作る時に意識しているのは、ムダなものは入れないこと。味つけや食感に変化をつけることです。でも、お弁当はちゃんと作るとそれなりに時間もかかりますし、盛りつけも難しいです。小さい箱なのに意外とたくさんの量、種類(メインのおかず、副菜2〜3品くらい)が入ります。冷めた時の味の濃い、薄い、食感の変化は普段から意識して確認します。そして食べる人のその日の状況を想像して作ります。私自身も中学生時代は母に3年間作ってもらいましたが、受験の時には“豚かつ”(勝つ)が入っていて、笑えましたがうれしいメッセージでした。お弁当にかけられた時間や想いを考えると、心強くなり、頑張る気力が湧きました」。
どんなにつらいことがあっても、人はご飯を食べる。本作は「生きること」=「食べること」をテーマにした物語ともいえるが、飯島にとって、生きるうえでの「食の大切さ」とは?「私にとっては“食べること、食”は仕事であり趣味でもあります。好きなことを仕事にできて幸せだなと感じています。おいしいものを食べて感動し、初めて知った味にはワクワクし、変わらない味にはほっとします。ストレスやちょっとした悩みは、気の合う人と一緒に美味しいご飯を食べるとほとんど解決します。準備、撮影期間はみなさんとても忙しく、コロナの大変な時期ででもありました。監督ともあまりお話できなかったので、撮影ではない時、事務所にご飯を食べに来ていただいて、いまからでもコミュニケーションをとりたいです!」
観終わったあと、心がじんわりと温かくなり、おいしいごはんが食べたくなりそうな本作。有村たちキャストのアンサンブルはもちろん、飯島が手掛けた料理の数々にもぜひ注目して観ていただきたい。
文/山崎伸子