フィフィ、映画『日の丸~寺山修司40年目の挑発~』で感じた日本人の本質を引き出す手法
映画『日の丸~寺山修司40年目の挑発~』(公開中)の公開記舞台挨拶が2月25日、角川シネマ有楽町にて開催され、フィフィ、佐井大紀監督が登壇した。
TBSドキュメンタリー史上最大の問題作と呼ばれた、寺山修司の「日の丸」が、半世紀の時を経て現代に蘇った。フィフィは「資料に問題作と書いてあったので『どんな作品なんだろう』と構えて観ました」と前置きし、感想は「タイトルには『日の丸』とあるけれど、日の丸のことについて描いている作品ではないと思いました」と伝える。「日本人にとって思想や意見を出しにくい究極の題材を使い、日本人の本質をどう引き出すか。その手法を寺山(修司)さんが編み出したという印象を受けました」と話したフィフィ。「人の心を抉ってくようなインタビューの方法で、もし、自分が実際にこのインタビューを受けたらちょっとイラッとすると思います」と微笑み、日本人の本質が出る瞬間がおもしろいと、本作で惹かれたポイントを明かした。
本作を手がけた理由を訊かれた佐井監督は、「『日の丸』を最初に観たときの感想は、呪いのビデオのように怖く嫌な感じが残りました。と同時に、56年前の作品にクエスチョンマークが投げられているような気がしました。時を超え、僕が媒介となり、現代の人に問いかけたい。過去と現在を繋ぎたいと思いました」と語った。作中で実際に使われている街頭インタビューは30人分程度。実際には300人近くにインタビューを行ったという。使われなかったインタビュー内容が気になるというフィフィから「否定的な意見は多かった?」と問われた佐井監督は「僕を迷惑YouTuberだと思って、相手にしてくれない人も多かったです。でも『TBSです』と名乗ると態度が180度変わるケースも多くて。会社の看板はでかいなと思いました(笑)」とニヤリ。するとフィフィが「私だったら『TBS』って聞いたら逆に警戒する」と答え、笑いを誘っていた。
フィフィはイベント中、本作が「日の丸」について描いている作品ではないと何度もコメント。「ディベートってなんだろう、議論することってなんだろう」ということを考えさせる作品で、「私が40年前に日本に来た時から国際化と言ってるけれど、なにが国際化なのかわかっていない。受け入れることが国際化だと思っている。スポンジのように吸収し、消化するのはすごくいいことだけど、発信していくことができていない。発信力が弱い印象があります」と指摘。映画を観た人はすごく多いはずなのに、感想を言ってもらえていない現状に触れ「観た後に、語ってみる、発信していくことはいいことだと思う。日本の人たちにはそこをうまくなってほしいと思っています」と私見を述べた。
特に20代、30代の方に観て欲しいという佐井監督は「酒の肴になるような映画になってほしいです」と話し、国旗の話をするだけで気まずい空気になるのはすごく残念だとし、「なんとなく国の話、アイデンティティの話をできる、議論ができる(世の中の)ほうが健全だと思います。そんな風に社会が回っていけばいいなと思います」と気軽に観てほしいとアピール。フィフィは「50年前といまの人たちの日の丸に対しての思いが変わっていないことに驚いた作品です。ひとりでも多くの人が観て(いろいろな)議論がされたらいいなと思います」と呼びかけ、佐井監督も「観ていただき、知っていただき、持ち帰っていただき、そして感想をつぶやいてほしいです。つぶやかないことは無言のメッセージになります。それも(ある種の)メッセージかもしれないけれど、なにか発信してくれたら、それがこの映画の存在する意味になると思っています」と力強く語りイベントを締めくくった。
取材・文/タナカシノブ