演劇とコントで“テンポ”は変わる?最注目コントユニット「ダウ90000」が“演劇”を観る楽しさを語る

インタビュー

演劇とコントで“テンポ”は変わる?最注目コントユニット「ダウ90000」が“演劇”を観る楽しさを語る

「配信化が根付いてきて、舞台のチケットの価値がより上がりました」

コロナ禍の2020年に舞台芸術関係者への緊急支援を目的に発足したEPAD事業。劇団やアーティストの持つ映像や資料を収集し、収集映像をアーカイブ化、配信可能化に向けた権利処理のサポートを行い、演劇作品の映像による可能性を広げた。収録作品数は1700本を超え、今後も高品質作品収録や配信サービスとの連携など、さらなる展開を予定している。EPADが所蔵する作品リストを見てもらいながら話を聞いた。

舞台芸術の作り手と観客をつなぐデジタルアーカイブの活用を支援するEPAD
舞台芸術の作り手と観客をつなぐデジタルアーカイブの活用を支援するEPAD[c]菊池友理

――さきほど飯原さんが大人計画のDVDの話もされていましたが、映像で演劇作品を観た体験はありますか?

蓮見「大学にDVDが何本かあったので、それを見たり、授業でも見ることがあったり。その時はDVDでしたが、そもそもどこで売っていて、どうやって買っているのかすら知りませんでした」

吉原「私も大人計画は映像で見てました。WOWOWで演劇作品を配信してくれるので。でもWOWOWってちょっと料金が高いから、もう少し身近な、学生でも手が届くような映像媒体で見れたらすごくいいなって思います」


――EPADの配信事業に関して言えば、各著作者の権利関係をクリアできたものからリストに加えていき、徐々に増やしつつある状況です。とはいえ、権利的にどうしても配信化が難しい作品も出てきてしまうのですが。

吉原「たしかに、権利の問題とかは、本当にいろんな人が直面してるのかなと思います」

蓮見「でもアーカイブだったら残せますもんね。映像で演劇演劇を観るという文化そのものが、世間一般で見たらまだほとんど生まれたてみたいな状況だと思うんです。やっと配信が根付いてきて、本当にここからですね。(EPAD所蔵リストを見ながら)収録年が1989年!これはおもしろくなかったとしても観る意味がある(笑)」

8人の絶妙な掛け合いが笑いを誘うため、間のとり方には特に気をつけていると語るメンバーたち
8人の絶妙な掛け合いが笑いを誘うため、間のとり方には特に気をつけていると語るメンバーたち撮影/興梠真穂

――いちばん古いものだと1959年の作品があったりします。

一同「えーっ!」

道上「残ってるんですね」

吉原「見たい!」

今後はどんな活躍を見せてくれるのか、期待が高まる
今後はどんな活躍を見せてくれるのか、期待が高まる撮影/興梠真穂

なまものである舞台作品と映像配信の関係について、配信側としてはどう感じているのだろうか。コロナ禍を経た変化を踏まえながら、蓮見はこう語る。

蓮見「実は、一番最初にコントライブをやっていたころは、配信をやりたくなかったんです。やっぱり舞台は生で観るものだから、熱量が伝わらないと思っていて。自分だけじゃなく、結構そういう空気が蔓延してたと思います。でもコロナがあって、配信をやらなきゃいけなくなってやってみたら意外と大丈夫で、しかも劇場のチケットの価値はむしろ上がった感じになった。『俺、なんか完全に間違えてたな』と思いました(笑)。そう考えると、やっぱりここからいろいろ変わっていくんだろうなと思っています。
そもそも生で見てほしい理由は、作品の意図が伝わりやすいとか、ウケやすいとか、お客さんの反応を肌で感じたいから。つまりそれは自分の表現者としての欲求を満たすものでもあります。逆に配信は、自分たちの今後の展望に関わるもの、例えば地方に行きやすくなったり、生活に関わる面も強いものです。
いまは自分たちの公演で配信の手配をしていますが、画質やスイッチングなどの面で、まだ動画プラットフォームで配信できるほどのクオリティに達してないんですよね。とはいえライブから配信までのスピード感も必要なので、時間や技術をかけた高品質収録であればいいというわけでもない、というのが現状です。でもEPAD事業のようにアーカイブとしてずっと残るものがあるなら、ここからいろいろ動いていきそうですね。演劇って基本的に『出会えない』コンテンツだから、これでハマる人は絶対増えると思います」

配信についても、新たな企画を準備中だと語るダウ90000。舞台のみならず映像や配信での活動においても、にぎやかな未来を見せてくれるはずだ。

取材・文/北原美那

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