極上の劇場環境でこそ映える!唯一無二の体験型ドキュメンタリー『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』のスゴさ

コラム

極上の劇場環境でこそ映える!唯一無二の体験型ドキュメンタリー『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』のスゴさ

デヴィッド・ボウイという名前を聞いた時、思い浮かべるイメージは人によって様々だろう。グラム・ロックのアイコン、「ジギー・スターダスト」に扮して70年代に一躍注目を集めたボウイ。その後、作品ごとに音楽スタイルを変化させ、いち早くシンセサイザーを取り入れて、のちのテクノ/ニュー・ウェイヴに影響を与えたかと思ったら、80年代には「レッツ・ダンス」の世界的な大ヒットでダンディなロックスターとして人気者になる。その一方で、『地球に落ちてきた男』(76)、『戦場のメリークリスマス』(83)といった映画で俳優としても存在感を発揮した。時代と共に変化して、その時々に新しい顔を見せてくれたボウイ。そんなボウイの魅力に迫ったのが『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』(3月24日公開)だ。

ナレーションやコメントはいっさいなし!音楽、映像、言葉がコラージュされたデヴィッド・ボウイというテーマパーク

本作の監督と編集を手掛けたのは、これまでザ・ローリング・ストーンズやカート・コバーンのドキュメンタリー映画を撮ってきたブレット・モーゲン。10代の時にボウイの音楽に出会って大きな影響を受け、以前から彼の映画を撮りたいと思い続けてきたモーゲンに、ボウイの作品や私物を管理するデヴィッド・ボウイ財団が声をかけたのが本作の発端だ。人生を追いかける伝記本のようなドキュメンタリーではなく、映画にしかできないことをしたいと考えたモーゲンは、まずボウイが生前にストックしていた膨大なアーカイヴ映像を2年間かけてすべて観た。そして、映画に使いたい曲を選んでプレイリストを作成。そのプレイリストを聴きながら、曲に合わせて即興的にボウイのアーカイヴ映像を編集した。

ボウイの作品や私物を管理するデヴィッド・ボウイ財団による全面的な協力もあった
ボウイの作品や私物を管理するデヴィッド・ボウイ財団による全面的な協力もあった[c]2022 STARMAN PRODUCTIONS, ALL RIGHTS RESERVED.


大量の映像と音楽がミックスされた本作には、ボウイの経歴に関する客観的な説明はない。ドキュメンタリー映画にありがちなナレーションやアーティストのコメントはいっさい入れず、モーゲンは自分の胸に響いたボウイの言葉だけを映画に使用。哲学的で思慮深い言葉が、誰よりも雄弁にボウイの人柄を物語っている。ボウイの音楽、映像、言葉をコラージュするようにして作り上げられた本作は、デヴィッド・ボウイというテーマパークを探検するような体験型ドキュメンタリー。だからこそ、IMAXという大きなスクリーンや、ドルビー・アトモスという立体的な音響が映画を楽しむうえで大きな役割を果たしている。

ボウイの哲学的で思慮深い言葉が観客に語りかけ続ける
ボウイの哲学的で思慮深い言葉が観客に語りかけ続ける[c]2022 STARMAN PRODUCTIONS, ALL RIGHTS RESERVED.

関連作品