『わた婚』原作者・顎木あくみ×担当編集者がスペシャル対談!清霞と美世の関係性を描く秘訣は、“急激に進展させない”こと
「目黒さん演じる清霞の、等身大の青年らしさがすごくよかった!」(顎木)
──脚本を読んでみていかがでしたか?
木藤「小説の2巻分を、2時間の映画として美しく再編成してくださったことに感動しました」
顎木「実を言うと、書き始めた当初は1巻と2巻の内容を同時進行で展開させようとしていたんです。でも、展開がわかりづらくなるかなと思い、木藤さんと相談して分けることにして。私ができなかったことを映画でやってくださった気がして、ちょっとうれしかったです」
──キャスティングに関しては?
木藤「目黒さんに決まったと聞いて『かっこいいね~』って(笑)」
顎木「でしたね(笑)。こんなに素敵な方が清霞を演じてくださるんだなって、すごくうれしかったです。そして今田(美桜)さんはすごくキラキラなさっている方なので、どんな美世になるかまったく想像できなくて。でも、いざ映画を観たら違和感なく『あっ、美世だ』と思ったので、すばらしかったです」
──完成した映画をご覧になった感想は?
顎木「冒頭に、街を俯瞰する映像が出ますよね。それが和風なのに、ファンタジーらしさもあって。すっごくいいなと思い、期待が一気に高まりました。美世と清霞はもちろん、ほかのキャラクターたちも原作を上手く読み取り、昇華してくださっているのを感じて。実写という現実と小説をつなげてくださっている気がしました」
木藤「顎木さん、『清霞の等身大の青年らしさがすごくよかった』とおっしゃっていましたよね。ちょっとした仕草や間から、彼の人間性が伝わってきて…」
顎木「そうなんです。キャラクターではなく、人という感じがして。五道と一緒にいるシーンなど、気安い感じでポンポンと会話しているのがすごくよかった。お仕事のシーン全般、清霞の素が見えて素敵でしたね。同じ年ごろの男性が集まったら、あんな感じでワチャワチャするでしょうし」
木藤「そんなかわいらしさもありつつ、戦っている時は本当にかっこよかったですよね。軍服もめちゃめちゃお似合いでした」
顎木「実は、写真で衣装を見せていただいた時は『思ったより青が強いな』と感じたんです。でも、画面の中で見たら絶妙に映えていて素敵でしたね」
「なにもかもうまくいかない美世を体現した、今田さんの演技がすばらしかったです」(木藤)
──清霞と美世の空気感はいかがでしたか?
顎木「2人ならではのゆっくりしたテンポをきちんと表現していただいて、うれしかったです」
木藤「ポンポンポンと話が進まない感じが、まさに清霞と美世でしたね。それぞれ手探り感があり、言葉にしたあとにちょっと後悔したりもして。そういった会話のやり取りがすごくいいなと思いながら見ていました」
──先程、「どんな美世になるんだろう?」とおっしゃっていましたが。
顎木「思っていたより、すっごくボロボロでした(笑)香耶にお茶をかけられるシーンから衝撃的で、『実写で本当にやるんだ!』と思いましたし、生身の人間がやると一層迫力がありました」
木藤「初めて久堂家を訪れるために、タクシーから降りた時も。ぬかるみに足がはまるのが、なにもかもうまくいかない美世のキャラクター性をよく表していて。ちょっとしたシーンにいたるまで、今田さんの演技がすばらしかったです」
──ファンタジー描写に関してはいかがでしたか?
顎木「異能を使う時、顔に模様が出るのがいい工夫だなと思いました。視覚的にわかりやすいですよね。小説だとそこまでの描写は必要ないので、映画ならではの試みとして雰囲気も出るし、すごくいいなと思いました。あと、鳥になる式もかわいかったです」
木藤「小さい鳥ってかわいいものだと思うんですけど、顔がメンフクロウみたいに絶妙に平坦で。首がカタカタカタって動くところとか、キモカワイイの塩梅が絶妙でしたよね」
顎木「自然界には絶対にいないだろうという違和感が伝わってきて、すばらしいデザインだと思いました」
──小説を書く時、ファンタジー描写で気をつけていることはありますか?
顎木「あまりごちゃごちゃしすぎると読者の皆さんも冷めてしまうと思うので、わかりにくいことは避けようと心掛けています。異能が出てくる時点で設定自体がちょっと複雑ではありますし。そのぶん、動きや使い方はなるべくシンプルに。もともと恋愛ものなので、バトルのシーンもあまり入れ過ぎないようにしています」
──異能を操る清霞を映像で見てみて、いかがでしたか?
顎木 「『(火の異能により)炎上している屋敷っていいな~』と思いました(笑)書いている時は自分で想像するしかないので。実際に映像で見るとすごく迫力があり、『本当に燃えてる!』と驚きました」