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「ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン」牧原亮太郎監督が考える、コンペティション作品のトレンド「自分が抑圧されているから発信している」

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「ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン」牧原亮太郎監督が考える、コンペティション作品のトレンド「自分が抑圧されているから発信している」

新潟市で開催中の第1回新潟国際アニメーション映画祭にて、「コンペティション監督によるトーク」が、3月21日に新潟市中央区の古町ルフル広場で行われ、本映画祭コンペティション部門で唯一日本人から選ばれている『劇場版「ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン」』の牧原亮太郎監督と本映画祭プログラム・ディレクターの数土直志が登壇した。

本作は、Netflixで配信中のアニメシリーズ「ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン」を長編作品として再編集を行ったもの。人間とヴァンパイアが長年戦争を続けている世界で、主人公・モモとヴァンパイアの女王フィーネが、共に暮らせる「楽園」を目指す旅を描く。プロダクションI.Gが製作、「進撃の巨人」などで知られるWIT STUDIOがアニメーション制作を担当している。

「コンペティション監督によるトーク」に登壇した牧原亮太郎監督
「コンペティション監督によるトーク」に登壇した牧原亮太郎監督

牧原監督は、WIT STUDIO初のアニメーション作品である『ハル』(13)で監督デビューを果たし、その後『屍者の帝国』(15)を手掛け、本作が3本目の作品となる。本作では、原作、脚本、監督を務めており、絵コンテも自身で担当したと牧原監督は話す。「最初は自身で脚本をやるつもりはなかったが、最終的には自分が一番中心でイメージを持っていたので担当することになった。絵コンテも、脚本を自分で手掛けていた関係上、後で修正しようと思っているところを伝えなければならないので、なかなか人におまかせできなかった」。

「コンペティション監督によるトーク」に登壇した、プログラム・ディレクターの数土直志
「コンペティション監督によるトーク」に登壇した、プログラム・ディレクターの数土直志

この絵コンテも含めて、すべて監督が担当することは珍しいと数土が指摘すると、牧原監督「コンテを一人で手掛けると時間も含めて負担がかかるので、分担して早く作ってチェックの時にクオリティを上げていくやり方もありますが、こだわりを持ってコンテを描いていると、一番イメージを持っているので、そのイメージを誰にでも伝えることができ、結果ローコストになることもあります」と、本作独自の制作手法について明かした。

数土は「本作は音楽に力を入れているように見えた」そうで、その演出について問うと、「いわゆる『歌もの』にしようとは思っていなかったんですが、やはり音楽で語るっていうことがやっぱり好きだった。ただ、本作はもともとはアニメシリーズで約25分の5話分で制作しているので、音楽を流そうとすると尺との戦いがありました。セリフを削って音楽だけで物語ることが自分は本来好きだったりするので、やっぱり力を入れたいところでした」と、牧原監督は演出でのこだわりを語った。

「コンペティション監督によるトーク」の様子
「コンペティション監督によるトーク」の様子

会場の方より「この作品の優れているところ」を質問されると、牧原監督は「キャラクターが無言で立っているところとかとか、なんにもしていないところとか、そういうところに人生を感じて欲しいと思って頑張って表現していました。こういうところに、キャラクターの苦しい立場とか矛盾とかを、なんとか入れようとしました」と、本作の注目すべきポイントをアピールした。

今回のコンペティション作品には「母親と娘」を描いた作品が多かったそう。数土が「なぜ母と娘の関係をいま問うのか」と尋ねると、牧原監督も同様のことを考えていたという。「この前『リコリス・リコイル』の足立(慎吾)さんとも同じ話をしていました。『なんでみんなこんな物語を作ってるんだろうね』という話をして、最終的には『自分が抑圧されているから、発信しているんだろうね』という話でした。本作も、『母と娘』とはちょっと違うのですが、自分の生き方が決められてる感じっていうところは共通しているのかなと思います。これはいまの人達にも共通することだと思うので、そういうものをもっと強くしたいと思ってやっているのだと思います」。

「母親と娘」を描く理由について解説した牧原監督
「母親と娘」を描く理由について解説した牧原監督

新潟に来るのは2度目だという牧原監督は、「前に一度来たときは2時間ぐらいしかいなかったのですが、こんなにいい場所だと思っていなくて驚いています。東京からも2時間ぐらいで空港も近いし、アニメーションとして盛り上げていくには、とても良いのではないかと思います」と話した。


最後に牧原監督は、「本作はNetflixの方でも観られるので、気になった方はぜひご覧ください。今日言っていたことが本当か嘘かは、自分の目で確かめて欲しいと思います」と挨拶をした。また数土も「とても良い作品で、アニメの作品の数がとても多いなか作家主義がなっていて、正直予算もかなり使ったのではと思うほどこんなに出来がいいアニメはまだあるんだという気持ちがある。ぜひ観て欲しいです」と、本作への想いを付け加えた。

第1回新潟国際アニメーション映画祭は3月22日(水)まで開催
第1回新潟国際アニメーション映画祭は3月22日(水)まで開催

第1回新潟国際アニメーション映画祭は、3月22日(水)まで開催。最終日には、コンペティション部門授賞式がりゅーとぴあ(新潟市民芸術文化会館)にて行われ、映画祭のフィナーレとして、石田燿子と米倉千尋によるアニソンライブも予定されている。

取材・文/編集部

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