映画は“インターネット”をどう描いてきた?1990年代の傑作スリラーから『search/#サーチ2』まで
物語がすべてPCの画面上で展開していくという革新的なアイデアと巧みなストーリーテリングで、世界中の観客にこれまでにない新たな映画体験をもたらした『search/サーチ』(18)。そのシリーズ第2弾となる『search/#サーチ2』が4月14日(金)より公開される。
前作では突如行方不明になった娘の無事を信じる父が、不慣れなIT知識を駆使しながら娘の衝撃の真実に近付いていくストーリーが描かれたが、最新作の主人公はデジタルネイティブ世代の高校生。ロサンゼルスから遠く離れた南米コロンビアを旅行中に行方不明になった母を探すため、検索サイトや代行サービス、SNSなど使い慣れたサイトやアプリを駆使する姿が描かれていく。
まだメールが“手紙の延長”の存在だった1990年代から、インターネットが急速に普及しSNSが台頭してきた2000年代。そしてChatGPTやNFTなど、それまで誰も想像すらできなかった新技術が日夜話題をさらうようになった現代。そうした時代の変化と共に、映画のなかでのインターネットの描かれ方も刻々と変化を続けてきた。その歴史を年代順におさらいしていこう。
サスペンスとラブストーリー、インターネットが映画に新たな表現をもたらす
まずは1990年代。サンドラ・ブロックが主演を務めた『ザ・インターネット』(95)は、まさにインターネットが世の中に普及していく時代を舞台にしたサスペンススリラー。ブロック演じるコンピューター・アナリストが、1枚のフロッピーディスクをきっかけに様々な陰謀に巻き込まれていく様を通して、インターネットという未知の存在への好奇や、その先にある危険をまざまざと描きだした。
しかしその2年後、メールが一般にも普及したなかで大ヒットを記録したのは、インターネットを通して知り合った男女がメールのやり取りを通じて惹かれ合うラブストーリー『ユー・ガット・メール』(98)。トム・ハンクスとメグ・ライアンの2大スターの共演で、オリジナルであるエルンスト・ルビッチの『桃色の店』(40)の“文通”という設定を“メール”へと脚色。名前も顔も知らない相手と交流を持てるインターネットが、“運命の出会い”を導くことで、映画とインターネット、インターネットと観客の距離を大きく近付けた作品だ。
現代に影響を与えた2人の天才の物語も映画に!
2000年代に入ると、瞬く間にインターネットは世界中の多くの人々になくてはならない身近なものとなる。インターネット上で見知らぬ人々と繋がることができる、現代まで脈々と続いているSNS社会の幕開けとなったのは、やはり「Facebook」の登場。その創設者である若き天才マーク・ザッカーバーグの逸話を描いたデヴィッド・フィンチャー監督の『ソーシャル・ネットワーク』(11)は、インターネット社会の歴史が大きく変わる瞬間を描いた記念碑的な一本。公開から10年以上が経ったいまでも色褪せない傑作だ。
一方でザッカーバーグの「Facebook」開発と同時期に、日本でも天才開発者が登場した。社会問題にまで発展したファイル共有ソフト「Winny」を開発した金子勇だ。彼の不当逮捕から、将来の開発者たちの未来を守るための闘いを描いた『Winny』(公開中)もまた、現代のネット社会を知るうえで欠かすことのできない作品。昨今デジタル資産の所有権を明確にするNFTなどが注目を集めており、そうしたブロックチェーン技術の先駆けともいえる「Winny」への関心は、日増しに高まっている。
たった5年で劇的なアップデート!『search/#サーチ2』が“現代”を象徴する
そして『search/#サーチ2』で描かれるのは、母を探すデジタルネイティブ世代の高校生ジューン(ストーム・リード)が味わうスリリングな捜索劇。全世界80億人の行動がデジタル上に記録される現代。ジューンはスマホの位置情報や監視カメラ、銀行の出入金記録をたどりながら母を捜索していく。
しかし不可解な出来事が相次ぎ、次第にそれはSNSで瞬く間に拡散され、国境を超えて大きなトレンドに。次から次へと憶測が飛び交い、秘密と嘘にまみれた深い闇に襲われるジューン。現代のSNS社会の闇も描く本作は、前作からたった5年でデジタル社会がまた一段とアップデートを遂げたことを象徴している。
もちろん今回も、全編がデジタルデバイス上で展開。世界中のデジタルリソースとつながりスピーディに進んでいく物語には全画面中に伏線が張り巡らされており、一瞬たりとも目が離せない。常に進化を止めないデジタル社会の“2023年”という現在地を切り取り、それに翻弄されるスリル。ぜひ映画館で、この革新的なサスペンスに没入したい!
文/久保田 和馬