1978年、日本で『スター・ウォーズ』を撮った高校生がいた!映画愛が“刺さる”青春映画『Single8』を知っているか?
平成「ウルトラマン」シリーズや『なぞの転校生』(98)、NHKで放送されたテレビドラマ「いいね!光源氏くん」などを手掛けてきたジュブナイルSFの名手、小中和哉監督が、8ミリ映画づくりに熱中した自身の“原点”ともいえる青春時代を映画にした自伝的作品『Single8』が、現在渋谷のユーロスペースほか全国順次公開中だ。
“刺さる”という評判が、SNSなどでじわじわと広がっている本作の魅力や見どころを、小中監督が明かした想いや、本作に魅了された、是枝裕和、黒沢清、樋口真嗣ら名だたる映画監督たちのコメントと共に紹介していこう。
物語の舞台は、『スター・ウォーズ』(77)が日本で公開された1978年の夏。自分も巨大な宇宙船を撮りたいと大興奮の高校生の広志(上村侑)は、友人の喜男(福澤希空)と宇宙船のミニチュアを作り8ミリカメラで撮影を始める。そんな折、文化祭でのクラスの出し物を決める際に、勢いに任せて8ミリ映画を作ることを提案した広志は、想いを寄せているクラスメイトの夏美(高石あかり)にヒロインをお願いするもあっさりと断られてしまう。そして広志は、彼女を説得するため、喜男と映画マニアの佐々木(桑山隆太)の3人でストーリーを練り始める。
小中和哉監督の“原点”を、注目の若手キャストたちが演じ切る!
「8ミリ映画づくりに夢中になっていたあの頃のことを映画にしたいとずっと前から考えていた。映画を観るのはおもしろいけれど、作ることのほうがもっとおもしろい。その感覚を観客にも共感してもらえる映画を作りたい」。そう語る小中監督は、中学生の時にスティーヴン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』(75)を観て触発され、8ミリ映画『CLAWS』を初めて製作。本作の冒頭では、そのワンシーンを再現した8ミリ映画が登場する。
劇中で主人公たちが制作する8ミリ映画『タイム・リバース』もまた、小中監督が高校1年生の時に手掛けた『TURN POINT 10:40』を再現したものだ。「映画を作っていくなかで、映画にとって大切なのは特撮だけではなく、ストーリーやカメラワークやカット割や演技など、他にも多くの大切なことがあると気づき、“映画ごっこ”から脱皮して“映画”を作らないといけないと思い至った」。後に商業作品で活躍する小中監督のまさに“原点”ともいえる瞬間を、この『Single8』で見ることができるだろう。また、Bカメ・8ミリ協力として、8ミリ映画からキャリアをスタートさせた今関あきよし監督がクレジットされているのも、映画ファンには見逃せないポイントだ。
また小中監督といえば、長編デビュー作『星空のむこうの国』(86)では本作にも主人公の母親役として出演している有森也実を、『なぞの転校生』では先日の第45回日本アカデミー賞で最優秀主演男優賞に輝いた妻夫木聡を輩出。『ぼくが処刑される未来』(12)では本格ブレイク前の福士蒼汰と吉沢亮、『赤々煉恋』(13)では土屋太鳳を主演に抜擢するなど、若手俳優を育成してきた監督としても知られている。本作のメインキャストたちも、将来有望な注目株ばかりで、「8ミリ映画時代の自分と仲間たちを、若い俳優たちに演じてもらうのは、照れ臭くもワクワクする体験でした」と小中監督は振り返っている。
主人公の広志役を演じるのは、『許された子どもたち』(20)で第75回毎日映画コンクール新人賞を受賞した上村侑。ヒロインの夏美役には『ベイビーわるきゅーれ』(21)で注目を集め『わたしの幸せな結婚』(公開中)にも出演している高石あかり。また喜男役の福澤希空と、佐々木役の桑山隆太はともにホリプロ初の男性ダンス&ボーカルグループ「WATWING(ワトウィン)」のメンバーで、主人公たちが通うカメラ屋の店員の寺尾役には男女混成ダンス&ヴォーカルグループlol(エルオーエル)の佐藤友祐。彼らの今後にも注目が集まるところだ。