1978年、日本で『スター・ウォーズ』を撮った高校生がいた!映画愛が“刺さる”青春映画『Single8』を知っているか?
自主映画経験者や、現代の若者にも刺さるノスタルジイ
近年では松本壮史監督の『サマーフィルムにのって』(21)がスマッシュヒットを記録するなど、自主映画制作にかける高校生たちの姿には青春映画の醍醐味が詰まっている。45年近く前の出来事を描く懐かしさもありつつ、8ミリ映画を知らない現代の若者にも刺さる要素が満載の直球の青春映画でもある。
そしてもちろん、自主映画制作をしたことがある人なら誰もが経験したであろう“あるある”もいっぱい。映画を撮りたいという壮大な夢を叶える楽しさに、好きな女の子をキャスティングして距離が縮まるドキドキ感。出演者も手伝いをしながら数名で撮影に臨み、撮影後には同じ店で同じものを食べて、編集やアフレコに悪戦苦闘し、撮影が全部終わってからミスしていたことに気が付く。そして寝不足で授業中は起きていられない。
本作を観た名だたる映画監督たちは、こぞって賞賛のコメントを寄せている。是枝裕和監督は「なんだかとても幸せな気持ちになりました。僕のように8ミリにあまり触れてこなかった人間にとっても、記憶のなかにあるはずのない映画づくりを追体験していくような不思議なワクワク感に満ちていました」と語り、黒沢清監督は「撮ってるときは何が写っているのかさっぱりわからないのが8ミリ自主映画だった。だから出来上がった作品はいつも予想もしないものになる。あれがスタートだった」と懐かしむ。
ほかにも犬童一心監督や河崎実監督、ヴィジュアリストで映画監督の手塚眞や樋口真嗣監督ら、小中監督と同時代を生きた監督たちが、『Single8』という作品に込められた1970年代のノスタルジイに心打たれたようだ。
ちなみに本編の終盤には、主人公たちが作った8ミリ映画をフル尺で観ることができる。実際に8ミリカメラを使用し、当時と同じ方法で撮影・編集が行われた貴重な作品となっているので、2本の映画を観たようなオトク感。さらにエンドロールでは劇中で引用された小中監督らの8ミリ時代の作品のフッテージも観ることができるし、“シネカリ”など、若者たちを熱狂させた8ミリ映画特有の撮影方法にもフォーカスされ、当時を知る貴重な資料としての側面も。
あの頃8ミリ映画を作っていた人や映画づくりを志したことのある人はもちろんだが、現役の中高生にこそ観てほしい作品だ。8ミリフィルムに触れる機会は少なくなったが、いまではいつでも手に持っているスマートフォンで気軽に映画が撮れて編集もできる時代。この春休みに仲間たちとこの映画を観て、どんなきっかけでも自分の思いを映画にすることができる楽しさを知って、たった数年の学生時代にしか得られない、特別な喜びを味わってほしい。