ニコラス・ケイジが自分自身を演じる『マッシブ・タレント』のオマージュ元ネタをチェック!
演技派スターとして若くしてハリウッドの頂点に君臨したものの、スキャンダルもあり一時は苦労も味わったニコラス・ケイジ。近年は小規模だが挑戦的な良作への出演が相次ぎ、再び充実のキャリアを築いている。そんなケイジの最新作が『マッシブ・タレント』(公開中)だ。自身を彷彿とさせる“ほぼ本人役”に挑んだ本作には、ケイジのキャリアを彩ってきた過去作からの引用、オマージュがズラリ!知っておくとより楽しめる小ネタたちをここでは紹介していく。
ニコラス・ケイジがひょんなことからFBIのスパイに!
かつては大作映画にひっぱりダコだったが、いまやオファーもなく、あるのは多額の借金ばかりのニック・ケイジ。別れた妻と娘からも愛想を尽かされドン底の日々を送る彼のもとに、スペインの大富豪ハビ(ペドロ・パスカル)の誕生日パーティのオファーが舞い込んでくる。
100万ドルの報酬のため、嫌々足を運ぶニックだったが、狂信的なファンのハビと思いがけず意気投合。しかし、そんな楽しい時間も束の間、接近してきたCIAからハビが犯罪組織のボスであると伝えられ、半信半疑ながらもスパイとして危険なミッションに挑むことに…。
映画の幕開けを飾るのは『コン・エアー』
テレビで映画を鑑賞中のティーンの女の子が、しみじみと「ニコラス・ケイジって最高」とつぶやくと同時に、突然部屋に押し入ってきた何者かに連れ去られてしまうショッキングなシーンから幕を開ける『マッシブ・タレント』。
この時彼女が観ていた作品が、凶悪犯を護送する飛行機のハイジャックに立ち向かう元軍人の活躍を描いた『コン・エアー』(97)。ボサボサのロン毛&無精髭にタンクトップ姿の主人公キャメロンが、娘と再会しウサギのぬいぐるみを手渡す感動的なクライマックスシーンが映しだされる。
『マッシブ・タレント』の中盤では、富豪ハビのグッズコレクションとしてウサギのぬいぐるみが登場し、ニックも思わず「ウサギを箱に戻せ!」と名ゼリフを再現。なお『コン・エアー』で異彩を放っていたこのアイテムはケイジが発案したのだそう。
『ワイルド・アット・ハート』的クレイジーな空想の友だちも
ドン底の日々を送るニックがなにかと頭を悩ますたびに登場するのが、絶好調だった若き日の自分の姿をしたイマジナリーフレンドのニッキー。ケイジが暴力的な男、セイラーに扮した『ワイルド・アット・ハート』(90)のTシャツを着用しているニッキーは、セイラーを彷彿とさせるどこか危険な雰囲気を纏っている。
しかし実はこの男、セイラーではなく『ワイルド・アット・ハート』の番宣でケイジが「Wogan」というイギリスのトーク番組に出演した際の姿をオマージュしたもの。「Wogan」でのケイジは、スタジオに登場するや否や、宙返りや空手キックを披露。さらにポケットから取り出したお札をばら撒き、しまいには着ていたTシャツをホストにプレゼントするといった奇行を連発した。
このケイジの姿を参考としたニッキーも、落ちぶれてヨボヨボのニックに対して、「お前はニック・ファッキーーーーーーーーーン・ケイジだ!」と喝を入れ、キスまでするイケイケ状態。あまりのハイテンションな姿は笑わずにはいられない。
また、性格が正反対の2人のニコラス・ケイジが言葉を交わしている姿は、まるでケイジが双子の脚本家チャーリー・カウフマンとドナルド・カウフマンを1人2役で演じた『アダプテーション』(02)そのもの。この作品のドナルドも、見方によってはチャーリーの妄想と考えられないこともなく、そんなところにもつながりを感じさせる。