『生きる LIVING』が黒澤明から受け継いだ、“希望”のメッセージ「人生は捨てたもんじゃない!」「生き方の糧になる」

コラム

『生きる LIVING』が黒澤明から受け継いだ、“希望”のメッセージ「人生は捨てたもんじゃない!」「生き方の糧になる」

誰しもの人生と重なりあう、共感必至のテーマ性

オリジナルの『生きる』を幼い頃に観たというイシグロは、そこに込められたメッセージに衝撃を受け、影響されながら生きてきたと語っている。感情を表に出さない国民性という日本とイギリスの共通点のみならず、戦後の復興と再生のなかを生きた人々の人生観は、現代にも通じているのだろう。

【写真を見る】黒澤明の名作『生きる』が、70年の時を経て再映画化!映画史に残る、ブランコの名シーンは2作品でどう変化した?
【写真を見る】黒澤明の名作『生きる』が、70年の時を経て再映画化!映画史に残る、ブランコの名シーンは2作品でどう変化した?[c]1952TOHO CO.,LTD

そうした時代も国境も問わない普遍的なテーマは、オリジナルから本作へと丁寧に受け継がれている。それだけに試写会の来場者の多くが、自身の生き方や体験と重ねずにはいられなかったようだ。

「自分も麻痺してただ日常を送っている気がしてハッとさせられました」(女性・26歳)
「自分の人生をふと振り返った時に、理想と違うもどかしさや人生に意味を見つける難しさを感じる」(男性・21歳)
「“ゾンビ”と呼ばれるウィリアムズ。自分の心境に近いものがあった」(男性・41歳)
「自分はなにをしているのか、なにをしたいのか。なにかしなければ、と思うことが度々ある」(女性・47歳)


ウィリアムズの新たな一歩が、周りの人々にも影響を与えていく
ウィリアムズの新たな一歩が、周りの人々にも影響を与えていく[c]Number 9 Films Living Limited

また、本作を観て一歩踏みだそうと、自らの生き方や働き方、そして周囲の人との関わり方を変えようと心に決める前向きなコメントも見受けられた。
「私もまだこれだけ時間があると思ったら、楽しく好きなことをして最後を迎えたい」(女性・54歳)
「病気の母をいま以上に大切にし、少しでも楽しい思い出を残したいと思いました」(女性・45歳)

いつまでも残る余韻と、胸を打つ“希望”のメッセージ

来場者のなかで黒澤監督の『生きる』をすでに観ていた人は、全体の4分の1ほどだった。オリジナルを鑑賞済みの観客からは、黒澤明監督の名作をイギリスナイズしつつ現代に蘇らせてくださりありがとうございました」(男性・28歳) と、リスペクトにあふれた出来栄えに感謝する声も。

“生きる”というテーマと希望に満ちたメッセージで、鑑賞後も余韻たっぷり
“生きる”というテーマと希望に満ちたメッセージで、鑑賞後も余韻たっぷり[c]Number 9 Films Living Limited

一方で、「観て本当に良かった。オリジナルを観ていないので、帰ったらすぐに観ようと思います」(女性・25歳) と、本作をきっかけに黒澤映画に興味を持つ声も複数見受けられた。
「生き方について、自分はどう生きたいか考えさせられました」(女性・34歳)
「各年代で捉え方が違うかもしれないけれど、人生におけるテーマだと思う」(女性・47歳)
「日常のなかに埋もれてしまいがちな大切なことを思い起こされる素敵な映画だと思いました」(女性・55歳)

それぞれの立場や世代、経験によってまるで見え方が異なるのが“生きる”ということ。黒澤監督のオリジナルが70年経ったいまでも世代を超えて観続けられる作品になっている理由の一つに、観るたびにその見え方が変化していくということもあるのだろう。

そのテーマをしっかりと受け継いだ本作もまた、今後何十年にもわたって多くの人の心に残る作品となるはずだ。映画館でいまこの物語と出会える喜びを味わいながら、じっくりとその余韻に浸ってみてはいかがだろうか。

文/久保田 和馬


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