燃え上がる世界遺産に飛び込だような臨場感!世界が驚愕した「死者ゼロ」の奇跡の救出劇『ノートルダム 炎の大聖堂』は”IMAX推し”
リアルな炎に圧倒される…目から耳までの全方位の没入感
本作で一番の見せ場は消防士たちの活躍だ。取材陣の殺到や野次馬も加わった大渋滞や狭い路地など行く手を阻む障害物への対応、到着後も消火栓の不備に悩まされたりと、消火の前段階からトラブル&苦労の連続。道を阻む駐車車両を移動するなど障害物に対処する消防士たち、その間にも燃え広がってゆく大聖堂、そして当時のニュースやSNSにアップされた膨大なフッテージを組み合わせたスプリットスクリーン(画面分割)に、改めてIMAX映像の高精細を実感させられた。
特筆すべきはなによりも消火シーン。防火服にヘルメット、酸素ボンベにホースを背負った重装備の消防士たちは狭い通路や階段を駆け登り燃えさかる鐘楼近くに到着。目の前で燃えさかる炎に向かって水をかけていく。断熱材を使ったハウジング(防護ケース)に入れられたカメラで、炎のすぐ間近から撮影を行ったという。迫真のIMAX映像と、Dolby Atmosでリアルに伝わる息づかいや燃えさかる炎の音により、まるでその場にいるような没入感は圧巻!隊員たちがいかに危険な現場にいたのか、改めて実感させられる名シーンだ。
激しい火炎描写のほか、火元を探して屋根裏を小さなライトを頼りに進む隊員たちの姿もスリリングに描写。煙が立ちこめた薄暗い中での繊細な映像は、ダイナミックレンジの広いIMAX認証デジタルカメラが存分に威力を発揮した。最前線だけでなく建物に使われた大量の鉛が熱で溶けて降りそそいだり、黒い雪のように舞い散る灰、次々に落下する彫刻や壁などリアルな描写が臨場感満点に描かれる。
撮影にあたっては大量のアーカイブ映像や記録を分析。大聖堂をミニチュアや3Dモデルで再現し、火の回りから隊員たちの現場での動線を徹底的に検証して再現された。撮影は実際の大聖堂内部のほか、消失部分などはスタジオ内や野外に最大30mものセットを建設。『薔薇の名前』では中世の修道院を、『セブン・イヤーズ・イン・チベット』ではチベット仏教の聖地ポタラ宮を再現し、観る者を圧倒したアノー監督らしいこだわりが光る。
戦っていたのは現場の消防士だけではない。悪条件がそろっていたにもかかわらず、消防士を含めひとりの死者も出さなかった指揮官の的確な判断も再現。事故のさなか現場にはエマニュエル・マクロン大統領が駆けつけたが、実際のフッテージを使用しながら大統領の視察シーンも描かれた。消火活動の知識を持たないお偉方から的外れな指示をされないよう、ダミーの司令部を用意してそこを見学させるくだりをきちんと入れるところに、フランス人気質が見てとれる。
アノー監督は指揮官のほか、これが初の現場となった若き隊員たちの奮闘や、消火活動の突破口を見いだしたベテラン隊員の活躍を通してドラマ性をプラス。命懸けで社会を支える名もなき人々に熱いエールを送る。深夜、消火活動が続く大聖堂に集まった群衆が、祈りを込めて「アヴェ・マリア」を歌うシーンでは、思わず熱いものがこみ上げてくる。
本作は『ノートルダム 炎の大聖堂』のタイトルどおり、炎に包まれた大聖堂に人々がどう向き合ったのか、その記録であると共に一級のエンタテインメントとして完成した。観たことのない世界が体感できるフォーマットとして進化してきた、IMAXだからこそ可能にした臨場感と迫力を存分に味わってほしい。
文/神武団四郎
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