約10年で深度が増した恐怖の少女エスター…再演のイザベル・ファーマンが語る極意とは?
「ドレスやリボンで着飾って、実は見えないマスクをしている」
ちなみに、本作でメガホンをとったウィリアム・ブレント・ベル監督は、今回のエスターのキャラクターについて『羊たちの沈黙』(91)のハンニバル・レクターからインスピレーションを受けていたそう。最後に、レクター博士を意識したかについて聞いてみた。
「それはちょっとわからないのですが…(笑)。前作のジャウム・コレット=セラ監督からは『イヴの総て』を勧められましたね。一人の女性が憧れの大女優の懐に入り込み、コントロールしていくのですが、その設定がエスターによく似ていたんです。当時は何度も観返していました。また、エスターは特に不気味なマスクを着けているわけではなく、自身の姿をさらしています。一方で、ドレスやリボンで着飾っているので、実は見えないマスクをしていると私は考えています」。
『イヴの総て』(50)は1950年度におけるアカデミー賞で作品賞をはじめ6部門に輝いた作品で、田舎から出てきた俳優志望のヒロインが周囲の人間に巧みに取り入りながら名高い演劇賞を獲得するまでが描かれていく。ホラー映画ではなく、演劇界の裏側を描いた名作と呼ばれるこの作品がベースにあるあたりにも、エスターというキャラクターの一筋縄ではいかないところが感じられる。
前作から雰囲気をガラリと変え、異なるベクトルの衝撃で観客を引き込む『エスター ファースト・キル』。『ハンガー・ゲーム』(12)などへの出演も経て、より深化したイザベル・ファーマンの怪演にも戦慄しながら、“怪物”エスターの誕生の瞬間を目撃してほしい。
取材・文/平尾嘉浩
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