映像BL戦国時代になぜここまで人気に?「美しい彼」大ヒットの要因を考察!

コラム

映像BL戦国時代になぜここまで人気に?「美しい彼」大ヒットの要因を考察!

萩原利久八木勇征のW主演による話題作『劇場版 美しい彼〜eternal〜』が現在公開中。本作は、今年の本屋大賞受賞作家でもある凪良ゆう著、葛西リカコのイラストによる人気小説を実写化して大ヒットし、2023年2月に放送されたシーズン2も好評だったドラマ「美しい彼」の劇場版だ。シーズン1ではスクールカーストの底辺にいる高校生、平良一成(萩原)と、頂点に君臨する“キング”清居奏(八木)とのもどかしい初恋が描かれ、劇場版では大学生の平良と俳優業に勤しむ清居のその後が描かれる。

【写真を見る】ディープな両片思いの巨大感情、小説原作、キャスティング…「美しい彼」にはいくつもの勝因があった!
【写真を見る】ディープな両片思いの巨大感情、小説原作、キャスティング…「美しい彼」にはいくつもの勝因があった![c]2023劇場版「美しい彼〜eternal〜」製作委員会

ドラマシリーズでは初恋の甘酸っぱさだけでは済まされない苦みと、眩しいほどの萌えを融合させ、観る者のハートを鷲づかみにした。原作にガッツリ忠実ではないものの、骨子を捉えた脚本とハッとさせられる映像美にキャスティングの妙も加わり、“人気ドラマ”のひと言では収まらないほどの社会現象を巻き起こした。その勝因はいくつものピースが奇跡的にうまくハマったことにあるんじゃないだろうか。そのピースとはなにかを本記事で考えてみたいと思う。

複合的な要素を備え、他のBL作品とは一線を画した「美しい彼」

絶妙な濃度でライト、コア層ともに支持を獲得
絶妙な濃度でライト、コア層ともに支持を獲得[c]2023劇場版「美しい彼〜eternal〜」製作委員会

いまや飛ぶ鳥を落とす勢いで増加の一途をたどる映像BLだが、このBLブームを担った作品は、ハードで攻めた内容のものと、比較的ライトで優しいタッチの作品に大きく分かれていったと言える。前者はやはりどうしても観る人を選ぶが、後者はそれまでBL系に触れたことがなかった層も入りやすく広く支持された。しかしBLの世界に慣れてきたライト層としては、もうひと押しがほしいと思っていた人も少なくないのではないだろうか。

そこへ来て登場したのがこの「美しい彼」だ。ムズキュンよりもさらにディープな両片思いの巨大感情が放たれ、ソフトながらも性愛表現も展開。ハード系とライト系のちょうど中間に位置する本作は、視聴者には持って来いとなって大いに受けたのだと思われる。しかしBL界においてこういった要素はいまに始まったことではないし、原作小説は2014年に刊行されている。それがいまなぜ脚光を浴びるようになったのかというと、言うまでもなく実写ドラマ化されたからだ。

少女漫画原作ものを好んで観ていた層が流れ着いた先がBL実写化作品だった
少女漫画原作ものを好んで観ていた層が流れ着いた先がBL実写化作品だった[c]2023劇場版「美しい彼〜eternal〜」製作委員会

“読む”よりも“観る”という行為のほうが受動的でハードルが低く、ドラマ鑑賞はメジャーな趣味だ。いまのBL系ドラマのブームは、もともとBL作品を読んでいたBLファンが土台を担っているわけではなく、ドラマや少女漫画原作の映画などを好んでいた人が多く流入したからだと感じられる。そのためにいままで本格的なBL作品を通って来なかった人が、前述した巨大感情や性愛表現といったBLの定番に初めて触れて、「こんな世界があったのか!」と、言わばカルチャーショックを受けて夢中になったのではないだろうか。


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