ブレンダン・フレイザーが語る、『ザ・ホエール』の旅で手にした「オスカー以上に価値あるもの」

インタビュー

ブレンダン・フレイザーが語る、『ザ・ホエール』の旅で手にした「オスカー以上に価値あるもの」

「誰かの命を救ったり、運命を変えるような作品に出会えたことは、オスカー以上に価値のあること」

1968年、米国インディアナ州出身のフレイザーは、1991年に『恋のドッグファイト』で映画デビュー。1999年には、代表作となる『ハムナプトラ 失われた砂漠の都』の主演に抜てきとなり、シリーズ第3弾までが公開された。さらに『センター・オブ・ジ・アース』(08)では主演、製作総指揮を務めるなどハリウッドのトップスターに昇りつめながらも、心身のバランスを崩して長らく表舞台から遠ざかっていた。本作の渾身の演技によってアカデミー賞をはじめ数々の映画賞を受賞したことで、彼の遂げた“奇跡の復活劇”も話題を呼んだ。


俳優業の喜びを語ったブレンダン・フレイザー
俳優業の喜びを語ったブレンダン・フレイザー[c]2022 Palouse Rights LLC. All Rights Reserved.

アカデミー賞の授賞式では、『ハムナプトラ3』で共演したミシェル・ヨー、『原始のマン』(93)で共演したキー・ホイ・クァンとのうれしい再会もあった。人生、そして運命の巡り合わせとはなんとも不思議でおもしろいものだと感じるが、フレイザーも「本当にそう感じたよ」とにっこり。本作をめぐる旅を通して、あらゆる貴重な経験をした彼だが、「本作を観た人から、『疎遠になっている家族と連絡を取りたくなった。連絡できるような気がする』と言われることがよくある。とてもうれしい」と微笑み、そうやって観客とつながることができるからこそ「俳優業が大好き」だと仕事への愛情をあふれさせる。

「映画には、なにかを悟らせてくれる作品、ただただ娯楽として楽しませてくれる作品、そしてその両面を持ったものもあります。僕自身、そういった両面を持ち合わせた作品に関わっていきたいと思っているし、できればそれが社会に貢献できるようなものであれば、とても幸せです。本作のように、観客にとっても『これは自分の人生に重なるな』と思わせてくれたり、深く心に響き、しっかりと語りかけてくれたりするような作品。そういった作品と巡り会えると、とても報われた気持ちになります」と明かす。

「本作においては、肥満症と戦う人々を支援するグループ『OAC(the Obesity Action Coalition)』と連携をしながら撮影が進められましたが、完成作を観た『OAC』の方々からいただいた手紙に『この作品は、絶対に誰かの命を救うと信じています』という一文があったんです。この仕事が誰かの命を救うだなんて考えたことがなかったので、ものすごく報われた気持ちがしました。もちろんオスカーをいただけたことは、とても光栄でうれしいこと。でも誰かの命を救ったり、誰かの運命を変えるような作品に携われたと思うと、なによりもそれは価値のあることだなと思いました。だからこそ、僕はこの仕事が大好きです」と真っ直ぐな眼差しを見せた。

暗い部屋でソファーに座り続ける男、チャーリー役を通して、世界中の人々とつながり、改めて俳優業の喜びをかみ締めたブレンダン・フレイザー。来日して行われた初日舞台挨拶では、「ハムナプトラ」シリーズ続編への意欲をのぞかせるひと幕もあった。これから彼が歩む道のりが、大いに楽しみだ。

取材・文/成田 おり枝

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