全体的にギレルモ・デル・トロ感満載!?異能力バトルアクション『フリークスアウト』を作家・松久淳が語る!

コラム

全体的にギレルモ・デル・トロ感満載!?異能力バトルアクション『フリークスアウト』を作家・松久淳が語る!

全国11チェーンの劇場で配布されるインシアターマガジン「月刊シネコンウォーカー」創刊時より続く、作家・松久淳の人気連載「地球は男で回ってる when a man loves a man」。今回は、松久淳が楽しみにしていたと語る、ガブリエーレ・マイネッティ監督の新作『フリークスアウト』(5月12日公開)を紹介します。

【写真を見る】ナチス・ドイツに攫われた団長を救うため、超人ばかりのサーカス団が立ち上がる!
【写真を見る】ナチス・ドイツに攫われた団長を救うため、超人ばかりのサーカス団が立ち上がる![c] 2020 Goon Films S.r.l. - Lucky Red S.r.l. - Gapbusters S.A.

新作を待ち望んだ監督による異能力バトルアクション

私のまわりで観た人は少ないのですが(って書き出しもどうかと思いますが)、観た人は全員大絶賛しているのが、2017年日本公開のイタリア映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』。
ダメダメな中年男がある時、超人的な力を手に入れ、最初はその能力を私利私欲を満たすために使っていたが、70年代の日本のロボットアニメ「鋼鉄ジーグ」に憧れるヒロインと知り合ったことから、しだいにスーパーヒーローとして悪と対峙していく、という胸熱なアクションでした。
その監督のガブリエーレ・マイネッティ、待ってましたの6年ぶりの新作が『フリークスアウト』です。

ナチスの侵攻が進む第二次世界大戦時代のイタリア。あるサーカス団の、光と電気を自由に扱えるが人と接することができない少女、虫を操る青年、毛むくじゃらの怪力男、磁石のように鉄を引き寄せるピエロの、普通の社会には適合できない4人。
サーカス団の団長が行方不明になったことから、少女は団長を捜しに、ほかの3人は仕事を求めてドイツのサーカス団へ。しかしドイツサーカス団の団長フランツは、超能力者をナチスの戦いに利用しようと、次々と人体実験を繰り返す男でもあった。超能力者対ナチス、さらにレジスタンスも絡んで話は進んでいきます。

ナチス・ドイツは戦争に勝つために超人たちの力を利用しようとするが…
ナチス・ドイツは戦争に勝つために超人たちの力を利用しようとするが…[c] 2020 Goon Films S.r.l. - Lucky Red S.r.l. - Gapbusters S.A.


主人公4人組はもちろんすべてのキャラクターの造形から、特殊能力の描写、フランツが幻想のように見る未来、きらびやかなサーカスからクライマックスの夜の列車アクションまで、徹底的にこりまくったビジュアルだけでも見応え十分です。
身も蓋もないこと言ってしまうと、全体的にギレルモ・デル・トロ感満載。身も蓋もなさすぎましたね。でもほめ言葉です。

話ももちろん文句なしで、劇中、フランツが実際に4人組をそう呼ぶのですが、『ファンタスティック・フォー』ほかマーベルのスーパーヒーローものふうの展開が、ダークファンタジー&戦争映画の世界で繰り広げられていき、さらには『イングロリアス・バスターズ』的な痛快さまで連れていってくれます。
「鋼鉄ジーグ」とはまた違うテイストですけど、ガブリエーレ・マイネッティ、間違いなしでした。今後も、追っかけます。

個人的には、永井豪先生の熱心なファンということで(やはりギレルモ・デル・トロも同じく大ファン)、永井豪作品を映画化してほしいなと夢想してみたりしてます。「デビルマン」などどうでしょう。20年近く前に日本で実写作品がありましたが、それがあまりにも(以下自粛)。

俳優陣で言うともちろん主演の少女は可憐ですし、誰もがキャラが立ってますけど、やはり非道なナチス将校、情緒不安定なヒステリー男、天才的ピアニスト、狂気のマッドサイエンティスト、未来が見える自身も超能力者と、キャラてんこ盛りのフランツが役得すぎました。
名前同じくフランツ・ロゴフスキというドイツの俳優ですが(『未来を乗り換えた男』という映画の主演で観たことありました)、それこそクリストフ・ヴァルツのように、いずれ国際的な俳優になりそうな予感がします。


文/松久淳

■松久淳プロフィール
作家。著作に映画化もされた「天国の本屋」シリーズ、「ラブコメ」シリーズなどがある。エッセイ「走る奴なんて馬鹿だと思ってた」(山と溪谷社)が発売中。

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