泣けるけど笑える“親バカあるある”満載!?文学YouTuberベルは父親目線で宮沢賢治を描いた『銀河鉄道の父』をどう観た?
「政次郎と賢治のぎこちなさがとてもリアル」
本作のメガホンをとったのは、『八日目の蟬』(11)、『ファミリア』(23)の成島出監督。映画を親目線で観たというベルは、政次郎が赤痢にかかった賢治を泊まり込みで看病するシーンが心に残ったと言う。割烹着を身につけた政次郎のかいがいしい献身ぶりは、演じる役所のチャーミングさも相まって、独特のユーモアを醸しだしている。
「政次郎が一番任せられる存在の医者について、『医者ごときには任せられん!』みたいなことを言っていて、思わず笑っちゃいました。政次郎は別に適切な看病もできないし、周りの空気も読めません。賢治のお腹を温めたこんにゃくも、後日、賢治から熱すぎたと言われるし、ほかの重病人の方々に挨拶をして回るのも迷惑だし、挙句の果てに、自分が病気をもらっちゃう(苦笑)。そこは自己満足的な部分もあるし、自分自身も気をつけなきゃと思いつつ、“親バカあるある”だなと思いました」。
政次郎と賢治が織りなす親子の不器用な関係性については「ぎこちなさがとてもリアルでした」と語るベル。
「父親からすれば、息子を縛っても、自由にしても、『これで本当によかったのか?』という疑問が終始つきまとうと思います。でも、実際によかったかどうかの答えは、子どもの成長を見てでしかうかがい知ることはできないのかなと。もちろん根底には愛があるけど、時代性や男親と息子というところで、もどかしい親子関係だなと思いました」。
また、兄の賢治を支え続けた妹トシ役を森七菜が演じているが、ベルは「小説を読むと、女性としてはトシを推さずにはいられませんでしたが、映画ではより一層、パワフルに描かれていました」と指摘。
「宮沢賢治が目指す起業や信仰などは、その先にいる人が見えないと、いまひとつ空回りしてしまうというか、不器用さが際立ち ます。 しかし、トシが病に冒されてからの姿勢や、のちに賢治が貧しい農民に農業を指導するシーンなどから、やはり賢治は愛すべき弱き者のためになりたいといった明確な“短期的目標”があることで、いろいろなことを昇華できるし、賢治の扉が開くのかなと。そういう意味でも、トシは賢治にとって最大の理解者として邂逅したのかなと思いました」。
読書の魅力を発信する動画クリエイター。YouTubeチャンネルの登録者は17万人超え。「気軽に読書を楽しめる仲間を増やしたい」という思いで活動中。書評動画をはじめ、作家対談や本にまつわる解説も行う。YouTubeとリアル書店のコラボ「ベル書店」では本棚をプロデュース。
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