古代の秘宝と軍が密接な関係に…!?オカルトブームで振り返る「インディ・ジョーンズ」の戦い

コラム

古代の秘宝と軍が密接な関係に…!?オカルトブームで振り返る「インディ・ジョーンズ」の戦い

レイダース 失われたアーク《聖櫃》』(81)の公開から40年が過ぎ、いよいよ最終作となるシリーズ第5作『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(6月30日)の公開が迫ってきた。

主人公のインディ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)は、普段は大学で教鞭を執る考古学の教授だが、太古へのロマンを愛し、未知の秘宝を探し求める好奇心あふれる冒険家だ。そのインディの敵となるのは、アドルフ・ヒトラーが率いるナチス・ドイツや東西冷戦時に西側諸国と対立していたソ連の軍隊。なぜ、インディは軍隊を相手に古代文明の秘宝を奪い合うのか?そこには、1970年代に世界を沸かしたオカルトブームと作品の背景となる時代性が大きく関係している。

歴史を変える秘宝「運命のダイヤル」の争奪戦に挑むインディ(『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』)
歴史を変える秘宝「運命のダイヤル」の争奪戦に挑むインディ(『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』)[c]2022 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.

社会情勢への不安を背景に盛り上がりを見せたオカルトブーム

心霊、UFO(未確認飛行物体)、UMA(未確認生物)、オーパーツ、超能力など。現代科学では解き明かすことができない、神秘に満ちた超自然的な事象を“オカルト”と呼び、1970年代には「1999年七の月に人類は滅亡する」という「ノストラダムスの大予言」をはじめとしたオカルトブームが巻き起こった。ブーム発生の理由は諸説あるが、70年代は東西冷戦を発端とする核開発競争による社会情勢の悪化、公害やオイルショックといった社会問題からくる将来への不安を背景に、超自然的なものへと興味が移り、「“怖い”をおもしろがる」という風潮が広がり始め、世界各地にある超古代文明の残した謎の遺物などにも関心が広まっていく時代だった。シリーズ第1作『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』は70年代後半から製作がスタートしており、世界的に広がったこのオカルトブームの影響を大きく受けていることは間違いないだろう。

【写真を見る】聖櫃(アーク)に聖杯、クリスタル・スカルといった古代文明の秘宝を守って戦い続けてきたインディ・ジョーンズ(『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』)
【写真を見る】聖櫃(アーク)に聖杯、クリスタル・スカルといった古代文明の秘宝を守って戦い続けてきたインディ・ジョーンズ(『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』)[c]Everett Collection/AFLO

ナチス・ドイツやソ連がオカルト的な遺物を求めていたという逸話がストーリーの軸に

一方で、そんなオカルト関連の秘宝をナチス・ドイツやソ連の軍隊がなぜそんなに欲しがるのか…?と思う方もいるだろう。実は、第二次世界大戦期から冷戦にかけて、オカルトと軍隊は密接に関わる要素を持っていたのだ。

有名なものを挙げると、ナチス・ドイツの母体の一つとなったのは、国粋主義者のトゥーレ協会という団体であり、その前身は神秘的なものを信仰する秘密結社であった。そうした流れから、ヒトラー自身も軍事顧問のなかに占星術師を入れていた事実や、「勝利や繁栄につながる」とされるキリストの聖遺物への執着があったとも言われている。そうした背景があることから、ナチス・ドイツとオカルトを関連付けて、マンガや小説などフィクションのネタに何度も取り入れられてきた。


聖櫃をねらって、インディの前に何度も立ちはだかるゲシュタポのアーノルド・エルンスト・トート(『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』)
聖櫃をねらって、インディの前に何度も立ちはだかるゲシュタポのアーノルド・エルンスト・トート(『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』)[c]Everett Collection/AFLO

ソ連に関しては、「ソ連は超能力を軍事利用したサイキック兵器を開発しているのではないか?」とCIAが疑いをかけていたことがあった。ソ連によるサイキック兵器の信憑性や有用性に関して、CIAが調査していたことを記した文書などが発表された経緯もあり、ナチス・ドイツとは異なる方向でオカルトと兵器開発のつながりが噂されていたのだ。これには、スプーン曲げで有名な超能力者ユリ・ゲラーの登場の影響も大きかったようだ。

こうした時勢的な背景を受けて「インディ・ジョーンズ」シリーズでは、「軍によるオカルト的な遺物の兵器転用」が重要な要素となっていた。特殊な力を持った秘宝に触れた古代の人々は、それが悪用されないように封印する。しかし、時が流れて軍事や政治目的で秘宝を利用しようとする者が出現し、考古学者だからこそ先人たちの思いに理解があり、悪用されないように行動するインディとの攻防が勃発。この対立構図がストーリーの基本となっているのだ。では、そうしたバックグラウンドを踏まえ、改めてシリーズを振り返っていこう。

アメリカに潜入していたソ連軍の大佐、イリーナ・スパルコをケイト・ブランシェットが演じる(『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』)
アメリカに潜入していたソ連軍の大佐、イリーナ・スパルコをケイト・ブランシェットが演じる(『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』)[c]Everett Collection/AFLO

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