古代の秘宝と軍が密接な関係に…!?オカルトブームで振り返る「インディ・ジョーンズ」の戦い
超常的な力を秘めた水晶の髑髏を巡る攻防『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』
第4作は『最後の聖戦』から約20年ぶりに製作された『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』(08)。1957年が舞台で、第二次世界大戦は終結し、ナチス・ドイツも崩壊。しかし、世界はソ連と共産主義陣営が集まる東ヨーロッパとアメリカを中心とした西ヨーロッパ諸国によって分断された東西冷戦の状況にあり、政治から軍事、外交、経済、宇宙開発などの面で対立していた。特に、双方共に核開発を推し進める様子、アメリカ国内での反共産主義運動が盛んになる状況が色濃く描かれているところが印象的だ。
インディはアメリカに潜入していたソ連兵に捕まり、1947年にニューメキシコ州のロズウェルで起こったUFO墜落事件で、軍が入手した強い磁気を発する箱を機密保持倉庫から捜すように命じられる。その中にあったのは、磁力を発する小さなミイラだった。この事件をきっかけに、FBIからソ連との関係を疑われたインディはアメリカを離れようとするが、その途中でマット(シャイア・ラブーフ)と名乗る青年と出会う。マットが母親から託された手紙によってインディはペルーに向かい、絶大な力を持つという水晶の髑髏=クリスタル・スカルを探す冒険に旅立つことになる。
クリスタル・スカルはペルーで発見されたもので、その精緻な仕上がりは当時の技術では作りだすことができないレベルのものであり、該当する年代に合わない場違いな工芸品=オーパーツではないかと言われていた。特殊な屈折率を持つ髑髏型の水晶の存在は、想像力を喚起させる要素に富み、多くのフィクションにおいて特殊な力を発揮するキーアイテムとして登場している。『クリスタル・スカルの王国』では、これを宇宙人やUFOと結びつけることで、よりオカルティックな方向性を模索していたと言えるだろう。
米ソの宇宙開発競争にナチスの陰謀が絡むシリーズ集大成『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』
そして、シリーズ最新作にして最終作と言われる『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』は1969年が物語の舞台に。前作に続いて東西冷戦期を背景にしており、アメリカとソ連による苛烈な宇宙開発競争を題材に、インディがかつてナチス・ドイツで科学者をしていたユルゲン・フォーラーを相手に歴史を変えるとされる秘宝「運命のダイヤル」の争奪戦を繰り広げる。
マッツ・ミケルセン演じるフォーラーは、元ナチス党員であり、その後NASAに務めて米ソの宇宙開発競争の中心人物であったヴェルナー・フォン・ブラウンがモデルと言われている。米ソの宇宙開発競争にナチスの陰謀が絡むという展開は、シリーズの集大成としてはまさに申し分ないものだと言えるだろう。オカルトと軍隊は今作でも、「インディ・ジョーンズ」シリーズのバックグラウンドとして大きく機能しそうだ。
文/石井誠