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選曲意図を知ると倍楽しい!「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」最高のフィナーレを彩る音楽を解説

コラム

選曲意図を知ると倍楽しい!「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」最高のフィナーレを彩る音楽を解説

年代の縛りから解き放たれた楽曲セレクト

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』では、ピーターと父親代わりのヨンドゥに別れが訪れた
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』では、ピーターと父親代わりのヨンドゥに別れが訪れた『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』ディズニープラスで配信中 [c] Marvel Studios 2023

Zuneは前作のラストでヨンドゥの形見としてピーターが手にした携帯型音楽プレーヤー。本作で持ち主がロケットに変わっているところがポイント。Zuneは日本では販売されていないので馴染みが薄いが、実際にマイクロソフトがアップルiPodに対抗して2006年に発売、人気不振のため2011年に販売中止。すでにサービスを終了しているデバイスをわざわざ“主役”にしているあたりがガン監督のニクい演出でもある。フラッシュメモリ搭載型のため収録曲数はカセットテープよりも拡大、時代を超えた無数の楽曲が収録候補となった。

「音楽プレーヤーが新しくなったから音楽も新しくなるよなと思いつつ、前2作のように70年代音楽のままでもいいし、80年代にしてもいいし、90年代の宇宙っぽいブリットポップでもいいなと悩み、最終的に、お互い邪魔し合わないことを祈りながら、いろんな音楽を混ぜることにしました。今回はヨンドゥが選んだ曲なんだと想定しています。彼が持っていた音楽プレーヤーなのだから、気に入らない曲を消していってヨンドゥの好みの曲だけが残り、それがピーター・クイルに渡ったというわけです」(公式劇場パンフレットのジェームズ・ガンのコメントより抜粋)

ノーウェアでロケットを急襲するアダム・ウォーロック(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』)
ノーウェアでロケットを急襲するアダム・ウォーロック(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』)[c] Marvel Studios 2023

全身金色の謎の男アダム・ウォーロック(ウィル・ポーター)がノーウェアの襲撃をかける時のHeart「Crazy on You」(75)、瀕死のロケットを救うためピーターたちがノーウェアを出発する時のRainbow「Since You Been Gone」(79)、ガーディアンズメンバーが勢揃いのクライマックスのワンカット圧巻のバトルシーンを盛り上げるBeastie Boys「No Sleep Till Brooklyn」(86)、本作でガーディアンズとしての物語を終えるピーターらを包み込むFlorence + The Machine「Dog Days Are Over」(08)…各シーンで使用された曲を順に紹介していくと映画の性質上そのままネタバレになってしまうのでこれ以上は割愛するが、劇場で一瞬ざわめきが起こったのはEHAMICの「小犬のカーニバル~小犬のワルツより~」(18)。ショパンの名曲「子犬のワルツ(ワルツ第6番 変ニ長調 作品64-1)」を基に作られた途中で加速するボカロ曲でアニメ「クラシカロイド」ファンにはお馴染みのチューン。地球にそっくりの惑星カウンター・アースの住人が聞く音楽としての意表をつく起用は、お見事!

草稿と共にプレイリストも用意したというジェームズ・ガン。本作における音楽の重要性がわかる
草稿と共にプレイリストも用意したというジェームズ・ガン。本作における音楽の重要性がわかる[c] Marvel Studios 2023

「映画が終わりに向かうなかで曲の時代がより現代に近づいていくところが、まるでガーディアンズの面々がこれから別々のプレイリストを作っていつか誰かに渡すんだというお話みたいにもなっているところが好きなんです。ジェームズ(・ガン監督)は映画で使うプレイリストを草稿と合わせてキャストやスタッフにも送りました。音楽は非常に大事な役割を担うので、音楽を聞きながら草稿を読む形となっていました。ジェームズは各シーンにあるべき感情を効果的に加えるために音楽を見事に使っているんだと思います」(公式劇場パンフレットの製作総指揮セーラ・スミスのコメントより抜粋)


“ガーディアンズ”の雄姿と物語を彩る楽曲を劇場で楽しもう!(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』)
“ガーディアンズ”の雄姿と物語を彩る楽曲を劇場で楽しもう!(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』)[c] Marvel Studios 2023

エンドロールの音楽はふたつ用意されていた。新生ガーディアンズの面々がブリトニー・スピアーズ、コーン、エイドリアン・ブリュー、キング・クリムゾンら好きなミュージシャン名を挙げていくなか、やっぱりこの曲でしょうとニューリーダー、ロケットがZuneのプレイボタンを押したのはRedboneの「Come and Get Your Love」(73)。劇場で拍手が巻き起こるほど歓迎されたピーターのテーマ曲ともいえる「カマゲッチョラ~ヴ」のあとに聴こえてきたのは、ブルース・スプリングスティーンの「Badlands」だった。アルバム『明日なき暴走』(75)の大成功でロックスターになったがマネージャーとの契約訴訟に巻き込まれ2年も音楽活動停止を余儀なくされたブルース。“自由”を得た4日後にレコーディングを開始したアルバム『闇に吠える街』(78)の冒頭曲だ。「Come and Get Your Love」の「君自身が決めることだ/欲しいなら奪え/さあ愛をつかめ」。「Badlands」の「この荒れ地で俺の内なる可能性を見つけたい/俺はお前がくれた愛を信じている」。エンドロールが前リーダーのピーターからのメッセージに対する、現リーダーのロケットの呼応であるならば、シリーズのラストにこれ以上の台詞はもはや必要ないだろう。「カーペンターズの曲にハズれなし!」の台詞はかなりのインパクトを残したが…ニヤリ。

文/安川達也

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■『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3 オーサム・ミックス Vol. 3(オリジナル・サウンドトラック)』
国内盤CD発売中&プレイリスト公開中
公式サイト:https://www.universal-music.co.jp/guardians-of-the-galaxy/products/uich-1022/
レーベル:Hollywood Records
発売:ユニバーサル ミュージック合同会社 パートナー・レーベルズ

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