「不思議な爽快感」「自分にもありそうで笑えた」「ホラー並に怖い」“わかりみ”たっぷりの絶望エンタテインメント『波紋』を観てみた!
実力派が体現する個性豊かなキャラクターたち
本作で主人公、依子を演じたのは、『淵に立つ』(16)、『よこがお』(19)などで知られる実力派の筒井真理子。「筒井真理子の演技はコミカル」(60代・男性)、「ホラー並に怖かった」(20代・女性)と振り幅の広い演技力を評価する声が集まった。また、依子を取り囲む人物も個性豊かなキャラクターが多く、デリカシーのない夫を体現した光石の演技には「光石さんの情けない演技が見事でした!」(20代・男性)とのコメントが。また、親に苦悩する息子役の磯村には「私も息子1人の3人家族なので、息子が母に対して『離れたい』と思うようなことにならないといいな…と考えてしまいました」(40代・女性)というせつない意見も見られた。
さらに依子のよき相談相手となる、あけすけなスーパーの清掃員役の木野花が見せる明るい演技には、「あのようにはっきり物事を言ってくれる人がいるとポジティブになれそうだと思いました」(20代・女性)とダークな作品で異彩を放っているだけに、観客の印象に残ったよう。
「平岩紙さんと江口のりこさんが、怖くてステキだった」(40 代・女性)とコメントが届いた「緑命会」の信者組や、「こういうおじさん、実際にいそう」(50代・男性)とリアリティたっぷりに“半額にしろ”老人を演じた柄本明、「母親の立場からすると、とても嫌な娘だと思った」(40代・女性)、「珠美の『別れてほしい』と言われて笑った時、怖かった」(40代・女性)という感想が寄せられた拓哉の恋人、珠美役の津田絵理奈らの怪演も見どころだ。
あらゆる視点から人間を見つめる荻上作品の魅力
『かもめ食堂』、『彼らが本気で編むときは、』、『めがね』(07)などゆったり&ホッコリした空気感が魅力ながらも、そのゆる〜い雰囲気の奥では鋭い視点で人間の本質を描き続けてきた荻上直子監督。
本作はトーンこそ、これまでのイメージからガラッとかけ離れてダークになっているが、ついつい飛び出してしまう依子の腹黒い一面など人間の本質を偽りなく、笑いを交えながら描いている。
「日常を感じるのに、本当にふとした時に深淵を覗かせて、それが自分にもありそうで笑えた」(40代・女性)
「ブラックユーモア。自分が怖いと思う部分で周りの女性が笑っていたところが興味深かった」(30代・男性)
「『バーバー吉野』のころから注目してきた荻上監督の新境地だと思いました。不穏な感じだがなんか楽しい」(30代・男性)
「自分が知っている荻上監督の作風とは異なるもので、とても衝撃的だった」(20代・女性)
といった様々な感想が寄せられており、「おもしろい」「笑える」「怖い」といった言葉だけでは言い表せない感情にさせられる、複雑な魅力を持つ本作。絶望に苛まれながらも、信じ、耐え続ける先にある依子の行く末とは?劇場で、彼女が抱くカタルシスを共に味わってみてはいかがだろうか。
構成・文/サンクレイオ翼