知られざる生々しい実像に、その輝きの根源を知る…ファン必見の映画『オードリー・ヘプバーン』を解説
日本初上陸の最新海外ドラマと厳選作品が観られるAmazon Prime Videoチャンネル「スターチャンネルEX」では、“永遠のヒロイン”と称されるオードリー・ヘプバーンの素顔に迫る、長編ドキュメンタリー映画『オードリー・ヘプバーン』が配信中だ。本作から見えるヘプバーンの魅力を、「オードリー・ヘプバーンという生き方」「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」など数々のヘプバーンに関する書籍を執筆、また監修として携わっている、映画ライターの清藤秀人が解説。彼女がいまなお世代を超えて愛され続ける理由を考察する。さらに、ヘプバーンの吹替えを長年担当していた声優の池田昌子から寄せられたコメントも紹介。
定説とは異なるオードリーの素顔が明かされる
今年の5月で生誕94年、亡くなってから30年目を迎えたオードリー・ヘプバーン。その間、主演映画は様々な形でリピートされ、その都度、新しいファンを獲得し続けている。こんなスターは滅多にいない。一つには、数少ない主演映画がどれも魅力的で完成度が高いこと、そして、オードリーがスクリーンに刻みつけた独特のシンプルで無駄のないファッションが、時代を超えたトレンドになっていること、などが根強い人気を支えているポイントだ。多くの女性たちが、くるぶし丈のサブリナ・パンツにローファーを組み合わせたことがあるのではないだろうか。
でも、それだけじゃないはずだ。そこに着目したのが昨年日本でも劇場公開されてヒットした長編ドキュメンタリー『オードリー・ヘプバーン』だ。いまはイタリアのフィレンツェ近郊に住まうオードリーの長男、ショーン・ヘプバーン・ファーラーの許諾を取り付けた上で製作された本ドキュメンタリーには、生前にはタブーとされていた(メディア側の過剰な自己規制だったのかもしれない)、人生に於ける幾つかの真実が開示されている。オードリーが6歳の時に家を出た父親、ジョセフとの別れと再会、その父親がファシズムに傾倒していたという衝撃の事実、ナチス占領下のオランダ、アーネムで10代半ばのオードリーがレジスタンス運動に協力した日々、度重なる流産、演技への思い、等々。注目すべきは、女優デビュー後のオードリーとジョセフがダブリンで再会し、失った時間を埋めるチャンスを得ていたこと(当初は6歳で別れて以来音信不通だと思われていたが、その後2人はオードリーが住むスイスとダブリンを行き来したという説もある)。アーネムでのレジスタンス活動についても、かつては、少女のオードリーがバレエのトーシューズの底に密書を忍ばせ、森の花を摘むふりをしながらナチス兵士の目をすり抜けて同胞に届けた、というのが定説とされていた。しかし、ドキュメンタリーではハイカットブーツの底に密書を隠して町中を自転車で走り回っていたという全く異なる事実が提供される。至るところで、かつては美しくデフォルメされていた人生の一コマ一コマが、時の洗礼を受けて生々しい素顔を露わにしているのだ。