時空を超えることの代償…「僕だけがいない街」作者・三部けいが語る『ザ・フラッシュ』「奥深くて、いい意味でのややこしさも含めてすばらしい」
地上最速のヒーロー、フラッシュの活躍を描くタイムループ・アドベンチャー大作『ザ・フラッシュ』が公開中。主人公フラッシュがそのスピードで時空を超え、異なる世界で物語が展開するだけに、2人のフラッシュと2人のバットマン、スーパーマンのいとこであるスーパーガールら人気DCヒーローたちが登場することも話題を呼んでいる。
本作でフラッシュが戦うのは、かつて『マン・オブ・スティール』(13)でスーパーマン(ヘンリー・カヴィル)が倒したはずのゾッド将軍(マイケル・シャノン)。幼いころに亡くした母親を救おうと過去を変え、とんでもないバタフライ効果を味わうことになるフラッシュは、この強敵とどう戦うことになるのか?自身も「僕だけがいない街」というタイムリープを題材にした作品を手掛けた漫画家の三部けいが、「いつもは仕事モードがどこか頭の中にあって構成、脚本、演出のほうに目がいってしまうのですが、『ザ・フラッシュ』は純粋に楽しめました!」と、本作の魅力を語ってくれた。
「本当に愉快で楽しい映画でした。笑えるし泣ける!」
ヒーローチーム“ジャスティス・リーグ”の一員として、バットマン(ベン・アフレック)たちと活躍してきたフラッシュことバリー・アレン(エズラ・ミラー)。彼は子どものころに起きた事件で、心に深い傷を負っていた。それは母ノラ(マリベル・ベルドゥー)が何者かに殺害され、父ヘンリー(ロン・リヴィングストン)が無実の罪で投獄されたこと。母にもう一度会いたい、父の無罪を証明したい。その強い想いから超高速の能力で時空を超えたバリーは過去を変えるが、たどり着いた世界で、18歳の“もう一人の自分”と遭遇する。自分の行動が時空を歪め、人類滅亡の危機を招いてしまったことを理解したバリーは、18歳の自分とその世界のバットマン(マイケル・キートン)、そしてスーパーガール(サッシャ・カジェ)と共に世界の危機に立ち向かう。
「本当に愉快で楽しい映画でした。笑えるし泣ける!でも、もしかしたら最後のところは自分がまだ完全に理解できてないかもしれない…と思ったほど、奥深くて。例えるならば『インターステラー』を観終わった時のような、いい意味でのややこしさというか。そういう部分も含めてすばらしい映画でした」と、鑑賞直後に語った三部。実は、サブスクも利用して年に200~300本観るという映画の達人だ。「毎日のように映画やドラマを観ることで頭を活性化させているんです。(創作によって)どんどんすり減っていく状況なので、観ることでそれを補っている。もともと僕は荒木飛呂彦先生のアシスタントをしていたんですが、荒木先生がとてもたくさん映画を観る方だったんです。仕事が終わったら寝ないで公開中の映画を観に行くし、(当時は)レーザーディスクも大量にありました。とはいえ、自分はそのころ時間がなくてあまり映画を観ていなかったんですが」と、漫画家というアウトプットする作業が多い職業だからこその、インプットの大事さを語ってくれた。
「まず、この映画の構成がすばらしいと思ったのは、キャラクターについて、『こういう人です』という見せ方。例えば冒頭、倒壊するビルから何人もの赤ん坊が落ちてくるシーン。赤ん坊を助けるための技の使い方で、実はどういうことができるヒーローなのかをちゃんと見せてくれる。人を抱えたままフラッシュが高速移動すると人はやけどをするし、服は燃える。そういう力のマイナス部分の出し方もうまい。僕はフラッシュというキャラクターについて、あまり詳しくなかったんですが、一気に彼の能力というものがわかりました」。
漫画家。荒木飛呂彦氏のアシスタントを経て、漫画家デビュー。「カミヤドリ」「夢で見たあの子のために」など作品を発表。2012年より「ヤングエース」にて連載を開始した「僕だけがいない街」(全9巻)が大ヒットを記録し、テレビアニメ化や実写映画化、配信ドラマ化もされた。最新サスペンス作「13回目の足跡」が「コミックNewtype」で連載中。
・コミックNewtype「13回目の足跡」:https://comic.webnewtype.com/contents/thirteen/