日プロ大賞主演女優賞に輝いたのん「幸せに満ちています」と笑顔!伊藤健太郎は阪本順治監督に感謝
第32回日本映画プロフェッショナル大賞の授賞式が6月17日にテアトル新宿で開催された。『さかなのこ』で主演女優賞を受賞したのんは「幸せに満ちています」と喜びをかみ締めつつ、役者としての覚悟を語った。
1992年に創立された日本映画プロフェッショナル大賞は、プロデューサー、映画監督、脚本家、新聞記者、映画評論家、映画ジャーナリスト、ミニシアター支配人、映画宣伝担当者ら、映画業界の第一線で活躍する映画のプロ、29人の選考委員の投票と、実行委員会の独自の判断で決定する賞。
沖田修一監督による『さかなのこ』は、さかなクン初の自叙伝「さかなクンの一魚一会 〜まいにち夢中な人生!〜」を原作に、子どもの頃からお魚が大好きだったミー坊が、“好き”を貫き続け、たくさんの出会いに導かれながら、やがて“さかなクン”になるまでを描く物語。のんは、好きなことに一直線で、周囲の人々を幸せにする不思議な魅力にあふれた主人公に命を注ぎ込んだ。
この日は、ミー坊の幼少期を演じた⻄村瑞季が花束プレゼンターとして登場。「ミー坊という難役をこんなにもステキに演じてくださったのんさんに、心からお礼を申し上げます」と沖田監督からの手紙を元気いっぱいに代読した。のんは「『さかなのこ』はすごく大切な作品になったので、こうして賞としてお褒めいただけることがとてもうれしくて、幸せに満ちています」としみじみ。「瑞季ちゃんとも再び会えたのでそれがうれしくて」と⻄村と笑顔を見合わせながら、「瑞季ちゃんとは、さかなクンの飛び跳ね方を一緒に走り回って練習をしていた思い出があります。再会する場を作っていただけたこともすごくうれしいです。これからも役者として、一生懸命に演技に取り組んでいきたいと思います」と清々しく宣言していた。
また『さすらいのボンボンキャンディ』の影山祐子も、主演女優賞を獲得した。同作は、延江浩の短編小説をサトウトシキ監督が映画化したもの。影山は、生きる実感を持てないままに、人間らしいつながりと愛を求めてさすらうヒロインの仁絵を演じた。
共演者の原田喧太から花束を受け取った影山は、「この場に立ててとても光栄であると共に、これからさらに頑張らなければいけないなと背筋の伸びる思いです」と真摯にコメント。「仁絵という役は、自分にできるような役ではないというところからスタートしました。たくさんの人の手を借りて、時間をかけて生まれた役です。こういう賞をいただけて、皆さんと一緒にいただけたような気持ち。それが幸せでとてもうれしいです」と周囲への感謝を述べた。
監督賞を受賞したのは、『冬薔薇(ふゆそうび)』の阪本順治監督。花束ゲストとして会場に駆けつけたのは、同作で2年ぶりの映画出演にして主演を務めた伊藤健太郎だ。ある港町を舞台に、半端な不良仲間と連み、友人や女から金をせびってはダラダラと生きる青年、渡口淳(伊藤)を中心にした人間ドラマで、伊藤は「僕自身にとっても大事な作品。阪本監督と出会えて、こういった形で参加させていただけることを光栄に思っています。本日はおめでとうございます!」と大きな笑顔で阪本監督を祝福。阪本監督が「伊藤健太郎くんありきの企画を受けた。(今回の受賞は)健太郎からのプレゼントでもあるのかなと思っています」と語ると、伊藤も感無量の面持ちを見せていた。
また阪本監督は、伊藤の俳優としての魅力について「小細工をしたり、ケレンを含めたりするのではなく、素直な、普通の芝居って難しいものなんですが、そういったことをごく自然にやれるところ」とキッパリ。脚本作りの過程では、伊藤とたくさんの対話を重ねたそうで、伊藤は「どん底から救っていただいた部分もあり、頭が上がらない部分もある。かと思えばお父さんのように会話をさせていただけることもあったり、僕のなかでは大事な、大事な方」と阪本監督はは特別な存在だと話す。「またご一緒したい。僕自身も頑張りたいなと思います」と監督とのさらなるタッグを願っていた。
作品賞と新人監督賞に輝いたのは、広島に暮らす小学5年生のあみ子が、家族や同級生など周囲の人たちを否応なしに変えていく姿を描く『こちらあみ子』。あみ子役の大沢一菜と、のり君の大関悠士から花束を手渡された森井勇佑監督はうれしそうな笑顔を見せ、「大沢さんは、オーディションに来た時から目つきがよかった。大関くんは、おもしろいヤツだった」と2人の存在感を絶賛。2冠を獲得したことに「驚いています。大変光栄なこと」とお礼を述べ、「僕はあみ子という存在をすごく愛していまして、それがお客さんに届けばいいなと思いながら撮っていました。スクリーンを通して、お客さんに好きになってもらえればいいなと思っていたので、それが作品賞をいただくことに繋がったのかなと思うと、この映画を作ってよかったなと思います。ありがとうございました」と喜びを語った。
もう一人の新人監督賞受賞者である『マイスモールランド』の川和田恵真監督のもとには、主人公を演じた嵐莉菜がお祝いに訪れ、花束を贈呈。同作は、在留資格を失い、普通の⾼校⽣としての⽇常が奪われてしまった17歳の在⽇クルド⼈の主⼈公サーリャ(嵐)が、理不尽な社会と向き合いながら、⾃分の居場所を探し成⻑していく人間ドラマ。川和田監督は「5年くらいかけて作った映画。どうにか届けたいという想いで完成することができた作品です」と切り出し、「この映画で描いていることは、私たちのすぐそばにある難民申請者の状況を描いています。映画になにができるんだろうと考え、少しでも映画を通して知るきっかけになってもらえればと思っていました」と「届けたい」という想いが原動力になったことを明かしていた。