『リトル・マーメイド』吹替版音楽はこうやって作られた!レコーディング秘話や楽曲の魅力を徹底解剖|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『リトル・マーメイド』吹替版音楽はこうやって作られた!レコーディング秘話や楽曲の魅力を徹底解剖

インタビュー

『リトル・マーメイド』吹替版音楽はこうやって作られた!レコーディング秘話や楽曲の魅力を徹底解剖

『美女と野獣』(17)、『アラジン』(19)のディズニーが新たに名作アニメーションを実写化し、日本でも大ヒット公開中の映画『リトル・マーメイド』。改めてその音楽に魅了され、オリジナルの英語版、日本語吹替版を“聴き比べる”人も続出している。その吹替版に貢献したのが、レコーディング・ディレクターの亀川浩未だ。音楽演出として吹替版のボイステストから関わり、日本語の訳詞を音楽や映像(俳優やキャラクターの口の動き)にも合わせるため試行錯誤の調節を繰り返す。そしてレコーディングの際には、吹替え担当のキャストに歌唱法やポイントを誘導。つまり、今回の日本語吹替版の曲が完成するまで、すべてのプロセスに携わったわけだ。

そんな彼女だからこそ実感する、ディズニーの名曲を手掛けてきたアラン・メンケンとディズニー音楽の新鋭リン=マニュエル・ミランダが贈る『リトル・マーメイド』の音楽、そして日本語吹替版の魅力とは?また、レコーディングではどんな苦心があったのか。1989年公開のアニメーション版から人気の曲はもちろん、今回の実写版用に作られた新曲も含めた7つのナンバーについて語ってもらった。

「パート・オブ・ユア・ワールド」/ PART OF YOUR WORLD

この曲は、例えるなら100年以上も愛されているクラシックの名曲のようです。メロディは会話のようにすんなり耳に入ってきますし、サビの部分がキャッチーで、どんな世代でも歌いたくなる名曲です。本能から“心地よさ”を感じられる曲調なのかもしれません。一方で、テンポはカウントどおりではなく、歌詞の感情に合わせて揺れ動きます。クラシック音楽が、楽器と楽器の“間(ま)”で表現する感覚と似ています。アラン・メンケン氏が作詞家やプロデューサーの方々と会話をしながら作曲をされている映像を見たことがありますが、おそらくその時のイマジネーションによって、メロディやテンポに感情が込められたのではないでしょうか。

本作の主人公、人魚姫であるアリエル役(ハリー・ベイリー)の吹替えを担当した豊原江理佳さんは、セリフのパートと歌のパートで声質があまり変わりません。そして、歌で怒りや激しさ、悲しみを表現する際も、どこか気品が漂っています。アリエルは海の王宮で育った王女ですから、根底には周囲への行動にどこかゆとりがあるように見え、その部分も豊原さんと重なった印象を感じました。意志は強いけれど、周囲の誰に対しても気遣いができる優しさに、もともとの声質、歌唱力、そのすべてがアリエル役にぴったりでした。

通常、スタジオでは吹替版のディレクターと、録音するキャストのブースはガラスで区切られていますが、この「パート・オブ・ユア・ワールド」のレコーディングでは、あえてキャストの方々と同じブースでコンダクト(指揮)をしました。この曲の場合、セリフから曲に移行する難しさがあり、感情をどう乗せてもらうのか。「うまく歌う」だけではない表現を、同じ空間にいて伝えたかったからです。


父であるトリトン王に禁止されながらも人間の世界への憧れが止まらないアリエル
父であるトリトン王に禁止されながらも人間の世界への憧れが止まらないアリエル[c] 2023 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

「アンダー・ザ・シー」/ UNDER THE SEA

作曲家、編曲家は常に新しい表現を追い求めていると思いますが、アラン・メンケン氏はそれをこともなげにやってしまうなとこの曲で実感させられました。『リトル・マーメイド』で彼は、海や島の音楽であるカリプソの楽器とリズムを取り入れました。海は世界中につながっていますよね?その感覚で世界中の人たちの心に浸透したのがまさに「アンダー・ザ・シー」だと思います。これを聴くと、普段コミュニケーションが苦手な人でも、勝手に体が動いてしまう…。魔法のような曲です。

今回の実写版では、オリジナルのアニメーション版と比べて、パーカッションやストリングスなどがより絡み合った編曲に変わっていて、もともとの軽快なノリが、さらに現代的にアレンジされています。

本国から送られてきた楽譜を見ると、音符が「×」になっている箇所がありますが、厳密な音階ではなく「メロディに乗せてセリフのように歌う」というのを意図しています。歌う側の気持ちに任せるわけです。そこをアリエルのお目付け役で、海の王トリトンに仕える執事長セバスチャン(英語版声優:ダヴィード・ディグス)を演じた木村昴さんは、巧みに表現されていました。まさに「メロディのなかで遊ぶ」すばらしいパフォーマーです。かつての吹替版では、オリジナルの英語どおりのメロディを再現するのが常識でした。それが最近は、少しだけ日本語の特性をご理解いただいているように感じます。「楽しく聴こえる」ように木村さんご自身がおもしろく表現された箇所もありましたが、本国からもOKをいただけました。英語版と聴き比べる楽しみが増え、遊び心あふれる曲になっていると思います。


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『リトル・マーメイド オリジナル・サウンドトラック』
■デジタル版
・Apple Music:https://music.apple.com/jp/album/the-little-mermaid-japanese-original-soundtrack/1690270302
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・Spotify:https://open.spotify.com/intl-ja/album/3AWE8IaYnKHHfwvtbibLt9?si=L4f2Iff6R3qs-O0a_NGlQQ&nd=1
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