本編にいないけど予告編に出演?「ビーストウォーズ」が復活する“声優無法地帯2023”アフレコ現場に潜入!
車から姿を変えるロボット生命体“トランスフォーマー”と、動物から変形する“ビースト”が共闘する『トランスフォーマー/ビースト覚醒』(8月4日公開)。本作で登場する“ビースト”のオリジナルである「ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー」は、日本で一大ブームを巻き起こした3Dテレビアニメだったが、その人気に火をつけたのは、後に“声優無法地帯”と呼ばれるまでになった豪華声優陣たちのアドリブ合戦である。時には作品の内容やオリジナルの言語とまったく関係のないことを喋りまくる、その自由すぎるセリフの数々が子どもたちのハートをつかみ、大人になった彼らの記憶にいまもしっかり刻まれている。
そんな伝説の“声優無法地帯”が、『トランスフォーマー/ビースト覚醒』で奇跡の復活!地上最強の恐竜ティラノザウルスから変形する“メガトロン”の声を担当した千葉繁、ネズミから姿を変える“ラットル”の山口勝平、チーターやスズメバチをスキャンして生まれた“チータス”と“ワスピーター”に息を吹き込んだ高木渉と加藤賢崇が、独自のギャグやアドリブなど好き勝手にぶち込んで大暴走する予告編が公開された。
とはいえ、映画本編に関わったのは“チータス”(本編での役柄は“チーター”)を演じた高木渉だけ。千葉と山口、加藤は参加していないという特異な状態で、“声優無法地帯”の4人は本領を発揮できたのか。そこには“ビースト”のテレビシリーズを演出し、本編の吹替版やこの予告編も手掛けた音響監督・岩浪美和のどんな狙いと想いがあったのか。MOVIE WALKER PRESSでは、そんな無謀とも思えるアフレコの収録現場に潜入!バカバカしくも楽しげな“声”の競演を、声優陣と岩浪による熱いトークと共にレポートする。
これ台本だったの?ファンの心を鷲掴みする千葉トロンの復活!
7月中旬の暑いある日。収録開始時刻の12時半になると、メイクルームで旧交を温めていたレジェンドの4人がその和やかなムードのままスタジオ入り。均等に立てられたマイクの前に立つと、高木は「賢崇さんとは本当に『ビーストウォーズ』以来。やっと会えました!」と再会の喜びを口にする。
すると加藤は「こうやって生きて会えただけでも幸せです。ちなみに、今日僕が着ているのは7年前の『ビーストウォーズ』20周年記念の公式Tシャツです」と笑顔を見せ、山口が「物持ちいいですね~」の言葉に「『トランスフォーマー』愛がありますからね」と胸を張る。ところが、高木が「でも賢崇さん、今日台本を持ってこなかったんですよね」とツッコミを入れると、千葉が「なにしにきたの?」とダメ出し。加藤は一気に小さくなって、みんなの爆笑を誘った。そんな手荒くも、長年のブランクを感じさせないフレンドリーな空気のなかで、いよいよアフレコの収録が始まった。
「二日酔いで目がとろ~ん。元よい子のみんな元気かなあ?」。アフレコはメガトロンに扮したそんな千葉の第一声からスタートしたので、“さすが千葉さん!最初っからダジャレをぶっ込んできた”と興奮したが、これは意外にも台本どおり。それこそ“声優無法地帯”は声優陣が好き勝手に言いたいことを喋り倒すと勝手に思っていたが、実際は岩浪による台本があって、そこにはファンの心をくすぐるギャグが最初から散りばめられているという事実には驚きだった。
例えば、同じくメガトロンの「トム(・クルーズ)には負けない!スタントなしでバリバリのアクションをやっちゃうよー!崖からバイクで飛び降りちゃうよー!」なんてセリフも、台本どおりのもの。だが、声優陣がそれぞれのキャラクターの口調で演じていくと、岩浪は「もう少し酒が抜けた体でお願いします」などと微調整を加えていくから、アドリブだと勘違いしてしまうぐらい生々しいものになるのだ。
「ビーストウォーズ アゲイン」で新規ナレーションを収録したのに…映画未出演のラットルが魂のアドリブ!
ここからはアフレコ収録の具体的な模様を紹介していこう。まずは、ワスピーターとメガトロンのかけ合いから。
加藤(ワスピーター)「今回、映画に出れるっていうんで、全身永久脱毛の予約をしましたぶ~ん」
千葉(メガトロン)「マジかよ~?」
加藤(ワスピーター)「だけど、脱毛サロンが無認可営業で摘発されちゃって、倒産してしまったぶ~ん」
千葉(メガトロン)「ヤバいな!」
ここで岩浪からストップが入る。息の合ったかけ合いが続いたが、ワスピーターの2つ目のセリフは、実は加藤のアドリブで、それに対して岩浪から「脱毛サロンが無認可営業で…っていうのは生々しすぎるからやめましょう」との指示。すると加藤は、「俺も引っかかったんですよ、マジな話」と、思いがけない告白をし始めた。「脱毛サロンを8回分予約したんだけど、3回終わったところで倒産しちゃったんですよね(苦笑)」。これにはみんな大爆笑!というか、笑うしかなかった。
次は、本編への出演がないことがわかり、落ち込んでいるメガトロンとワスピーターを憐れむラットルに衝撃が走るくだりだ。
高木(チーター)「君も出番ないじゃん!」
山口(ラットル)「え~、なんで?おいらが出ないビーストなんてビーストウォーズじゃないっしょ!“ビーストウォ”だよ」
ここのラットルのセリフは、台本では「おいらが出ないビーストなんてビーストじゃないっしょ!」となっていて、“ビーストウォ”は山口のアドリブだったが、本人もあんまりだと思ったのか、OKテイクではなくなっていった。
これぞ“声優無法地帯”!NG覚悟のムチャなネタでワスピーターの暴走が止まらない…
このように声優陣は、合いの手のように細かいギャグをボコボコ自由に入れ、テイクを重ねる度に新ネタを繰り出していたが、この日の加藤は、誰よりも暴走し、危険なアドリブを容赦なくぶち込んでいった。
本編への出演がないことがわかったワスピーターが愚痴る場面では、「僕ちん親戚のみんなにムビチケを送っちゃったぶ~ん」という台本のセリフを、「僕ちゃん、野球部の後輩にムビチケ送っちゃったぶ~ん」に変えて、岩浪から「ワスピーターって野球部だったっけ?」と疑問形のツッコミが入る。だが、これはなんとなくスルーされて加藤も涼しい顔をしている。
けれど、「俺たちに出番がないなんて、これは〇〇(※危険すぎて記事内での紹介は避けておく)の陰謀だ!」なんて言い出した時だけは、岩浪も収録を止めて「ダメだよ~!」と半分笑いながら厳重注意。加藤も「ボツになるのをわかったうえでやっちゃいました(笑)」と頭を搔きながら、「次はちゃんと台本どおりにやりま~す」と反省していた。
このようなムチャなチャレンジを、結果的にはボツになったとしても試せるのが“声優無法地帯”のいいところなのかもしれない。そこでは野放しにしているようで、声優陣をうまく掌の上で遊ばせている岩浪の器の大きさも感じられた。大盛りあがりのアフレコは、テストを入れながら2パターン収録して、30分もかからない超最速で終了した。
収録を終えた高木が加藤に「やっぱり賢崇さん、おもしろいわ~。いろんなものが出てくるもん!」と声をかけ、みんな満足そうに充実の笑顔を浮かべていたのが印象的だった。そして、収録後の高いテンションままインタビューに突入すると、それこそまさに制御不能の“無法地帯”に…。誰にも止められない激烈トークが始まってしまった!