本編にいないけど予告編に出演?「ビーストウォーズ」が復活する“声優無法地帯2023”アフレコ現場に潜入!
「『あ~、これこれ、こんな収録』って当時の雰囲気が一気に蘇ってきました」(高木)
――「ビーストウォーズ」ならではの理由で、“声優無法地帯”が始まったんですね(笑)
岩浪「そう。でも、“声優無法地帯”というのは観てくださった方がつけてくれた、結果的にそうなったネーミングで。決して無闇に暴走してもらっているわけではないし、ちゃんと狙いもあるんですよ」
高木「まじめな話をしちゃうと、岩浪さんは僕たちに『自由にやって』と言いながらも、『これはいい、あれはダメ』ってちゃんとジャッジをしてくれる。そんな岩浪さんのもとで3回、4回、5回と高いテンションをキープし続けながらセリフの応酬を繰り返しているから、それが無法地帯のように楽しそうに見えるんですよね」
岩浪「さっき『1話、2話は普通』とか言っていたけど、観ている人はそうは思わない。そこはやっぱり皆さんの話芸だし、『全部アドリブじゃね~か!』って言われることも多いけれど、意外と台本どおりだったりするんですよ(笑)。ただ、アドリブに聞こえる生きたセリフを皆さんが口にしてくれたから人気が出たのは確かですよ。オリジナルの英語版は世界観やストーリーが強調されすぎててキャラクターが弱かったし、スポンサーのタカラ(現:タカラトミー)さんもキャラクターをもっと強調してほしいという要望だったので、真剣にふざけたんです」
高木「そうそう、だから自分でリハーサルしてる時に、ここにこんなこと言えるなぁなんて、ネタを2つ、3つ考えてましたよね。あとは本番の流れで臨機応変に出たとこ勝負でいこう、なんて」
加藤「アドリブってその場で考えたことを言うものだけど、この現場ではそうじゃない。みんな台本に、アドリブ用のセリフをびっしり書いて準備万端でやってくる(笑)」
千葉「でも、どれを読んでいいのかわかんなくなる時もあったな(笑)」
高木「そしたら、今度は翻訳のアンゼたかしさんが僕らに合わせるようにセリフで遊ぶようになってきて」
岩浪「あれ、困ったんだよ。『ちょっと待って、アンゼさん。オリジナルの英語はなんて言ってるの?』って(笑)」
千葉「ストーリーがわかんなくなっちゃう(笑)」
高木「ただ、元々台本があるのにそれを変えるんだから、自分で出したアドリブがおもしろくなかった場合、元のアンゼさんの作ったセリフに戻すのはダメっていう暗黙のルールはありましたね。“1回アドリブを出したら、台本に戻すのはなし"っていうね」
岩浪「そう。翻訳家のアンゼさんのセリフを変えたんだからね!」
高木「『もっとおもしろいのが出るまでやって!』っていうね。だからアドリブを一つ出すにも勇気と緊張感が常にありましたよ」
岩浪「いや、僕だってね、1行のセリフを丸1日考えて書いたことがあるんですよ。それをサクッと変えられて、そっちのほうがおもしろかったりすると、チックショー!って思うんで、そういう緊張感はすごいあったよね」
加藤「演出家に事前に『台本のセリフをこう直しました』って了解を取らずに始めるし(笑)」
山口「声優同士も教えない。しかも、テストと本番で違うものを出てくる!」
岩浪「千葉さんなんて、音響監督もやってるのに、地上波じゃ絶対ダメに決まってるだろうってネタをぶっ込んでくるからビックリしますよ(笑)」
加藤「俺、『ビースト』以外のアニメの現場はほとんど知らないんですけど、ほかの現場はこうじゃないんでしょ?」
千葉「全然空気が違う」
加藤「普通の現場は、演出家になにも言わずにセリフ変えたりしないでしょ?」
千葉「岩浪さんがスタジオ入ってきて、『まあ、ど~せ皆さん聞かないんでしょうけど、このセリフは…』って説明しているのに、誰も台本を開かないし、誰も書き込まない(笑)。賢崇なんて、今日は台本を持ってこなかったし」
加藤「頭に入っていたつもりだったけど、そんなことはなかったという(笑)」
千葉「だけど、今日はただただ楽しかったですね。最初、画(予告編で使う動画)が送られてきたから、キャラクターが喋っている画に一応合わせるのかなって思ってたんだけど、まったく関係なくて(笑)。あっ、これは尺調整のための画だったんだなってあとから気づいた」
山口「また、岩浪さんが独自の映像を作ったと思ったの。テレビシリーズの映像を使って…」
千葉「寄せ集めてね」
山口「それを編集して作ったのかなと思っていたら、あっ、本編の映像じゃん!って」
千葉「まあ、どうせセリフを言うのに必死で、画なんか見ている時間なんてね~んだけどね(笑)」
加藤「画もないのに、ラットルとかワスピーターとか言って、観ている人がわかってくれればいいんですけどね」
岩浪「そういうのがわかるファン向けの企画なんで、大丈夫ですよ」
高木「僕は少しでも本編に出ている立場なので、最初は画を見ながら『ここにこんなセリフ入れちゃおうかなぁ』とか考えていたんだけど、そのうち、『僕以外みんな本編出てない人たちだから、絶対に画に合わせた予告になるはずがない!』って気づいて。明日になってみないとわからないからリハーサルやめました(笑)。それで今日来てみたら、『あ~、これこれ、こんな収録』って当時の雰囲気が一気に蘇ってきて、もうめちゃめちゃ楽しかったですよ」
千葉「だけど、テストを1回やったのはビックリしましたね」
高木「いや、昔も一応…」
岩浪「やってましたよ」
千葉「そうだっけ?」
岩浪「テレビシリーズでいちばんリテイクが多かったのは実は予告なんですよ。やっぱりCGで画の印象が硬かったから、本編では生放送みたいなライブ感が欲しくて。だからテイクも重ねなかったし、エチュードですから、リテイクはよっぽどマズいことを言わない限りなかった」
山口「そうですね、エチュードでしたね」
岩浪「今回の予告は、さっきも話したように、そんなエチュードを楽しみにしているかつてのファンの方に対する罪滅ぼし。東和ピクチャーズさんに乗せられて宣伝的に若干嘘をついてはいるけれど(笑)。『あのころのノリを期待してる人、ごめんね。これでも観てや』、そういう気持ちで作りましたね」
加藤「贖罪ですね(笑)」
高木「でも、映画の本編も本当におもしろいですからね」
岩浪「おもしろい、おもしろい。チーター以外はここにいるメンバーは出てないけど…」
山口「それ、言われる度にグサッとくるんだけど(笑)」
千葉「でも、三部作らしいから、次は出るかもしれない」
岩浪「今回はゴリラ(オプティマスプライマル)が一番頑張っていて。(オプティマスプライマルの声を演じた)子安武人さんと(オプティマスプライムの声を演じた)玄田哲章さんが力を合わせて戦う、熱い展開なんですよね」
高木「変身シーンだって見事ですよね」
岩浪「映画として単純におもしろいですよ」
千葉「ふざける余裕はないわけだね」
高木「ない。ちょこっとのアドリブもしてないもん」
山口「全然してないの?」
岩浪「してない、してない」
高木「台本を見たら最初の登場シーンのセリフだけ、語尾にチータスの口癖の“じゃん"が付いてたけど、あとは付いてなくて。岩浪さんが『ほかも“じゃん"を付けていいですよ』って言ってくれたので、入れました。でも、原音のないところではやっぱりアドリブが許されなかった。走ってるシーンで“一人しりとり"やろうかなとも思ったんだけど(笑)」
山口「しりとり、やらなかったの?」
高木「やらなかった」
山口「しりとりもできないのか~」
岩浪「映画の流れを阻害しちゃうからね(笑)」
制御不能なインタビューは、怒涛の勢いでトークが繰り広げられ、あっという間に時間切れに。今回のアフレコ収録の様子を収めたメイキングの動画も後日公開予定なので、“無法地帯”な収録風景を映像で体験してほしい。
取材・文/イソガイマサト