「インディ・ジョーンズ」ファンの現役指揮者が徹底解説!「レイダース・マーチ」を聴くとなぜ人は元気になるのか? - 2ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
「インディ・ジョーンズ」ファンの現役指揮者が徹底解説!「レイダース・マーチ」を聴くとなぜ人は元気になるのか?

インタビュー

「インディ・ジョーンズ」ファンの現役指揮者が徹底解説!「レイダース・マーチ」を聴くとなぜ人は元気になるのか?

「クラシックのいろんな作品を知ったうえで楽譜を書いていることがわかる」

ウィリアムズに関しては、『ポセイドン・アドベンチャー』(72)、『タワーリン・グインフェルノ』(74)あたりから注目していたという。しかし、衝撃的で決定的だったのが、やはり『ジョーズ』(75)の音楽だった。

「みなさんご存知のあの低音の不気味な音型に始まって、チューバが高音域のソロを吹くという、あれ!このコンセプトはモーリス・ラヴェルが編曲した『展覧会の絵』の『ブィドロ』で行われていたことなのですが、おそらくジョンはそれを一つの参考にしたんじゃないのかな?と思ったんです。ただ、シチュエーションも違いますし、そこはもう完全にジョン風というか、“ジョン・ウィリアムズのサウンド”になっている。理屈どうこうではなくて、非常にわかりやすい音楽です。しかも、クラシック作品をジョンは熟知しているので、そのオーケストレーションについてもすばらしく、楽器の特性を最大限に活かしています。昨年、『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』のシネマ・コンサートで指揮をさせていただいて、“譜読み”と言うのですが、スコアを見ながら演奏について考えている時に、そのことが見えてきて楽しくてしょうがなかったです。クラシックのいろんな作品を知ったうえで楽譜を書いていることがわかるんですよ。また、現代でも作曲は手書き!シネマ・コンサート用スコアは清書印刷されたものですが、手書き感のあるすごく人間的なスコアでしたね」。

「『レイダース・マーチ』を聴くと、人間の感覚としてはすごく元気になった気がする」

「『インディ・ジョーンズ』in コンサート レイダース/失われたアーク《聖櫃》」でオーケストラを指揮する栗田
「『インディ・ジョーンズ』in コンサート レイダース/失われたアーク《聖櫃》」でオーケストラを指揮する栗田写真提供:キョードー東京

誰もがすぐに口ずさみたくなるテーマ曲にも仕掛けがあるという。「彼の手掛けるテーマ曲は、本作にしても『スター・ウォーズ』や『スーパーマン』にしても、一番活躍するのがトランペットです。全体的にも金管群が大活躍するのですが、彼が得意とするマーチ系に関しては、とにかく跳躍が多いんです。音が飛ぶんですよ。『レイダース・マーチ』は、特に上行系と跳躍が詰まっているので、すごく高揚感が続くわけです。『タータッタター!』と全部上に向かって。人間の感覚としては、すごくそこで元気になった気がしますよね。しかもテンポが速いんです。特に、『レイダース・マーチ』は跳躍している時間が長くて、何度も何度もやって来る。あと、ジョンの場合は、いろんな指揮者が言っていますが、ホルンを多用していて、その扱いがすばらしいというか、すごい!テーマ曲に関してもおいしいところはだいたいホルンがその役割を担っていて、音域も広いんです。だからシネマ・コンサートを行う時は、ホルン奏者が相当強靭でないと務まらないんです。レコーディングと違って、コンサートの休憩時間までは連続して演奏するわけですから、配分が大切ですし大変ですね。じゃないと金管楽器奏者の唇がもたないです」と、指揮者だからこその視点でウィリアムズが手掛ける楽曲のおもしろさ、難しさを説明する。


栗田がシネマコンサートの指揮を務めたシリーズ第1作『インディ・ジョーンズ/レイダース 失われたアーク《聖櫃》』
栗田がシネマコンサートの指揮を務めたシリーズ第1作『インディ・ジョーンズ/レイダース 失われたアーク《聖櫃》』[c] & TM 2023 Lucasfilm Ltd. ディズニープラス「スター」で見放題配信中

続けて、本作ならではの特徴も教えてくれた。「シリーズ最終作というのを様々なシーンから感じられると思うのですが、音楽でもライトモチーフがあちこちに出てきます。それは、キャラクターに合ったモチーフだったり、ある場面のモチーフだったり。例えば、冒頭のインディがナチスと闘うシーンで、過去シリーズで使われていたモチーフが出てきます。1~4作目で培ってきたものが、すべて本作に使われている印象です。でも、最後だからと肩肘張って構えるのではなく、自然と組み込まれているから、まったく違和感がありません。これまで自分が作曲してきたものを惜しみなく出し尽くしてくれている。監督は変わりましたが、きっとジョンのやりたいように任せてくれたのだろうなと思います」。

デジタル技術によって若かりし頃のインディも登場!
デジタル技術によって若かりし頃のインディも登場![c]2023 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved. 『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』大ヒット上映中
■栗田博文
指揮者。1988年第23回東京国際音楽コンクール指揮部門において優勝。1989年イタリアにおいて第1回アントニオ・ペドロッティ国際指揮者コンクールに入賞し国際的な評価を確立。1995年フィンランドにて第1回シベリウス国際指揮者コンクールの最高位に輝く。国内外の活発な指揮活動と共に、国立音楽大学客員教授を務め、後進の指導にも力を注いでいる。クラシック音楽の古典から現代作品まで幅広いレパートリーを持つほか、映画、ゲーム、アニメなど様々なジャンルとのコラボレーションも積極的に行う。2023年8月には「銀河鉄道999シネマ・コンサート」の公演も控える。
・公式サイト:https://www.musicachiara.com/kurita-hirofumi

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