佐藤浩市&横浜流星、本気でぶつかり築いた特別な絆「何度も心を救われた。浩市さんに出会えてよかった」
沢木耕太郎の同名小説を佐藤浩市と横浜流星を主演に迎えて映画化した『春に散る』(8月25日公開)の完成披露試写会が7月19日にイイノホールで開催され、佐藤と横浜をはじめ、橋本環奈、山口智子、瀬々敬久監督が登壇した。
不公平な判定で負けアメリカへ渡り40年振りに帰国した元ボクサーの広岡仁一(佐藤)と、同じく不公平な判定で負けて心が折れていたボクサーの黒木翔吾(横浜)が出会い、世界チャンピオンを共に目指していく姿を描く本作。
翔吾役を演じた横浜が、本作の宣伝活動が本格始動する段階でボクシングのプロテストを受験し、C級ライセンスに合格したことも話題となった。佐藤は「撮影の時にちょっとね、我々の間ではそういう話はあったんです。(受験を)『やってみないか?』というので、周りが本人をその気にさせていた」とニヤリとしながら、「だけど本当に受験するとは思わなかったので、びっくりしたのと『よし!』という感じ」と合格を称えていた。
劇中では仁一と翔吾がトレーニングをするなかで、ミット打ちをする場面もある。佐藤は「皆さんが思われるよりキツイです。ミットって、柔らかい感じがするでしょう?実際はすごく硬いんです。なおかつ(受ける方も)引いたらダメなので、こっちも一緒に当てに行くんです。またこの男のパンチが重くてね」と横浜の肩に触れながら、当時の衝撃を笑顔で述懐。
「重ねるうちに、アイコンタクトでできるようになった」と話す。「(ミット打ちが)痛いのを知っているからこそ、最初は躊躇があった」という横浜は、「手合わせをさせていただくたびに、浩市さんが『本気で来い』という力強い言葉をくれた。逆に抜いてやるのは失礼だし、浩市さんの胸を借りて、本気でいかせてもらった」と信頼関係を築きながら、本気でぶつかったという。
役柄同様に特別な絆を育んだ様子で、横浜が「言葉を交わさずとも、仁一と翔吾の関係を作っていけた気がする」と胸を張ると、佐藤も「流星自身が『懐に飛び込んでいきます』という目、顔をしているし、こっちも『来いよ』というところで、お互いに垣根を超えていった」と回想。横浜が「翔吾にとって仁一さんは、心の拠り所であり、心の救い。撮影中、僕も浩市さんに同じ気持ちを持っていた。なにがあっても味方でいてくれるし、ちょっとした変化に気づいてくれる。何度も心を救われたので、この作品で浩市さんと出会えてよかったなと思っています」と感謝すると、佐藤は「好感度を上げてくれてありがとう!」と茶目っけたっぷりに語り、横浜と会場を笑わせていた。
ボクシングの試合シーンも、熱気に満ちたものが完成している。瀬々監督は「最後の試合はぜひ注目していただきたい」と翔吾と天才ボクサー・中西利男(窪田正孝)が繰り広げるクライマックスの場面に触れ、「いまも思い出しますが、ファーストカット、あまりにも(2人の)動きが速かったので、僕はカットをかけられなかった。すみませんでした!」と謝罪。横浜が「エキストラの皆さんが応援してくださって、カットがかかると拍手をしてくださる。活力になった。中西くん、窪田くんに負けたくないという気持ちが表に出た」と気迫の源について告白すると、佐藤は「役のうえでも、役者同士としても、2人が負けたくないわけです。どれだけ自分が『真剣なんだ』という気持ちが前のめりに出ている」と思い返しながら、「見応えのあるシーンになっている」と力強く語る。橋本も「近寄れないくらいの気迫と緊張感。本当に圧倒されました。映画で試合を見たような感覚に陥るというのは、すごいなと思いました」と驚いていた。
またボクシングジムの会長である令子役を演じた山口は、『スワロウテイル』(96)以来、27年ぶりの実写映画出演となった。今回出演を決めたのは、「浩市さんラブですから」と目尻を下げた山口。「俳優さんとしてすごく尊敬していて、大好きなんです。浩市さんとは絶対にご一緒したかった。すごく幸せでした」と話すと、佐藤は大照れ。若い世代とも共演を果たし、山口は「力をいただきました。若い世代の方にいっぱい教わることがある。本物の輝きを近くで感じさせていただいて、感動でした」と大いに刺激を受けていた。
取材・文/成田おり枝