いつまで続く?ハリウッド俳優連合のストライキ、現状の問題点と多大な影響をまとめ
AMPTP(映画テレビ製作者協会)と全米脚本家組合(WGA)の契約条件が合意に至らず、5月2日より2か月以上ストライキが続いている。7月12日深夜にはAMPTPとSAG-AFTRA(米映画俳優組合)の交渉もまとまらないまま期限を迎え、14日よりストライキに入った。これにより、SAG-AFTRAに所属する約16万人の俳優やパフォーマーは、AMPTP加盟社(スタジオ、ストリーミング企業、製作会社など)が製作する映画、テレビ番組に関するあらゆる仕事に従事することを中止した。WGAとSAG-AFTRAが同時にストライキを行うのは1960年以来となる。直接的な撮影や撮影準備だけでなく、宣伝活動やSNS投稿も禁止されているため、7月17日に予定されていた『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(公開中)のトム・クルーズらの来日イベントも中止となった。
AMPTPとWGA、SAG-AFTRAの交渉内容は、物価上昇率を考慮した報酬額引き上げ、ストリーミング作品におけるレジデュアル(二次使用料)の支払い、AI技術利用による肖像権保護、年金と健康保険料の上限額更新などがある。交渉が合意に至るまでストライキは続き、映画やテレビシリーズについて様々な変更や中止などが生じる可能性がある。
SAG-AFTRA の主席交渉人であるダンカン・クラブツリー=アイルランド氏がストライキ開始の記者会見で述べたように、ファンイベントや映画祭、取材活動、SNS投稿など作品のプロモーションに関わるすべての仕事の遂行が禁止された。7月20~23日に開催中のサンディエゴ・コミコンでは、スタジオによるプレゼンテーションやパネルのキャンセルが相次いでいる。7月12日に発表された第75回プライムタイム・エミー賞は9月18日に授賞式を予定しているが、放送局のFOXは延期も検討中。秋の映画祭シーズンの幕開けとなるテルライド映画祭、ヴェネチア映画祭、トロント映画祭などもタレントの出席が見込めず、対応を余儀なくされている。ストライキの開始と共に『デッドプール3』や「ストレンジャー・シングス」などの撮影は中止となり、ストライキが解除される見通しも立っていないので、来年以降の作品公開、配信スケジュールに大きな変更が生じるのは必須だ。
AMPTP加盟社との契約で作られている映画やテレビ番組の撮影は直ちに中止されたが、中には例外作品もある。AMPTPに属さないインディペンデント作品の製作はSAG-AFTRAの暫定契約をもって行うことができるからだ。7月18日にSAG-AFTRAが発表した暫定契約プロジェクトリストには、アン・ハサウェイ主演、デヴィッド・ロウリー監督の『Mother Mary』や、 ジェナ・オルテガ主演の『Death of a Unicorn』、メル・ギブソン監督、マーク・ウォールバーグ主演の『Flight Risk』、マッツ・ミケルセンとシガニー・ウィーヴァーが主演する『Dust Bunny』など39件があがっている。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で第95回アカデミー賞作品賞を受賞したA24はAMPTP加盟社ではないため、『Mother Mary』と『Death of a Unicorn』の製作が続行されることになった。これらのプロジェクトは暫定契約をもって“ゴーサイン”が出されたが、SAG-AFTRA会員である俳優たちが実際に参加するかどうかはわからない。
また、HBOのドラマシリーズ「ハウス・オブ・ドラゴン」の撮影は続行されている。イギリスの労働組合エクイティは「SAG-AFTRAやメンバーと連携、サポートする」との共同声明を発表したが、英国には反労働組合法があるため、現在エクイティによる団体交渉協定に基づき働いているSAG-AFTRA会員は引き続き撮影に参加しないと、逆に出演契約違反を問われるからだ。同じように、アメリカのネットワーク局のゴールデンタイム以外に放送されている番組(ソープオペラドラマ、クイズ番組など)はネットコードと呼ばれる異なる契約に基づき製作されているため、中止などの影響は受けていない。