女優・綾瀬はるかの“特別さ”を行定勲監督が語る!『リボルバー・リリー』特別講義を潜入レポート
この日、講義に参加したのはメディア・プロモーション学科の生徒たち。女優やアイドル、声優、歌手、制作者といった、いわば表現者を目指す学生たちが在籍している学科ということで、生徒から「私は女優を目指しています。監督が思う、女優に必要なことはなんですか?」と質問が飛ぶ。行定監督は「知性ですね」と即答。「現場に来たら空っぽでいいんです、なにも考えなくていい。でも、脚本を読む力は知性がないと無理だし、いかにインプットしているかが大事」と語る。
「皆さんに近い存在で名前をあげると、例えばあのちゃんなんかは地下アイドルからスタートしていて、当時は悪目立ちするぐらいだった。でも、いまやダウンダウンとかと共演するようになって…『おもしろいね君』っていう人が現れた時に、知性があるから輝ける。それはたくさんのことをインプットしているから。BiSHのアイナ・ジ・エンドとかセントチヒロ・チッチとかもそうですよね。彼女たちなりの興味と知識がすごいんです。僕はチッチの短編を撮らせてもらって、アイナも今秋公開になる岩井俊二監督の『キリエのうた』でヒロインに抜擢されている。そうやって時代のなかで残っていく人たちって、誰かに認められる時に輝ける準備が出来ているんです。認められるのはいつかわからない。ものすごく年齢を重ねてからかもしれないけど、そこまでの鍛錬が必要」と熱弁。
さらに「女優をやるってすごく難しいこと。結局、他者が自分の価値を決めるから。監督業も同じで、僕のポテンシャルを信じて『リボルバー・リリー』を撮ってくださいって言ってくれるプロデューサーがいなかったら、僕はここにいない。だから、教養とか知性というのは、女優たちに持っていてほしいなと思います」と言葉を紡ぐと、生徒たちは大きくうなずいていた。
また、「“伝わった”と感じる瞬間は?」という質問も。行定監督は「傑作の命って短いんです。次の瞬間、別の傑作が現れている。マニアックな、これは誰も褒めていないけれど好きというものを見つけること。そういうことに価値があると思ってずっとやってきました。もちろん大ヒットするのはうれしいけれど、ヒットしなくても『伝わらなかったのかな』と思う必要もなくて。ものづくりをしていると、『この人たちが褒めてくれるなら死んでもいいかな』って思えるようなことも訪れる。“伝わった”っていうのは一過性のもの。ミニマムに誰かに伝わったと感じられる表現が、一番すばらしいんじゃないかと思います」と持論を展開する。
「でも、この映画は劇場でぜひ大勢の方に観てほしい。映画の製作中にウクライナで戦争が始まって、より時代を映した映画になったと思っています。反戦映画とまで大仰に言う必要はないけれど、エンタメとして気軽に観に行ってもらって、観たあとちょっとだけ持ち帰るものがある。アニメーションや漫画原作といったものばかりでなく、実写映画の力を信じてほしい」と語ると、会場からは大きな拍手が起きた。
新潟、福岡、そして仙台と監督による『リボルバー・リリー』の地方プロモーションが続いている。綾瀬はるかにとって新たな代表作になるであろう行定監督の入魂の一作を、ぜひスクリーンで目撃してほしい。
取材・文/編集部