『ビースト覚醒』に至る「トランスフォーマー」との歩みをタカラトミーに直撃!「映画を研究することでおもちゃのレベルがどんどん上がっていきました」
「ゴリラの状態での遊びやすさを考えて二足歩行でドラミングしているポーズを取ることができます」(山田)
――動物ならではのボディラインなど『ビースト覚醒』の商品開発にまつわる苦労などはありましたか?
巽「車や飛行機などビークルはかっちり形が決まっていますが、動物はポージングが様々です。チーターでもお尻を下げているのか、低い姿勢で獲物をねらう感じなのか、切り取る場面でまったく形状が違ってきます。その動物らしい形を決めてスタートさせるところが難しかったですね」
山田「僕がデザインした『覚醒チェンジセット』のオプティマスプライマルは、ゴリラの状態での遊びやすさを考えて二足歩行でドラミングしているポーズを取ることができます。関節の位置によっては遊ぶ時にかっこ悪く見えることもあるので、ビーストモードから考えました」
宮内「MPMのようにロボットモードもビークルモードもリアルさを求められる場合はどうなんだろう?」
巽「例えば、ビークルでライセンスの許諾を得ているものは、その外観を再現するためにまずはビークルモードから考えていきます。そのなかでロボットモードもリアルに再現できるようデザインしていきます。ただ、商品によってはビークルの自由度が高いものもあります」
山田「『ビースト覚醒』のアーシーのモーターサイクルはオリジナルのデザインのバイクです。なので、ぱっと見は似ているのですが、ライトやタンクなどの形状が違います。そういう違いを見つけるのも楽しいかもしれないですね(笑)」
――原価とパーツ数など、ビジネス的なせめぎ合いもありそうですね。
巽「あと1パーツ足すことができればこの部分を動かせるのに!のような葛藤はありますが、決められたコストやスケジュールのなかで最良のものを作るのが僕たちの使命ですから」
山田「僕はもう毎日です。なんでこのパーツは入れられないんだ!って。でも、例えばオプティマスのタイヤ6個のうち真ん中は転がらないけど、タイヤの中央に共通の5ミリ幅の穴を設けて武器などを取り付けられるようにしておくとか、ただでは転ばないようにしています(笑)」
「大人が手に取って部屋に並べたくなるものを意識して進化させています」(宮内)
――90年代に売られていた「ビーストウォーズ」の商品とは構造的な違いはあるのでしょうか?
山田「当時は水鉄砲として遊べるビームライフルとか、おもしろギミックを付けておもちゃらしさに寄せていたんです。そういったおもちゃらしい技術は、例えば『パパパっとチェンジ』に生きていたりします。先ほどボールジョイントの話が出ましたが、その技術もやっぱり『ダイアクロン』や『ミクロマン』の頃からずっと受け継がれているんです」
宮内「CGの技術が上がって設計のしやすさや精度は上がっていますが、デザイン面が進化したのはファンの要求が高くなったのと、実写映画の登場でよりかっこいいデザインが求められるようになったことがあります。現在は、大人が手に取って部屋に並べたくなるものを意識して進化させています」
「自分のようなトランスフォーマーファンを生みだすことを目標にしています」(山田)
――「トランスフォーマー」や「ビーストウォーズ」シリーズの開発に携わった方々は、最初の実写映画『トランスフォーマー』(07)はどうご覧になったのでしょうか?
宮内「完成した映画を初めて試写室で観た時に、映像がすばらしくて感動して泣いた担当者もいたと聞いています。第1作の時のおもちゃは映画の資料を基に作っていて、それまでのやり方で変形させていたんです。ところが、映画の変形シーンを参考に作った2作目から、一気にクオリティが上がりました。映画を研究することで、おもちゃのレベルがどんどん上がっていったんです」
山田「当時は買う側だったんですが、1作目と2作目でおもちゃがガラッと変わってびっくりしました。元々『トランスフォーマー』が好きだったので、父親に『映画に連れてって』とせがみ、観た後におもちゃが欲しい!ってなったのを覚えています」
宮内「理想的な流れだね(笑)。それで、入社してきたんだ」
山田「だから僕は、自分のようなトランスフォーマーファンを生みだすことを目標にしています(笑)。20年後の新入社員が、『〇〇が好きでこの会社入ったんですよ』と言ってくれたら、『それ、僕が作ったんだよ』みたいな(笑)」
――映画の変形シーンは理にかなっているのでしょうか?
山田「キャラにもよりますが、バンブルビーの胸にビークルのフロントがあるとか、ああいうところの整合性はありえるね!って話していました」
巽「車としてのパーツがまったく残ってないロボットモードだと、おもちゃにする時は純粋に困りますね」
宮内「スタジオシリーズとかMPMの1作目のキャラクターは、一部ダミーパーツもありますが、ビークルモードからロボットモードへパーツをちゃんと移動してほぼ映画に忠実に変形しています。理にかなっていなかったものを、理にかなえたと言えるかもしれません(笑)」