『キャリー』『シャイニング』から最新作まで…“生ける伝説”スティーヴン・キング作品の映像化が絶えない理由
1974年に「キャリー」で作家デビューして以来、数多くの名作ホラー小説を世に送りだしてきた“ホラーの帝王”スティーヴン・キング。2015年にはアメリカ最大のミステリ賞であるエドガー賞を受賞するなどいまなお現役の作家として活躍するキングは、来年ついに作家デビュー50周年を迎える。
これまで映像化された著作は数知れず。ブライアン・デ・パルマ監督によって映画化された『キャリー』(76)を皮切りに、スタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』(80)や、感動作として多くの映画ファンから親しまれている『スタンド・バイ・ミー』(86)や『ショーシャンクの空に』(94)など、少なくとも60本以上の映画や30タイトル以上のドラマ作品に原作としてクレジットされ、さらには「ストレンジャー・シングス 未知の世界」のようにキングの世界観に影響を受けた作品も後を絶たない。
まさに“生ける伝説”と呼ぶにふさわしいキングの創作の原動力は、やはり“恐怖”。幼い頃から怖がりだったというキングは、自身が恐れるものを小説に書くことで、その恐怖を作り物に、すなわち現実のものではなくしていったというのだ。そうして生みだされた日常生活に潜む身近な恐怖は、誰の身にも置き換えうるものとして人々の琴線に触れる。それがいまなおホラーファンに限らず世界中で圧倒的な人気を集め、映像化されてきた理由だろう。
そんなキングの小説を原作とした最新作が、8月18日(金)より日本公開を迎える『ブギーマン』だ。欧米圏では古くから民間伝承として伝えられてきた怪物“ブギーマン”を下敷きに書きあげた短編小説「子取り鬼」が原作となっており、母親の突然の死によって心に闇を抱えたハーパー家の家族、父親と2人の娘に得体の知れない恐怖が忍び寄る様が描かれていく。
メガホンをとったホラー界の新鋭ロブ・サヴェッジ監督をはじめ、製作陣のほぼ全員が子どもの頃に原作を読み影響を受けていたことを明かしている本作だが、出演するキャスト陣にとってもキング原作の作品であるということが出演の重要な決め手となったようだ。「スティーヴン・キングには多くのファンがいるのでかなりプレッシャーを感じました。でも、優れた物語を生みだす彼が書いた作品だからこそ、自信も感じていました」と語るのは、主人公のセイディ役を演じたソフィー・サッチャー。
また、これまであまり積極的にホラー映画に出演してこなかった父ウィル役のクリス・メッシーナも、「最初に僕の関心をとらえたのは、スティーヴン・キングでした。彼のレガシーの一部になりたかった」と語り、原作では物語の語り部となるレスター役を演じたデヴィッド・ダストマルチャンは「彼は僕の大好きなクリエイターの一人だから、プレッシャーがかかると思っていました」と、キングの偉大さに初めは及び腰だったことを明かすほど。
「スティーヴン・キングという人にはすばらしい部分がたくさんあります。そのうちのひとつが、“自分の書いたものに忠実であれ”と望むことをしないということ。彼は僕らのバージョンのストーリー、クリーチャを作ることを承認し、歓迎してくれました」とサヴェッジ監督が語るように、映画化するにあたって必要なアレンジを許容し、さらに脚本の段階からサポートするなど多くのクリエイターたちの想像力を刺激し続けるキング。今後も多くの著作の映像化が控えており、その伝説はまだまだ続いていくことだろう。
文/久保田 和馬