「岡田麿里の魅力を200%引きだす」MAPPA・大塚学が『アリスとテレスのまぼろし工場』に込めた想い

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「岡田麿里の魅力を200%引きだす」MAPPA・大塚学が『アリスとテレスのまぼろし工場』に込めた想い

「あの日見た花の名前は僕たちはまだ知らない。」をはじめ、脚本家として数々の傑作を生みだしてきた岡田麿里が、5年ぶりに自らメガホンをとるオリジナル劇場アニメーション『アリスとテレスのまぼろし工場』(9月15日公開)。

本作のアニメーション制作を手掛けたのは、数々のヒット作を世に送りだしてきたアニメーションスタジオMAPPAだ。同スタジオ初のオリジナル劇場アニメとなる本作の制作にいたった経緯や、その作品づくりに込めた想いを紹介していこう。

本作の舞台は、突然起こった製鉄所の爆発事故によってすべての出口を失い、時まで止まってしまった町。なにも変えてはいけないというルールができ、鬱屈とした日々を過ごしていた14歳の正宗は、謎めいた同級生の睦実に導かれて製鉄所の第五高炉へと足を踏み入れる。そこにいたのは言葉を話せない野生のオオカミのような少女、五実一。この出会いは世界の均衡が崩れるはじまりだった。

【写真を見る】少年少女たちが“恋する衝動”を武器に現実に抗う!生々しい感情に向き合う岡田麿里ワールドが炸裂
【写真を見る】少年少女たちが“恋する衝動”を武器に現実に抗う!生々しい感情に向き合う岡田麿里ワールドが炸裂[c]新見伏製鐵保存会

第90回キネマ旬報ベスト・テン日本映画ベストワンなど数々の映画賞に輝いた『この世界の片隅に』(16)や、興行収入138億円のメガヒットを記録した『劇場版 呪術廻戦 0』(21)。さらには「進撃の巨人 The Final Season」などで知られるMAPPA。その代表取締役を務める大塚学は、岡田監督の前作『さよならの朝に約束の花をかざろう』(18)を観て感銘を受け、「岡田監督の作りたい世界を徹底的に追求した作品を作りたい」と制作を決意したという。

「スタジオ初のオリジナル作品だという構えは一切なく、とにかく岡田さんに監督として新たな作品を生みだしてほしいという願いのシンプルな結果です」と振り返る大塚。制作過程では、あらかじめ“オリジナル劇場作品を作る”という枠組みを持つことはなく、岡田監督のクリエイティビティに一任する方針が取られたという。そのなかで大塚は、現場からあがってくるものに幾度となく衝撃を受けたのだとか。


謎めいた同級生の睦実に導かれ、製鉄所の第五高炉へ
謎めいた同級生の睦実に導かれ、製鉄所の第五高炉へ[c]新見伏製鐵保存会

一方で2021年の制作発表の際に「地に足がついていながら挑戦的な、このチームでしかできないアニメーション映画を追求したい」と語っていた岡田監督は、「今回の企画は通らないと思っていた」とも振り返っている。売れることを目指した既定路線から逸れても、誠実に作品とその作り手に向き合っていくというのも「常に“新しい”を追求するプロダクション」と掲げるMAPPAならではの姿勢。それが“挑戦的”になると信じ抜いたMAPPAだからこそ実現できた企画といえよう。

脚本を手掛けた「あの花」から『心が叫びたがってるんだ。』(15)や『空の青さを知る人よ』(18)。さらには監督作である『さよならの朝に約束の花をかざろう』にいたるまで、岡田作品に共通している魅力は、誰にでもある“弱さ”を直視し、闇や葛藤を隠さずに繊細に描きつつも決して暗くせず、人間の無垢な心に出会わさせてくれること。本作でも、“変化は悪”という特殊な環境のなかで少年少女たちが“恋する衝動”で現実に抗い、未来へもがく心のうねりの描写が、観る者の感情を大きく揺さぶっていく。

『アリスとテレスのまぼろし工場』は9月15日(金)公開
『アリスとテレスのまぼろし工場』は9月15日(金)公開[c]新見伏製鐵保存会

大塚は「日常からかけ離れた大きな感情を描く。あの感情はいったいなんなのだろうと興味をそそられるし、想像力を刺激される。そういう観客の引きつけ方というのが岡田作品の醍醐味だと思っている」と力説。そして制作チームからキャストまで一丸となって岡田監督の魅力を200%引き出すことを追求して完成させた作品について「なにかすごいものが出来上がっているなと感じています」と自信をのぞかせる。

MAPPAのブレない想いが結実し、アニメ映画の新たな未来を切り拓くであろう本作。その全貌は、是非とも劇場のスクリーンで目撃してほしい。

文/久保田 和馬

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