隅田川テラス、ビルの隙間から見える花火…『こんにちは、母さん』に映しだされた、墨田区ロケの撮影秘話|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
隅田川テラス、ビルの隙間から見える花火…『こんにちは、母さん』に映しだされた、墨田区ロケの撮影秘話

インタビュー

隅田川テラス、ビルの隙間から見える花火…『こんにちは、母さん』に映しだされた、墨田区ロケの撮影秘話

映画やテレビドラマに撮影可能なロケ地の情報を提供し、案内、調整も行う「東京ロケーションボックス」。現在公開中の山田洋次監督の最新作『こんにちは、母さん』もそのサポートを受けた一本だ。山田監督にとって実に90本目となる監督作で、東京の下町で令和の時代を生きる“等身大の家族”の姿が描かれる。

大泉洋演じる神崎昭夫は、大企業の人事部長というポジションを得ながら神経をすり減らす毎日を送り、職場でのトラブルに加え家庭での問題にも頭を悩ませている。吉永小百合演じる母の福江が暮らす東京下町の実家を久しぶりに訪ねると、艶やかなファッションに身を包み、イキイキと暮らす彼女の姿があった。おまけに母の恋愛事情まで耳にし、久々の実家にもかかわらず戸惑う昭夫。しかし、お節介が過ぎるほどに温かい下町の住民や、これまでとは違う“母”とも新たに出会い、しだいに喧騒の日々のなかで見失っていたものに気づかされていく。

久しぶりに実家を訪れた昭夫は、艶やかなファッションに身を包み、イキイキと生活する母、福江と出会う
久しぶりに実家を訪れた昭夫は、艶やかなファッションに身を包み、イキイキと生活する母、福江と出会う[c]2023「こんにちは、母さん」製作委員会

山田監督の強い希望もあり、撮影は劇中の舞台でもある東京の下町、墨田区で行われた。そこで今回、ロケ地案内などに携わった墨田区産業観光部観光課の根本氏、矢田氏、墨田区観光協会フィルムコミッション担当(すみだフィルムコミッション)の深澤氏、関根氏に、撮影時のエピソードや実際に映画を観た感想、墨田区の魅力について話を聞いた。

「葛飾北斎の絵にも描かれ、東京スカイツリーなど新しいランドマークも建っている。いまと昔が交わる場所が隅田川テラス」(矢田)

――山田監督がロケーションにこだわって撮られた作品です。オーダーがあった際には作品についてどのような印象を受けましたか?

関根「山田監督と吉永さんが組まれるという時点で、作品の世界観はなんとなくイメージできました。この組み合わせは墨田区にとっても特別な作品になると感じました。撮影したいロケーションは管轄が墨田区であったり、民間であったり、東京都であったり、警察であったりと様々だったので、撮影は大変だとは思いましたが『ぜひ、やりたい!』という気持ちでした」

矢田「隅田川テラスが重要なスポットの一つとして登場します。撮影されたのは吾妻橋~白鬚橋付近のエリアなのですが、墨田区らしさが出る場所でもあるので、映画でどのように映るのかなど、観光課内でいろいろと話し合った部分です。どこの撮影場所にも共通することですが、どの方向から撮影するか、場所によって許諾する管轄が変わるので、山田監督がどういう画を撮りたいのかと、墨田区として見せたい形について、担当者同士でよく話し合っていたと記憶しています」

――隅田川テラスは墨田区にとってどのような場所なのでしょうか?

矢田「隅田川は墨田区以外にも長くつながっている川でいろいろな景色を見ることができます。昔の姿も残っているし、最新の姿も見られる場所で、風情もありつつ都会的な面もあります。船に乗るだけでもそれが感じられると思います。葛飾北斎の絵にも描かれているような場所ですし、東京スカイツリーなど新しいランドマークも建っています。いまと昔が交わる場所なので、ロケに使われることが多いのかなと思っています」

根本「観光で訪れる方もいらっしゃいますが、地元の方にとってはランニングをしたり、休憩をしながら情景を見て、リフレッシュしたりする場所になっています。ドラマや映画にもよく登場しますし、対岸の浅草側もよく見えるので写真を撮っている方もとても多いです」

関根「隅田川テラスの下の階段部分、桜橋デッキテラスで山田監督とご挨拶させていただきました。普段はロケに立ち会っても離れて見ていることが多いので、隅田川テラスの下は、個人的にも思い出に残っているロケ地です(笑)」

スカイツリーを望む向島にカメラを据えるなど、墨田区で撮影することにこだわった山田監督
スカイツリーを望む向島にカメラを据えるなど、墨田区で撮影することにこだわった山田監督[c]2023「こんにちは、母さん」製作委員会

「どう頑張っても実現が難しい場合には別の方法があるのか、区の方とたくさんディスカッションできたことも、役に立ったと思っています」(深澤)

――ロケでのエピソードなどを伺えますか?

矢田「隅田公園での撮影は当時の担当者からいろいろな話を聞いています。公園での撮影にあたり、制限もあるので、細かな調整が必要だったようです。ただ、我々としても気持ち的には『撮影していただきたい』というのが一番にあり、どのようにすれば区としての条例やルールに反することなく撮影ができるのか、公園担当者の方とたくさん話し合って解決策を探っていたようです」

関根「今回は土木管理課の方も現場で調整に関わってくださったことが、スムーズな撮影につながったと感じています。例えば、公園の木の枝を少しどかして撮影したいというリクエストが来た時も、どこまで動かせるのか、そもそも動かしていいのか、元の形へ回復すればOKなどをその場で確認できてすごく助かりました」


――土木管理課の方が入るのは珍しいことなのでしょうか?

関根「珍しいと思います。今回は撮影に至る経緯もありましたし、区役所から撮影場所が近いというのも大きな理由の一つだったのかと」

深澤「私はロケ地の調整をメインに行いましたが、最初に出てきた撮影したい場所の一覧を見た段階で、ルール内で物理的にできることとできないこと、時間の制限などを検討していきました。どんな方法で撮影すればロケが行えるのか、どう頑張っても実現が難しい場合には別の方法があるのか、区の方とたくさんディスカッションできたことも、役に立ったと思っています」


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