ヴェネチア国際映画祭、金獅子賞は『哀れなるものたち』に!ヨルゴス・ランティモス監督×エマ・ストーン×サーチライトが再タッグ
第80回ヴェネチア国際映画祭の授賞式が現地時間9月9日に執り行われ、『女王陛下のお気に入り』(18)のヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーン、サーチライト・ピクチャーズが再タッグを組んだ『哀れなるものたち』(2024月1月26日公開)が最高賞である金獅子賞を受賞した。
アラスター・グレイの同名ゴシック小説を映画化した本作は、自ら命を絶った不幸な若き女性ベラ(ストーン)が天才外科医ゴッドウィン(ウィレム・デフォー)の手によって奇跡的に蘇生することから始まる。蘇ったベラは“世界を自分の目で見たい”という強い欲望に導かれ、放蕩者の弁護士ダンカン(マーク・ラファロ)の誘いに乗って壮大な大陸横断の冒険へ。貪欲に世界を吸収していくベラは平等と自由を知り、時代の偏見から解き放たれていくことに。
『アルプス』(11)で第68回ヴェネチア国際映画祭脚本賞、『女王陛下のお気に入り』で第75回ヴェネチア国際映画祭審査員大賞(銀獅子賞)を受賞したランティモス監督が、金獅子賞ならびに世界三大映画祭の最高賞を受賞するのは今回が初めて。また、第62回カンヌ国際映画祭「ある視点」賞を受賞し第83回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた『籠の中の乙女』(09)を皮切りに、手掛けた長編映画が6作連続で世界三大映画祭の賞に輝く快挙を成し遂げた。
現地時間9月1日にヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門でワールドプレミア上映が行われた際には、上映が終了するやランティモス監督を称賛するコールと共に、10分以上のスタンディングオベーションに包まれるなど会場は大熱狂。翌9月2日にはテルライド映画祭で行われた北米プレミアでも大きな反響を巻き起こし、批評集積サイト「ロッテン・トマト」では批評家の98%から好意的評価を獲得している(※9月10日現在)。
前作『女王陛下のお気に入り』はヴェネチアでの受賞を機に世界中の映画賞を席巻し、第91回アカデミー賞では作品賞と監督賞を含む9部門10ノミネートを果たし、オリヴィア・コールマンが主演女優賞を受賞。また、同じサーチライト・ピクチャーズ制作の『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)と『ノマドランド』(20)は、両作品ともヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を獲得した後、アカデミー賞で作品賞を受賞している。
すでに第95回アカデミー賞の最有力候補の一角との呼び声も高い本作も、それらに続くことができるのか。今後本格化していく賞レースでの活躍に注目したい!
文/久保田 和馬