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怖い?笑える!?“降霊会“が登場する映画の傑作&怪作セレクション

コラム

怖い?笑える!?“降霊会“が登場する映画の傑作&怪作セレクション

臨場感たっぷりの降霊会シーンに背筋が凍る!『チェンジリング』(70)

古い屋敷の謎とは…怖すぎ、要注意の『チェンジリング』
古い屋敷の謎とは…怖すぎ、要注意の『チェンジリング』 [c]Everett Collection/AFLO

ジョージ・C・スコット扮する作曲家ジョンは、愛妻と子どもを交通事故で同時に失う。失意の彼は古い屋敷で一人暮らしを始めた。しかし夜になると、幼い子どもの幽霊が出没。ジョンに何かを語りかけてくるのだ。ジョンは降霊会を開いて、屋敷の謎と過去の事件を探ろうとするが…。降霊会シーンは、背筋が凍ること必至。映画史上屈指の怖さである。実際に現場に立ち会っているような、凄い臨場感なのだ。だから夜中に観るのはオススメしません(まして1人の時は!)。

ムッツリ顔のスコットが、クールな形相で真相を暴いてゆく点も印象的で、無常観あふれる彼の名演が、鑑賞後深い余韻を残す。

和風降霊会が登場する、横溝正史原作もの『悪魔が来たりて笛を吹く』(79)

横溝正史原作の日本作品も挙げておこう。名探偵・金田一耕助が登場する同名の長編ミステリーには、「砂占い」という降霊会風のイベントが登場する。姿を消した当主の生死を探る際、関係者全員の前で占い師が呪文を唱える。すると霊界からのメッセージが文字盤に記されるのだ。占いの機器には、砂を盛った皿の上に金属製の錐(キリ)がぶら下がっており、機器に触れた参加者の霊的意図で、錐の尖った先がコックリさんのように動いて、自動で砂の上に文字や文様が描かれる。

西田敏行主演の角川映画版(79)も、後年何本も作られたTVドラマ版も、奇妙な機器の造型に工夫が凝らされており、どれも一風変わった和風降霊会に仕上がっていた。横溝正史は、ジョン・ディクスン・カーの長編ミステリー「黒死荘の殺人」を愛読していたので、そこで描かれる雰囲気満点の降霊会の様子を参考にして、独自のシーンを練ったのだろう。

大胆奇抜、劇的な降霊会『アザーズ』(01)

ニコール・キッドマンが見えない恐怖に脅える母親を熱演する『アザーズ』
ニコール・キッドマンが見えない恐怖に脅える母親を熱演する『アザーズ』[c]Everett Collection/AFLO

ゴシック風の古い屋敷に住む、ニコール・キッドマン扮する母親と2人の子ども。彼らに忍び寄る怪奇現象の真相は、意外極まるモノだった…。

降霊会をこれほど劇的に描いた映画を、私は他に知らない。ネタバレになるので多くを語ることができないけれど、実に大胆奇抜に降霊会が処理されていた。クレジット上は、脚本と監督を担ったアレハンドロ・アメナーバルのオリジナル作品とされているが、実はアメリカの劇作家リチャード・ローツの一幕戯曲The Voicesが元ネタ。古い物語でも新解釈で読み替えれば、意外性に富んだモダンホラー作品として再生される格好の例だ。

映像版モダンホラーのひとつの到達点『ヘレディタリー/継承』(18)

『ミッドサマー』の鬼才アリ・アスターが手掛けたホラー『ヘレディタリー/継承』
『ミッドサマー』の鬼才アリ・アスターが手掛けたホラー『ヘレディタリー/継承』 [c]Everett Collection/AFLO

近年最も慄然とした映画がこれ。ある種の宗教怪談ともいうべき内容なので、万人向けとはいえないが、ラストで描かれる真相は、心理的かつ形而上的な恐怖の極北だ。

古色蒼然とした降霊会シーンは、この映画にはない。ドールハウス作家アニーと彼女の家族は、老母の死をきっかけに次々と怪奇現象に見舞われる。彼らは見よう見まねで降霊会風の儀式を催す。が、その結果、さらなる恐怖を体験。しかも邪悪な残酷劇に巻き込まれていく。計算された映像処理と精緻な伏線がすばらしく、恐怖演出のテクニックも含めて、映像版モダンホラーのひとつの到達点といえよう。

以上がオススメの降霊会映画8本である。そして今回『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』が新たな「降霊会映画」として歴史に刻まれることになった。過去の映画人があの手この手で挑んだ名場面と本作とを、比べてみるのも一興かもしれない。


文/小山正

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