山下智久主演「神の雫/Drops of God」原作者は、海外でのドラマ化&ラストの“答え”になにを思う?
「“天・地・人”。ワインを生みだす世界そのものを肯定している」(樹林ゆう子)
――「神の雫」のように、趣味が高じて生みだされた作品はこれまでもあったのでしょうか?
伸「僕らは子どものころからミステリが好きで、江戸川乱歩の『少年探偵団』シリーズとか、シャーロック・ホームズやアルセーヌ・ルパンとか、そういった子ども向けのミステリ作品が家の本棚にいっぱいあったんです。漫画よりもそっちのほうが原点になっていて…」
ゆう子「それは私が1冊ずつおこづかいで買ったやつなんです。この人はそれを読んでいただけ(笑)」
伸「でも乱歩のシリーズは、僕が立ち読みして読んでいたのを、親がお店の人に申し訳ないと言って買ってくれたんだよ(笑)」
ゆう子「あと私は小学生の時には漫画家志望で、中学生の時には自分で描いた作品を投稿して賞をもらったこともありました」
伸「僕はそれを読んで感想を言ったりしましたね。いまでも僕らが描いた原作を、漫画家さんがどう描いてくれるのかと待つワクワクがすごく好きで」
ゆう子「そういう絵にしたか!って楽しくなるからね」
伸「ミステリが好きだったり、あと僕はサッカーが好きだったり。コンピューターやITにハマった時にはハッカーを主人公にした『BLOODY MONDAY』をやってみたり。そうやって趣味から広がった作品はこれまでにもありましたが、そのなかでも『神の雫』だけは次元が違っていました」
ゆう子「毎日ワインのことばっかり考えて、メルマガも読み焦って」
伸「別の漫画の原作を描きながら、そろそろ飲みたいねってなって(笑)。それでワインを飲んでいるとパッとイメージが浮かんでそれを語りだす。ほとんど遊びでやっていたことだけど、これが漫画になるのかなと初めは思っていました。なので正直な話、漫画にするのはすごく勇気がいることでした」
ゆう子「漫画を読んでくれた人が、作中に登場したのと同じワインを買うと思ったら実際に飲まなきゃ無責任だと思って、1本のワインを書くために10本とか買うわけですよ。でもどんなワインでも悪口は絶対に書かないということだけを決めていたので、勧められないものはそもそも書かない。そうしているととんでもない数を買うことになるんです」
伸「10本じゃ済まないよ…(苦笑)。ものすごい数のワインを買って、どんどん飲みかけのままボツになっていって…」
――それだけワインに真摯に向き合ってきたお2人は、今回のドラマのラストで初めて明示された“神の雫”の答えについてどう感じたのでしょうか?
ゆう子「あれはすごく意外な答えでしたね。私はあれを見た時に、ワインを生みだす世界そのものを肯定しているのだと考えました。原作でも繰り返し言ってきた“天・地・人”。それがあって初めて生まれるものへ敬意を表しているのだと解釈しました」
伸「話のなかではこれが正解だということになっていますが、もっと本当の正解みたいなものがあるのかもしれないとちょっと想像しちゃいますよね。視聴者の方もそう感じることを、わざとねらっているのかもしれませんね。『本当はなに?』って」
――最後に、このドラマを観ながら飲むのにおすすめのワインを教えてください!
ゆう子「各話に1本くらいあるかな…」
伸「まずは最初に一青が飲むシャトー・ル・ピュイを飲んでもらえたらいいと思います。原作の漫画にも登場しているワインで、ちょっと変わっているけれどどういうテロワールなのかわかりやすい」
ゆう子「それに作品を観ながら気になったワインがあったら、その都度検索してみるのも楽しいと思います」
取材・文/久保田 和馬