多くの女性ファンを獲得した要因とは?「機動戦士ガンダムSEED」のヒットを当時のブームと共にプレイバック!

コラム

多くの女性ファンを獲得した要因とは?「機動戦士ガンダムSEED」のヒットを当時のブームと共にプレイバック!

個性的なキャラクターのなかから“推し”が見つかる!

具体的に「SEED」という作品の魅力を見つめ直してみると、ストーリーがよく練られていて、それをじっくりと一年かけて描いてもらうことでドラマにしっかりと没入できる点と、女性ファンを取り込む魅力的なキャラクターが多かったことが挙げられると思う。

のちに「ガンダムは『SEED』なら観たことある」というと、シリーズを長く追いかけているガンダムファンの方には「あぁ、『SEED』女子ね」と冷笑される経験を何度もしてきた。それだけ、「SEED」は女性のファンの参入のきっかけになったのだろう。

「機動戦士ガンダムSEED」の2年後が舞台の「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」(『機動戦士ガンダムSEED DESTINY スペシャルエディション 砕かれた世界』)
「機動戦士ガンダムSEED」の2年後が舞台の「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」(『機動戦士ガンダムSEED DESTINY スペシャルエディション 砕かれた世界』)[c] 創通・サンライズ

主人公のキラ・ヤマト(声:保志総一朗)と、その対となるアスラン・ザラ(声:石田彰)をはじめ、地球連合軍にも敵軍のザフトにも、魅力的なキャラクターが多く、絶対に“推し”が見つかる!といった風情だった。友人の間では“キラ派”と“アスラン派”に分かれたり(少数だがクルーゼ派も観測された)、お気に入りのカップルを作って妄想に勤しむ腐女子もいたりと、多くのキャラクターのなかからご贔屓を見つけて毎週応援していた。モビルスーツが飛び交うバトルシーンはよくわからなくても、人物同士の心情の揺れ動きや、命を懸けてもなにかを守りたいという思い――。そのドラマ性に深い魅力を感じ、没頭していた。

キラの親友でありライバル、敵として数々の激闘を繰り広げたアスラン・ザラ(『機動戦士ガンダムSEED DESTINY スペシャルエディション 運命の業火』)
キラの親友でありライバル、敵として数々の激闘を繰り広げたアスラン・ザラ(『機動戦士ガンダムSEED DESTINY スペシャルエディション 運命の業火』)[c] 創通・サンライズ

そのキャラクターたちの魅力をさらに何倍にも高めてくれたのが、キャラクターに声を吹き込む声優だった。メインキャラを演じる保志総一朗や石田彰、さらに三石琴乃、子安武人、田中理恵、関智一、関俊彦…と、当時から現在まで続く声優界の人気を支えるキャスト陣が「SEED」の世界を彩った。

当時流行していたほかのアニメ作品やゲームにも数多く出演している声優がそろっており、声優一人一人の人気も大きかった。出演している声優をきっかけに、「SEED」に触れたという人も少なくなかったかもしれない。

美麗なアニメーションにも注目!(『機動戦士ガンダムSEED DESTINY スペシャルエディション それぞれの剣』)
美麗なアニメーションにも注目!(『機動戦士ガンダムSEED DESTINY スペシャルエディション それぞれの剣』)[c] 創通・サンライズ

視聴者の記憶に深く刻まれた「SEED」を盛り上げた音楽たち


また、「SEED」の魅力を語るうえで忘れられないのが主題歌の存在だ。作品に登場する多くのキャラクターたちと共にモビルスーツのアクションやデザインの美しさを見せる、作品の象徴ともいえるオープニング。また、薄明りのなか、戦場にたたずむキャラクターたちを一枚絵で追う構成のエンディング。そのバックに流れる曲が、いずれも印象的だったのだ。

アニメ作品の主題歌は、「オープニングだけは覚えている」ということも多い。が、「SEED」に関していえばすべての曲を覚えているし、カラオケで歌うこともできる。それだけ作品に熱狂していたということでもあるが、いまでも当時の友人と集まってカラオケに行けば誰かが「SEED」の曲を歌うし、みんな当たり前に歌える。新作劇場版の告知時には、友人とのLINEグループが熱狂した。ちょっと特異なことだと思う。

ガンダムシリーズは多くの作品が制作され、新たなファンを獲得し続けている。「SEED」もまた、それまで「ガンダム」を知らなかった人を引きつけ、ファン層の拡大に大きく寄与した。現在、全国の劇場では、「機動戦士ガンダムSEED」と「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」それぞれの本編を三部作と四部作で再構成した「スペシャルエディション HDリマスター」が上映中。最新作である『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』への期待感も高めながら、きっと“あの頃”を思い出すきっかけになるはずだ。

文/藤堂真衣

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