「展開がまったく見えない!」「未来について考えさせられる」異色の音楽映画『白鍵と黒鍵の間に』を観客はどう観た?

コラム

「展開がまったく見えない!」「未来について考えさせられる」異色の音楽映画『白鍵と黒鍵の間に』を観客はどう観た?

『ちょっと思い出しただけ』(22)や『シン・仮面ライダー』(23)など、いまや日本映画界に欠かせない実力派俳優となった池松壮亮。彼が1人2役で2人のジャズピアニストを演じ分け、運命が大きく狂いだす一夜を描いた『白鍵と黒鍵の間に』が10月6日(金)に公開される。

【写真を見る】池松壮亮が1人2役で、理想と現実に葛藤するピアニストを熱演!
【写真を見る】池松壮亮が1人2役で、理想と現実に葛藤するピアニストを熱演![c]2023 南博/小学館/「白鍵と黒鍵の間に」製作委員会

本作はジャズミュージシャンでエッセイストとしても活躍する南博が、ピアニストとしてキャバレーや高級クラブを渡り歩いた3年間の日々をつづった回想録「白鍵と黒鍵の間に-ジャズピアニスト・エレジー銀座編-」を冨永昌敬監督と共同脚本の高橋知由が大胆にアレンジ。南博をモデルとした主人公を“南”と“博”に分け、3年におよぶタイムラインがメビウスの輪のようにつながる一夜の物語を描いている。

試写会で作品を観た人たちからは「話の展開がまったく見えなくておもしろかった」(20代・女性)「前半はすてきな作品だと思い、中盤で変な映画だなと思い、最後はとてもおもしろかったという感覚でした」(20代・女性)など満足度の高い声が数多く寄せられている。ここでは試写会アンケートに寄せられた感想を交えながら、本作の魅力をひも解いていく。

2つの時間軸がつながる…!斬新な構造が表現することとは?

銀座では熊野会長しか“あの曲”をリクエストしてはいけないという暗黙のルールがあるのだが…
銀座では熊野会長しか“あの曲”をリクエストしてはいけないという暗黙のルールがあるのだが…[c]2023 南博/小学館/「白鍵と黒鍵の間に」製作委員会

昭和末期の夜の街、銀座。ジャズピアニストを夢見る博(池松)は、場末のキャバレーでピアノを弾いていたところ、ふらりと現れた謎の男(森田剛)によってリクエストされた「ゴッドファーザー 愛のテーマ」を弾いてしまう。しかし、銀座でその曲をリクエストしていいのは重鎮の熊野会長(松尾貴史)だけで、演奏を許されるのも会長お気に入りのピアニストの南(池松)だけ…。2人のピアニストの運命を変える一夜の騒動が幕を開けてしまう。

場末のキャバレーで働く博が、銀座の街のルールを破ってしまったところから物語は幕を開ける
場末のキャバレーで働く博が、銀座の街のルールを破ってしまったところから物語は幕を開ける[c]2023 南博/小学館/「白鍵と黒鍵の間に」製作委員会

欲望が渦巻く水商売の裏側やヤクザ同士の争いといった様々な人間模様が、銀座を舞台につづられる本作。3年前と現在を一夜として同時進行で描くファンタジックな作品の構造により、理想と現実に打ちのめされていく1人のピアニストの心情が浮き彫りになっていく。

「頭を整理するのが難しかったが、点と点がつながるととてもおもしろい」(20代・女性)
「時間の前後が多々あったため難しかった」(20代・女性)
「予想外の展開で、いろんな解釈ができる終わり方だった」(20代・男性)


上記のコメントからもわかるとおり、物語のテーマを表現するトリッキーな構造は難解だが、深みを感じた人も多かったよう。南と博が同じ空間にいる演出についても「1人の人物の異なる時系列での話を、同じひと晩で描くという設定がよかった」(20代・男性)「現在の時間軸で、未来と過去の2つを描いている斬新な設定だと感じた」(20代・男性)など好意的な意見が並んでいた。


物語は終盤思わぬ方向へと突き進んでいくなど、トリッキーな構造がおもしろい
物語は終盤思わぬ方向へと突き進んでいくなど、トリッキーな構造がおもしろい[c]2023 南博/小学館/「白鍵と黒鍵の間に」製作委員会
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