マーティン・スコセッシが”本当に描きたかった物語”とは『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』特別映像
今年5月に開催された第76回カンヌ国際映画祭で初上映された、マーティン・スコセッシ監督の待望の最新作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(10月20日公開)。本作より、主演のレオナルド・ディカプリオらが解説する特別映像が到着した。
カンヌ国際映画祭では、長いスタンディングオベーションで賞賛され、本年度の賞レースにおいて早くも一、二を争う注目作となっている本作。主演はいまやハリウッドを代表する名優であり、監督とは6度目のタッグとなるディカプリオが務める。そしてディカプリオとは27年ぶり、スコセッシ監督作品では初共演となるロバート・デ・ニーロが脇を固めるという、映画ファン垂涎のトリプルタッグが初めて実現。共演には、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(21)でアカデミー賞ノミネート経験のあるジェシー・プレモンスや、『ザ・ホエール』(22)で昨年度アカデミー賞主演男優賞を受賞したブレンダン・フレイザーなど、今旬な豪華キャストが集結している。
本作は、デイヴィッド・グランによる同名小説を原作とする、真実の愛と残酷な裏切りが交錯するサスペンス。1920年代のオクラホマ州、石油の発掘によって一夜にして世界でも有数の富を手にしたアメリカ先住民族、オセージ族。すぐにその財産に目をつけたのが白人たち。すでに町に入り込んでいた彼らはオセージ族を巧みに操り、脅し、奪える限りの財産を強奪し、やがて殺人に手を染めていく。実際に起きた残酷な連続殺人事件が、アーネスト・バークハート(ディカプリオ)とオセージ族のモリー・カイル(リリー・グラッドストーン)の夫婦の愛を通して描かれる。
このたび解禁となったのは、スコセッシ監督が自ら明かす“本当に描きたかった物語”、ディカプリオらのコメント含む特別映像。特別映像の冒頭には、列車に乗りオクラホマへとやって来たアーネストが、叔父であるウィリアム・ヘイル(デ・ニーロ)の家に迎え入れられるシーンが。そこから始まる悲劇の物語を、スコセッシ監督が語っている。勢いよく噴きだすほどに湧き続ける石油という“財産”を巡り実際に起こった恐ろしく悲しい連続殺人。「語られてこなかった悲劇を伝えたいと思った」と、これまで語られてこなかったアメリカの暗部に勇気をもって光を当て描いた監督。本作で重要なのは「友情や愛に生きる人々の身に搾取や殺人が起きたことだ」という。主演を務めるディカプリオも「彼らの歴史は語るべきテーマだ」と話し、監督との撮影を「誠実に描くことを監督は常に意識していた」と振り返る。
さらに映像では、物語の軸となる2人である、アーネストが、町で見かけたオセージ族の女性モリー・カイルに運転手を買って出るという出会いのシーンも。アーネストは持ち前のユーモアのセンスで出会ったばかりの冷静で物静かなモリーを笑わせ、2人の出会いは平和かと思われた。しかし、そんな2人の出会いに目を付けたのがアーネストの叔父ヘイル。結婚を勧めるヘイルだが、彼のもくろみを「石油の受益権のため」と監督は言い切る。すぐに夫婦となった2人だが、アーネストの側には、地元の有力者である叔父ヘイルの存在が。そして、夫婦のすぐ近くで不可解な連続殺人事件が起き始める。
オセージ族の人々に起きた悲劇を「彼らを正当に描くことで壮絶さを伝えたかった」というスコセッシ監督。主演ディカプリオも「監督は使命感を抱いてこの物語を真摯に描いた」という。決して繰り返してはならない歴史的悲劇を描くスコセッシ監督がこの現代に生きる我々に問うメッセージを、かつてない壮大なスケールで描いた本作を、ぜひ大スクリーンで体感して欲しい。
文/サンクレイオ翼