フランソワ・オゾン最新作でクセ強キャラを好演!イザベル・ユペールが明かす原動力「監督はなによりも大事」

インタビュー

フランソワ・オゾン最新作でクセ強キャラを好演!イザベル・ユペールが明かす原動力「監督はなによりも大事」

「オゾン監督とは、次はぜひ違うタイプの作品で組んでみたいですね」

イベントに登場したオゾン監督と、ナディア・テレスキ、レベッカ・マルデール
イベントに登場したオゾン監督と、ナディア・テレスキ、レベッカ・マルデール写真:SPLASH/アフロ

殺人事件を皮切りに女性たちが”犯人の座”を巡り繰り広げる、軽快で痛烈な展開はオゾンならではのものだろう。監督としての魅力もそこにあるのだろうか。「彼の魅力は、作品ごとにジャンルが変わることです。多様性重視というか、固定しないというか。例えば、『8人の女たち』のような明るいコメディがあるかと思えば、『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』のような教会のセクシュアル・ハラスメントを描いた作品がある。このようなタイプの監督はフランス映画界では稀有でしょう。クロード・シャブロルは例外かも知れないけれど。とにかく、オゾンは撮影しているのが楽しくて仕方がないのです。撮り方がスピーディだし、それが作品に独特のリズム感を与えていると思います。自分がやりたいことがなにかをわかっているのでしょう。そして、自信があります。今回は『8人の女たち』と同じコメディだったけれど、次はぜひ違うタイプの作品で組んでみたいですね」。

1930年代における女性の地位や差別撤廃にも言及する本作は、フェミニズムや#MeTooムーブメントという現代的なテーマとも通底するメッセージを持っている。でも、それを喜劇に落とし込んでいるところがオゾンの狙いでもある。「それこそが彼の知性だと思います。本作の原作もいまとなっては陳腐な部分があるのですが、オゾンはそこに今日的な考察を書き加えることで、ちょっと古めかしい話と現代とを上手に繋いでいるのです」。

コメディ作品ながら、女性の権利を訴えかけるテーマ性も持ち合わせる本作
コメディ作品ながら、女性の権利を訴えかけるテーマ性も持ち合わせる本作[c] 2023 MANDARIN & COMPAGNIEFOZ GAUMONT FRANCE 2 CINEMA SCOPEPICTURES PLAYTIME PRODUCTION

オゾン監督とは次になにか具体化している企画はあるのだろうか。「いえいえ、彼はいま新しいプロジェクトに着手しているし、私も次の仕事に入っていますから。でも、確信しています。私たちは、きっとまたどこかで出会えることを。だって、とても意気投合しているし、お互いに評価し合っているから。2人ともフットワークが軽いし、どちらも映画の力を信じているのです」。

「私が国境を越える原動力になっているのは、いい監督と仕事をすること」

オデットはそのヘアスタイルだけでなく、オーストリッチのヘアアクセサリーやベルベットのコート、真っ白なメイク、真紅のリップと、衣装とメイクが役柄の背景を物語る重要なツールのような気がするし、実際に物語の重要なフックにもなっている。ユペール自身、衣装は重要なものと捉えているようだ。「いつでも衣装は大事です。この作品のような時代劇の場合は特に。次の作品が間もなくクランクインするのですが、いま、衣装合わせの最中です。衣装から私の役作りが始まると言ってもいいくらい。その人物の過去や家族関係、人となりを考える前に、まずは衣装に手を通してみるのです。すると、衣装を着ながらタイムトラベルしているような感覚になれるのです」。

1930年代のパリを舞台に、当時の華やかなファッションも見どころとなっている
1930年代のパリを舞台に、当時の華やかなファッションも見どころとなっている[c] 2023 MANDARIN & COMPAGNIEFOZ GAUMONT FRANCE 2 CINEMA SCOPEPICTURES PLAYTIME PRODUCTION

「興味を持った監督と仕事をするためなら、あらゆる国境も越えられる」と、かつて語ったことがあるユペール。衣装と同じく“監督”という存在の重要性も語った。「私にとって監督はなによりも大事です。監督あっての映画だと思うから。例えば、いくらいい脚本があっても、監督に才能がなければいい作品は生まれないし、逆に、才能がある監督はダメな脚本をそのままにはしておかないでしょう。私が国境を越える原動力になっているのは、やはりいい監督と仕事をすることです。その監督のビジョンとオリジナリティが、私を惹きつけるのです」。

国境を越えた先で失望したことはないのだろうか。「それはあまりないです。私が好きなタイプの映画は1人の人物の軌跡と運命にフォーカスしたもので、そこに充実感を感じます。1つの作品のなかでいろんな人物が交差して、様々なストーリーが並行している場合はそうではないかもしれません。群像劇であっても、例えば本作の場合、オデットは勿論、脇役たちが全員、力強い”楽譜”を担当しています」。


『私がやりました』は11月3日(金・祝)公開
『私がやりました』は11月3日(金・祝)公開[c] 2023 MANDARIN & COMPAGNIEFOZ GAUMONT FRANCE 2 CINEMA SCOPEPICTURES PLAYTIME PRODUCTION

私がやりました』の撮影はパリとベルギーで行われた。今後、また国境を越える予定はあるのだろうか。「具体的な企画はありませんが、またぜひ日本に行きたいと願っています。日本にはすばらしい映画監督がたくさんいますし、日本の監督と映画を撮りたいという気持ちを隠すつもりはありません。実は少し前に『Sidonie in Japan(英題)』(フランスの小説家がプロモーションで来日して担当編集者に惹かれていくストーリー)という作品を日本で撮影したのですが、あくまでもフランス人が監督したフランス映画でした。ですので、次は日本の監督に指揮されて、もっともっと日本を知りたいと願っているのです」。

取材・文/清藤秀人

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