SFアニメの金字塔「ゼロテスター」から声優人生がスタート!一龍斎春水が語る神谷明や広川太一郎らレジェンドへの感謝とアニメ愛
「リサは仲間に頼る子じゃないんです。私自身もそういう部分は通じますね」
Amazon Prime Video チャンネル「スターチャンネルEX」での配信にあたり、改めて「ゼロテスター」を観返して感じたのは、思った以上にストーリーがしっかりした作品だということ。「起きる事件が毎回違っているし、1話のなかで起承転結もしっかりしています。いま私がやっている講談は、1席もだいたい30分。自分で新作も作るんですが、起承転結を入れながらどこをどうつまんで30分にまとめるか勉強になりますね」と作り手の視点からも高く評価。科学的な要素を入れながら、子どもにわかりやすく作っている点もすごいという。「うちの旦那と観ていたら、『宇宙戦艦ヤマト』は難しいけど『ゼロテスター』はわかりやすいって(笑)。そりゃあ、『宇宙戦艦ヤマト』は宇宙飛行士になったり、IT分野で活躍してる人たちが子どものころに夢中になったんですからね(笑)」。
当時テスター隊の紅一点で熱い闘志を持つリサを演じて違和感がなかったそうだが、性格的に自分に似ていたのがその理由だったようだ。「リサは仲間に頼る子じゃないんです。従うのは剣持キャプテンで、吹雪と荒石とはあくまで同僚。私自身やりたい道を進んできたし、『どうしてここで男女差別するの?』と思いながら生きてきたので、そういう部分は通じますね。いま思えば、もうちょっと気配りしたり、先輩をたてたりすれば良かったかなと思うところもありますけど」と笑う。その裏には、アニメの声優の立場が低く見られる風潮もあった。「アニメの声優は下手な役者がやるものとか、マンガだから画にあてればいいとか差別的に見られていた時代がありました。でもたくさんの人を楽しませているし、夢をもらった人もいるんです。ずっと好きで、ここに来た私が一番わかってる、そんな想いもありました」。
「懐かしがって観てくれたらうれしいですし、その子どもたちが一緒に観てくれたらいいですね」
初めての配信にあたり、X(旧twitter)で「ゼロテスター」のことをつぶやくと大きな反響が返ってきた。「当時おもちゃを買ってもらったとか、主題歌が好きとか、メカがよかったとか。絵を描いて送ってくれた人もいたんです。そんな人たちが懐かしがって観てくれたらうれしいですし、その子どもたちが一緒に観てくれたらいいですね。いまの子たちはどう感じるか感想が聞きたいですね」という一龍斎。いまでもアニメが大好きで、最近は「鬼滅の刃」(19~)や「SPY×FAMILY」(22~)がお気に入りという彼女は、いまも「ゼロテスター」がファンに愛されている理由を、作り手のこだわりにもあると考える。「テンポは少しゆっくりだけどすごくわかりやすいし、丁寧に作られていると思います。『宇宙戦艦ヤマト』に決まった時、制作チームの方に『こっちは『ゼロテスター』よりもっとすごいからね!』と言われ、『そうなんですね』と返しましたが、みんなライバル意識あるんだと思って(笑)。皆さんが手を抜かず凝ったアニメにしてくださったからこそ、こうして残っているんだと思います」。
往年のファンを熱狂させたシリーズ最新作『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』(23)では、続投ではまり役とされる敏腕刑事、野上冴子の声を担当した一龍斎。シティーハンターこと冴羽獠の声をあてた神谷明と相変わらずのテンポいい掛け合いを披露した。「ゼロテスター」での2人の掛け合いと聴き比べるのも一興だ。
取材・文/神武団四郎
※高橋良輔の「高」は「はしごだか」が正式表記
■一龍斎春水
講談師、声優、心理カウンセラー。1972年、黒沢良主催声優学校在校中から麻上洋子として声優活動を始め、1992年に講談師の一龍斎貞水に入門。2012年に声優としての芸名も一龍斎春水に改名。声優の代表作は「ゼロテスター」のリサ役、「宇宙戦艦ヤマト」の森雪役、『アメイジング・スパイダーマン』のメイおばさん役など。
Amazon Prime Video「スターチャンネルEX」で配信中
●「ゼロテスター」[HDリマスター版]1話~39話
●「宇宙戦艦ヤマト」[HDリマスター版]テレビシリーズ全3作77話