昭和、平成、ミレニアムへとゴジラはどう描かれてきた?『ゴジラ-1.0』に続くシリーズそれぞれの“第1作”を振り返る
いよいよ“ゴジラの日”である今日、11月3日に公開された『ゴジラ-1.0』。シリーズ通算30作目となる本作の舞台は、太平洋戦争直後の混乱した日本。1954年11月3日に公開された第1作『ゴジラ』の7年前という、最も古い時代に設定された。これまでも昭和、平成、ミレニアムとシリーズごとに世界観を変えながら続いてきた「ゴジラ」シリーズ。各シリーズの第1作を中心に、ゴジラがどう描かれてきたのかを振り返ってみたい。
水爆実験によって誕生した恐怖の大怪獣『ゴジラ(1954)』
日本の怪獣・特撮映画の原点となった記念碑的作品。水爆実験によって誕生したゴジラが、日本を恐怖のどん底に突き落とす。製作の背景にあったのは、1954年にハワイの南西・ビキニ環礁で行われた米軍の水爆実験と、それに巻き込まれた日本の漁船・第五福竜丸乗務員の被ばく事件。作り込まれた特撮や被爆国ならではの重みを持った人間ドラマは時代を超えて胸に迫るものがある。
ゴジラは、海底の洞窟で生き長らえてきた恐竜時代の爬虫類が放射能を浴びて怪物化した大怪獣。身長50m、体重2万トンの巨体を持ち、破壊力ある腕や尾のほか口から放射能(放射熱線)を吐きかける。その名は最初に目撃された大戸島に伝わる伝説の怪物“呉爾羅”から命名。大戸島を襲ったゴジラは本土に上陸し、東京を火の海にしていった。液体中の酸素を破壊するオキシジェン・デストロイヤーによって海底で葬り去られたが、第2のゴジラが出現し、『ゴジラの逆襲』(55)から昭和ゴジラシリーズがスタート。やがて悪と戦う正義の味方になるが、『モスラ対ゴジラ』(64)までは悪役として人類を戦慄させ続けた。
人類に敵対する怪獣として原点回帰を果たした『ゴジラ(1984)』
昭和ゴジラシリーズの最終作『メカゴジラの逆襲』(75)から9年、生誕30年の節目に登場した復活ゴジラ。人類に敵対する怪獣として原点回帰を果たし、第1作と同じタイトルが付けられた。製作の背景にはゴジラ復活を望むファンの声や『スター・ウォーズ』(77)以降のSF、SFXブームがあり、54年版でゴジラが壊した日劇が有楽町マリオンとして84年にリニューアルされるなど(本作でもゴジラが破壊)タイミングが重なった。
54年版に続く2作目という設定で、昭和ゴジラシリーズとは切り離された。2代目ゴジラはビルの高層化に合わせ、身長80m、体重5万トンにスケールアップ。ソ連の原子力潜水艦や静岡の原子力発電所を襲撃した後、またも東京を廃墟にする。ゴジラは三原山の火口に飲み込まれ姿を消すが、『ゴジラVSビオランテ』(89)で復活し、怪獣バトルを描いた平成ゴジラシリーズに発展。第3作『ゴジラVSキングギドラ』(91)でゴジラの存在がリセットされ、原子力潜水艦の放射能を浴びた恐竜が怪獣化した身長100m、体重6万トンの新ゴジラが誕生。以後シリーズにはこの個体が登場した。平成ゴジラシリーズはバトル路線になっても、ゴジラは常に人類の脅威であり続けた。
駆逐か共存か?人類同士の対立も展開された『ゴジラ 2000 MILLENNIUM』
ハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』(98)を経て、世紀末に本家が復活。期せずして温室効果ガスを排出しない“クリーンエネルギー”として原発推進の動きが活発化し始めたタイミングでもあった。本作は昭和・平成両シリーズを抹消し、54年版の続編という設定。サイズも身長55m、体重2万5千トンと、初ゴジよりわずかに大きい程度にされた。
その存在は人類にとって脅威だが、映画はゴジラ駆逐派と共存派の対立を軸に展開。自己再生能力を持つゴジラの細胞“オルガナイザーG1”を使った新薬の可能性にも言及しており、ゴジラは人類が共存せざるを得ない災いとして描かれた。
本作から始まったミレニアムシリーズは、基本的に54年版の後日談で、それぞれが独立した単独作。昭和ゴジラがベースを作り、それを極めたのが平成だとすれば、ミレニアムは独自路線で飛躍したシリーズといえる。なかでも異色なのが第2作『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』(00)で、初ゴジが死なずに現在まで暴れてきたという54年版の改変作。第3弾『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(01)もゴジラを戦争犠牲者の残留思念にした個性的な作品で、ここに登場した凶悪なゴジラはデザインを含め『ゴジラ-1.0』に影響を与えた。